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AA Battle Royale Z

1 :名無しさん@├\├\廾□`/:2005/07/28(木) 21:14:38 ID:QafBYQ3n
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AAバトルロワイアル・雑談スレ Part2
http://aa5.2ch.net/test/read.cgi/aasaloon/1101821614/

>>2:Rule
>>3:CharaList
>>4:Map
>>5:Weapon


2 :名無しさん@├\├\廾□`/:2005/07/28(木) 21:15:55 ID:QafBYQ3n
−−全体のルール−−
ゲームルールは基本的に原作通り。そのためにも、原作のBRを知っておきましょう
本部からの定期連絡、禁止地域発表はしっかりとお願いします。
リレー小説ですので、書き手の皆さんは協力してください
活躍中や主要なキャラを急に殺したりの自己中行為は禁止します

−−書き手のルール−−

◎本AABR7は作者全員が名無しで進行します
コテハン等をつけて投稿すると、いくら良い作品であってもスルーとなります。

◎作品を投下する前に
最低でも少し前のレスや話の流れを読んだ上で、流れにあっているかを確認した上で投稿して下さい。
また、細かい設定は自由に決めても構いませんが、各キャラクターの性格などは
各自で把握してください。
明らかに、ゲーム中に設定されたものを含む性格等から外れている場合はスルーされることがあります。


◎武器について
生徒には始まると同時に武器や食料が入ったデイパックを支給されます。
支給される武器は武器一覧を参考にして、かぶることのないよう気をつけてください。
なお、今回の会場は「廃墟」です。多少錆びた刃物や鉄骨、ガラスの破片等はあっても
タンスの中に銃がある、などはまずないので気をつけて下さい。

◎投稿はsageでお願いします。
dat落ちしないかと不安になりますが、基本的に書き込みのあるスレは落ちません。
「60日ルール」もどうやらなくなった為、作品の書き込みだけで倉庫落ちは免れられるはずです。

◎[基本的に]普通の学生達が戦います
あくまでも「普通の学生」なので、「傷が勝手に治る」「銃弾を体で受け止められる」
などの超人的な能力を持つようなキャラは敬遠するようにお願いします。

◎物語の主人公は生徒全員であり、特定の人物ではありません
プログラム運営側や、兵士達、反政府団体などの、学生以外のキャラが戦闘に参加したりするのは
過去に起こった騒動に発展する場合がありますので敬遠するようにしてください。

◎あくまで、「殺し合い」の物語です
原則的に戦いがメインですので、脱出思考の生徒をあまりに多く残したり、人数合わせの事故を起こすと
アクションの楽しみがなくなってしまいます。考慮してください。

◎物語は全てつながっています
人が書いていたキャラを書き続ける場合は、そのキャラの状況を、ログを読むなりして理解してください。
現在の位置や時刻、負傷の有無、仲間の存在、所持している武器…など。
矛盾した設定を残すと後にも響いてくるんでこの辺りは特に気をつけるようにして下さい。
あまりに矛盾した内容の場合は雑談スレで議論後、スルーされることもあります

◎その他

場面が変わった直後は、「生徒名【出席番号】」のように表記をお願いします。
(例)[…モナー【男子19番】はそのとき、滝を下っていた…]
場面の最後には【残り○人】と必ず入れてください。死亡者を書くともっとわかりやすいかも

そして、書くキャラの性格などを最初からつかんでおいて、その性格に沿った物語を展開していくと
読み手にも「ああ、コイツの性格が出てるなぁ」など読みやすくなります。
例えばモナー。彼がいきなり凶暴な殺戮キャラになったら、少々困惑してしまうものでしょう。
キャラの性格などは、「AA大辞典」や、各板にあるそのキャラの専用スレなどで掴むといいでしょう。

参考:AA大辞典(仮) http://maruheso.at.infoseek.co.jp/aadic/


3 :名無しさん@├\├\廾□`/:2005/07/28(木) 21:18:09 ID:QafBYQ3n
 2-ch組生徒名簿

 AABR担当官:ギコ教授


 【男子1番】アヒャ          【女子1番】あいぼん
 【男子2番】1さん          【女子2番】ありす
 【男子3番】ウララー         【女子3番】えー
 【男子4番】おにぎり         【女子4番】カウガール
 【男子5番】ギコ           【女子5番】ガナー
 【男子6番】コリンズ          【女子6番】 花瓶
 【男子7番】流石兄者         【女子7番】妹者
 【男子8番】ジサクジエン       【女子8番】 しぃ
 【男子9番】したらば         【女子9番】 じぃ
 【男子10番】シラネーヨ        【女子10番】ちびフサ
 【男子11番】タカラギコ        【女子11番】つー
 【男子12番】ダマレコゾウ       【女子12番】でぃ
 【男子13番】チャンコ         【女子13番】のー
 【男子14番】ネーノ          【女子14番】ののたん
 【男子15番】激しく忍者        【女子15番】フサしぃ
 【男子16番】ヒッキー         【女子16番】ミナー
 【男子17番】八頭身          【女子17番】モナエ
 【男子18番】フサギコ         【女子18番】モナカ
 【男子19番】モナー          【女子19番】リル子
 【男子20番】モララー         【女子20番】ルルカ
 【男子21番】ようかんマン       【女子21番】レモナ




4 :名無しさん@├\├\廾□`/:2005/07/28(木) 21:19:00 ID:QafBYQ3n
地図:
ttp://repeter.hp.infoseek.co.jp/map00.gif (赤い線は有刺鉄線

※ 今回の会場は廃墟です。

・会場の設定
2〜3年程度放置された場所。建物がほどよい程度に崩れていたりする
有刺鉄線で周りが囲まれていて、1エリアおよそ250m×250m
全てのライフラインは無論無いが、井戸などは数カ所ある。
なお、有刺鉄線には高圧電流が流れている。


5 :名無しさん@├\├\廾□`/:2005/07/28(木) 21:20:47 ID:QafBYQ3n
武器一覧

●銃器(カッコ内は装弾数)―12
S&W M29 44MAG(6) /S&W M36 チーフスペシャル .38spl(5) /レミントン M700(10)
H&K MP5A5(30) /ワルサー P88(14) /ベレッタM92FS Centurion(15) /H&K P9S .45ACP(7)
コルト ガバメントM1911 .45ACP(7) /S&W M945 .45ACP(7) /S&W M19 .357MAG(6)
U.S. M3 “グリース・ガン”(30) /DesertEagle 50A.E. (7)
銃の特徴はttp://mgdb.main.jp/pukiwiki/参考のもと

●鋭・鈍器・爆発物・その他―38
出刃包丁 /ナイフ /カッターナイフ 
バドミントンラケット /軍用ナイフ /手投げナイフ20本 
プラスチックのトランプ54枚 /爆竹30発+ライター
手榴弾二個 /トンファー /特殊警棒 /ヌンチャク /ハリセン(紙製
硫酸瓶(500ml)二本 /小消しゴム30コ /フォーク /バール /アイスピック
おたま /簡易レーダー /槍 /ボウガン(矢20本 /ドラム用のスティック二本
地雷三機 /LEDライト(白・電池付き) /防弾チョッキ 
十手 /携帯スピーカ /ワイアーロープ  /水鉄砲(水満タン500ml) 
仏像/エアガン(BB弾200発)/ピアノ線/心電図/なわとび/チャクラム
鎖鎌/彫刻等セット/

総―50

銃の口径:
7.62mmx51:レミントン M700
9mmパラベラム:H&K MP5A5 ワルサー P88 ベレッタM92FS Centurion
.45ACP:H&K P9S .45ACP コルト ガバメントM1911 .45ACP S&W M945 .45ACP U.S. M3 “グリース・ガン”
.357MAG:S&W M19 .357MAG DesertEagle 50A.E.
.38spl:S&W M36 チーフスペシャル .38spl
44MAG:S&W M29 44MAG DesertEagle 50A.E.


6 :名無しさん@├\├\廾□`/:2005/07/28(木) 21:21:23 ID:QafBYQ3n
細くあけた窓から暖かい風が入ってきた。
9月と言ってももう終わりの方で、もうすぐ10月に入ろうとしている。夜になれば冷えるが、それでもまだ暖かい。
バスガイドの女の人が"もうすぐ高速道路に入りますので窓をお開けになっている方はおしめください"と言ったのが聞こえて、開け放していた生徒たちはそれぞれおしゃべりを続けながら窓を閉めた。

9月26日吉日、この日は修学旅行である。
4泊5日の長いようで短い旅。誰もがたった一度のこの日を待ち望んでいた。
一人一人が、この旅を誰よりも良い思い出にしようと、友人と語らう。
校長のありがたい話もほとんど耳に入れず、興奮冷めやらぬままにバスに乗ってからまだ30分。

「1さん!一緒に食べようと思ってクッキー作ってきたんだけど…た ・ べ ・ て ・ v」
あーんと言いつつ八頭身【男子17番】は1さん【男子2番】に、クッキーを持った腕を伸ばす。チョコレートのかけらが少し落ちた。
「やだよそんななんか変なもの入ってそうなもの!」
「漏れのクッキーは100%愛情製だよ!」
「よけい嫌!!」
そう言うと1さんは八頭身の持っていたクッキーの箱を取り、前方に投げやった。
「あああー!1さんひどいよ!せっかく一晩かけて愛を込めた特性のクッキーを!」
「知るか!」
その愛情が見事にモナー【男子19番】の頭に当たる。
「あだっ!」
モナーは頭をさすりながら箱を手に取った。丁度角の部分に当たったため、妙に痛い。
「あたたたた・・・空から箱が降ってきたモナー。」
「今騒いでる八頭身のだろ。それにしても赤くなってるよ、頭大丈夫?」
「失礼な言い方しないでほしいモナ!」
モララー【男子20番】はにやにやしながら勝手に箱を開け、クッキーを口に入れた。
モララーはモナーの小さい頃からの幼なじみで親友。気のおけない仲間だ。
楽しいときでも辛いときでも一緒だった。それはずっとクラスが一緒だったこともあり、そしてこの修学旅行でも一緒である。
その親友との仲がちょっとした自慢だった。
「人のなのに食べてもいいもな?」
「気にしない気にしない。てか自分も食べながら言うなよな。」
笑いながらモナーは後ろの座席を見る。


7 :名無しさん@├\├\廾□`/:2005/07/28(木) 21:22:28 ID:QafBYQ3n
流石妹者【女子7番】が流石兄者【男子7番】によりかかりながら寝ている。
飛び級制度のあるこの国ではあるが、年にこれほどの差があるのに同じ学年という兄妹も珍しいだろう。
兄者には弟(妹者にとっては兄)がいるが、彼はすでに卒業している"センパイ"である。
兄者の方はそれを皮肉ったりしているが、病気でもないのによく学校を休むので、卒業する気が本当にあるのかどうか疑っている人もいるほどだ。
事実、留年しているのは点数のせいではなく出席日数のためである。
その彼は、いつものやる気など皆無にみえる目で外の景色を眺めていた。モナーとモララーが見ているのに気がつくと、何?と言うように目を向けた。
「何で兄者はせっかくの修学旅行なのにそんなに楽しくなさそうなんだ?」
兄者はそんな問いがくるとは思っていなかったらしく、間をおいて
「え・・いや、楽しくなさそうと言われてもな・・・・。これで4度目だし・・。 ・・・イツモオナジバショダシ…」
二人は一度顔を合わすと彼の方を向き
「ご・・ごめんモナ。」
気まずそうにもう一度顔を見合わせた。
兄者はフーン族独特の微笑を浮かべると、外の景色を不思議そうに見た。

ギコ【男子5番】は車内の雰囲気がおかしいのに気がついた。
隣にいる、しぃ【女子8番】も、先ほどから寝ている。
出発当初からずっと騒がしかった八頭身や、こういうイベント事にはよくはしゃいでいる女子達も・・
それだけではない、誰の話し声もしないのだ。
いくらなんでもこの昼間からこんな集団で寝るか?
そんな中で一人、バスの揺れに伴ってゆらゆらと運転席へ向かう奴がいた。顔はよく見えないが8頭身タイプだ、足下が酷くふらついている。
おい運転中だぞ立ち歩きはやめろゴルァ、と言おうとして声がうまくでなかった。
そこで、ギコは自分も眠気におそわれたと気づく。
8頭身は運転席まで行くと、そこで力つきたようで倒れかける。それを変な顔をした奴が抱えた。

いや、あれは確かに変で 顔じ ない、な  変なホースのあるマスクが顔 覆っている
どこか 見た とがあるな、テレ で前に  かガ  ス だった う 。
 
 
ギコも、皆を追いかけるように眠りについた。
2年ch組のバスは高速をおりてしばらく、寂れた外観の街を走りだした。
途中で、高い三重の金網の扉を通り、本当に舗装されているのかと疑うようなおうとつの激しい道路をぬける。
一つの中学校の前でエンジン音が消えた。


8 :名無しさん@├\├\廾□`/:2005/07/28(木) 21:23:15 ID:QafBYQ3n
はじめに目を覚ましたのはアヒャ【男子1番】だった。
アヒャは微かに困惑した様子で、だがいつもの顔を崩さないままゆっくりと周りを見渡した。
元の学校にいるようにも思えたが、雰囲気が全く違う。
教室自体は、アヒャ達のクラスとそっくりそのままだ。だが、部分部分がさびれている。
ここが教室と同じ構造であれば、窓側と廊下側に黒い板(恐らく鉄だ)隙間なく はられていた。
そのせいで今が何時なのか見当もつかない。
アヒャは左手を伸ばして、今朝合わせ直してきたばかりの腕時計を見つめた。
4時丁度を指している。四角いクリスタルが26を示していたので、どうやら出発したその日の夕方のようだ。

「うーん・・・。」
アヒャから遠く離れた場所から、声が聞こえた。振り返ると声の持ち主がモナーであることがわかる。
「よぉモナー、やっと誰か起きたアヒャ。」
「あ・・アヒャ?え・・なんで学校に?」
1から順番に、窓側から並ぶ席順だったため、1番のアヒャと19番のモナーはほかの生徒達をはさむように声を出す。
その声のせいで、他の者も徐々に目を覚ましはじめた。
「オレが知るかアヒャ〜。お?オマエそんな趣味の悪い首輪つけてたアヒャ?」
「え?モナは首輪なんてつけてな・・・。」
首を傾げると確かに違和感がある。首に手を当てるとそれは冷たい。
驚いてアヒャを凝視すると、彼にも同じ物と思われる物がついているのが見えた。
「アヒャも首についてるもな!」
「アヒャ?」

手で感触を確かめると、こんなもの。とアヒャは力を入れようとした。
その時、しまりの悪そうなドアが開く。それと同時に
「あ〜。それは触らない方がいいですよ。爆発しますから。」
まだ眠そうにしていた生徒達も、一斉に彼に注目した。
「あー。皆さん目は覚めましたかー?よく眠れましたかー? ああ、まだ寝てる人はさっさと起きてくださいね。」
教壇に立ったのはギコ種の男だった。その場の空気に似つかわしくない笑顔で続ける。
「えー、皆さんこんにちは。私が皆さんの新しい担任のギコ教授です。よろしくねー。」
最初に起きたアヒャも、今し方起こされたばかりの生徒も、頭から疑問符がとれないままである。
誰がこんな状況を予測することができるのだろうか。
「まぁ〜唐突のことで混乱するのもムリはないと思いますが、よーく聞いてくださいね。」

「おめでとうございます!君たちはプログラムに選ばれました!」

静寂の中、誰かがガタンと音を鳴らして立ち上がった。


9 :名無しさん@├\├\廾□`/:2005/07/28(木) 21:24:00 ID:QafBYQ3n
静寂と言っても、怯えや恐れ、悲しみのたぐいではない。未だに状況が把握できないのだ。
プログラム?ええそれは聞いたことはありますよ一応英語も習ってますから。番組?予定?計画?それがいったいなんなのですか、と。

「今・・なんと!!?」
生徒達は声のする後ろを一斉に向く。薄明るいチカチカとした蛍光灯の下、兄者の顔がよりいっそう青白く見えた。
「おや、後ろの方まで聞こえなかったかな?ごめんごめん。なるべく大きな声で言ったつもりだったんですけどね。プログラムに選ばれたと言ったんですよ。」
「…はは…嘘だろう先生?」
嫌味なほどにこやかにギコ教授は言う
「嘘じゃないですよ。」と。
「そんな、まさか……本当にあるとは…」
気分が悪くなったのか、胸元を押さえ、自分に対して落ち着けとでも言うように深く呼吸をした。
そのまま力なく椅子へと落ちる。隣の席に座っている妹者が小さく問うた。
「兄者…プログラムとはなんなのじゃ…?」
それは今、プログラムの意味が分からない者が一番知りたいことであった。彼を見て、良いものではないということは想像に難くないわけではあるが…。
兄者が一つ息をついて、言葉を発する。周りの生徒も耳をすませた。
「椅子取りゲームだよ。命をかけた、生き残りという椅子をめぐってのだけどな。」
ギコ教授はニコニコと、彼の言葉をだまって聞いていた。

「それってどういう―」
「―クラスメイトと、たった一人の生き残りをかけて。 ……コロシアウ。」


10 :名無しさん@├\├\廾□`/:2005/07/28(木) 21:24:37 ID:QafBYQ3n
最後の言葉が酷く滑稽に聞こえた。よく理解できなかったかもしれない。まるで、異国の言葉にすら聞こえたのだ。
殆どの者は呆然と兄者を見ていた。

「数年に一度、あったらしい。公にはされてないが…。俺も今までまだ近くできいたことがなかったから――――」
「はいはいはーい。大体のところはわかりましたかー?それではこのプログラムのルールを説明しますよ、聞き漏らしのないようにしてくださいね〜。」
それ以上に用はないという風に、ギコ教授は言葉を遮った。兄者は内心舌打ちする。
今、本当に俺らに選択肢はないのか、と。
「ルールはとても簡単です。ここにいるみんなで最後の一人になるまで殺し合って下さい。反則はありませーん。そして、最後の一人だけは家に帰れます。一生楽に暮らせる保証つきですよー。がんばってくださいねー」
そこまで言ってギコ教授はドアを開けると、同じギコ種の迷彩服の二人が、大きめのデイパックを教室内に運び始めた。
山積みになるまで運んだ後、廊下から更に見慣れたバックもその隣に運び入れられた。見慣れているはずだ、自分たちが修学旅行用に持ってきたものなのだから。
「これから一人ずつここを出て行ってもらうんですがー、出発する前にこの荷物を渡します。中には多少の食料と飲料水、地図と磁石に、時計ー。それとー」
デイパックの一つを手に取り、パンと一度軽く叩いた。
「何らかの武器が入っていまーす。 武器と言ってもピンからキリまである…まぁいわば運の要素が強いかなー。だからみんな自分の力を奢っちゃだめですよー。 ああ、持って行きたい人は自分の荷物も持っていって下さーい。」
ギコ教授はくるりと黒板を向くと、白いチョークでいびつな線を書いた。その真ん中より少し上のところに×印をつける。
「イイですかー。これはこの周辺の地図です。ここは数年前から廃墟になっていてー今では誰も住んでいません。今いるところは・・ここですここ。」
×印を示した。そして更に書き加えながらしゃべり続ける。縦横に編み目を書き、その左と上に数字とアルファベットを書いた。
「先生達は皆さんが行った後もここで見守ってますからー。ここはわかりますね、D=06です。」
更に編み目の右と上に赤い線を引く。
「この線はー有刺鉄線でーす。ここをでて東西南北どっちに行ってもかまいませんが、超えてはならない一線があります。それがここでーす。」
全員の視線が集中する。
「有刺鉄線と言ってもただの線ではなくてー高圧電流が流れているから、触っちゃあぶないですよー。まぁ、万が一超えることができたとしても、生きて出ることはできませーん。なぜならー」


11 :名無しさん@├\├\廾□`/:2005/07/28(木) 21:25:31 ID:QafBYQ3n
よくしゃべる男だ。ギコはイライラしながら聞いていた。それに、この語尾を伸ばす言い方が癪でたまらない。
目が覚めてからずっと息苦しいし・・・。ギコは前に座っているおにぎり【男子4番】の首に変なものが巻き付いていることに今更ながらに気がつく。
そういえば、全員同じものをつけている…。自分の首にも手を当てた。そういえば起きた時に、奴が爆発するとか…
「ここで皆さんのつけている首輪です。あーだめだめだめだめ。外れないから。絶対外れない。」
ギコの方を向いて困ったかのように大げさに手をひらひらと振った。
「一番最初に言ったので覚えている人もいるかもしれませんがー、無理に外そうとすると爆発しまーす。更に、居場所が分かるように発信器がついていて〜」
こぶしをつくり地図をドンドンと叩いた。
「この赤い線の外にでると爆発します。そしてー一日4回のアナウンスで先生が危険なエリアを言うんですがー。時間をすぎても残っている人がいたらー・・やっぱり爆発します。」

「さて、ここで問題です。最終的にいなくなってしまう人は何人でしょうか?」
笑いながらギコ教授が質問したが、誰も答えなかった。
そのことが不服だったのか、笑みを絶やさないまま懐から拳銃のようなものを取り出したので
「ヨンジュウイチニン!!」
あわてて彼の目の前。真ん中の最前列に座っていたジサクジエン【男子8番】が叫んだ。
にこりと教授はジエンを見た。
「正解でーす。そんなに難しい問題じゃないんですからーちゃんと答えないとだめですよー。ですが、もう一つ正解がありまーす。 それは、24時間にわたって誰も死ななかった場合ですがー。そのときはー」
もう誰にも安易に想像ができた。
「残っている人全員の首輪が爆発しまーす。」


12 :名無しさん@├\├\廾□`/:2005/07/28(木) 21:26:46 ID:QafBYQ3n
「それじゃー質問はありませんかー?ないなら始めますよー。」
少しの沈黙の後、一人の女子が手を挙げた。しぃ【女子8番】だ。
なんですかどうぞー。と指をさされ、律儀に椅子から立ち上がる。
「コレッテ ハンザイジャ ナインデスカ? ヒトヲ コロスナンテ ソンナヒドイコト・・・」
ギコ教授はこの質問を予想していなかったようで、あー。と声を出したあとあごに手をやった。
「そういえば知らないんでしたかなー。これは国で決められてることなので犯罪とは全く違うものなんでーす。」
国?政府なのか?そのことに一応はおどろきはしたが、皆一様に黙ったままだった。
しぃもそれを聞いておとなしく座る。 これ以上何を言っても変わらないのだろう。
ニコニコとした笑顔をまたつくり、ギコ教授は時計を見た。
4時25分であった。

「それではー4時30分から始めまーす。順番はー1番から〜・・・じゃ皆さんも飽きてきてるだろうしー、後ろからいきましょうか。女子21番・男子21番・女子20番と2分置きに出発しますよー。皆さん頑張ってくださいねー。」
そう言って、錆びたパイプ椅子に座った。すぐに部屋がさわさわとざわめき始める。
パン! と銃器の発砲音がした。ギコ教授が天井に向かって撃ったのだ。
「退屈でしょうが私語は厳禁でーす。」
すぐに静けさが戻った。



9月26日 PM4:30
【残り 42人】 ゲームスタート


13 :名無しさん@├\├\廾□`/:2005/07/28(木) 21:28:58 ID:QafBYQ3n
陸上部の、自分の自慢の足をフル活動してかなり遠くへ移動する。
5分、10分、15分。砂利道や、草原も駆け抜ける。途中、転んで膝に擦り傷ができる。
息が切れる。下腹部が痛む。しかし、まだ走れる。
遠くへ。遠くへ行かなければならない。

【男子11番】タカラギコ は、D-6の出発点から足早にH-3へと逃げていた。

予想だにしていなかった出来事。まさか自分たちのクラスが「あの」BRゲームに選ばれるなんて。

逃げたい。死にたくない。
「あなた達は、今年のプログラムに選ばれました。」
タスケテ。ダレカ。
「やめろ、貴様、何をするつもりだ! やめてくれ・・・」
目の前で、父親が刺される。あふれる血。
「タカラ君、次は貴方の番ですよ。」
誰にも言っていない、自分の秘密。
「貴方のお子さんは・・・」
血液恐怖症。

殺そうと思えば、殺せる。デイバックに入っていた武器は、小さな拳銃。
S&W M36 チーフスペシャル .38splと、書いてあった。とても軽くて小さく、制服のポケットに隠せるほど。不意をつけば・・・絶対に仕留める、自信はある。
銃弾は30発分ある。・・・しかし、撃てない。
あの日、強盗に襲われ父が死んだ日から多量の血液を見ると、何をするか解らない。決まって、その時は記憶が飛ぶ。
小さな切り傷から、少しだけ出てきた血を見るだけでも、吐き気。
精神科医の診断は、血液恐怖症。

仲間を作る?できるものなら。相手がやる気だったら?
応戦?不可能、確実にためらう。
ならば、自殺?嫌だ、絶対に嫌だ。
隠れる?隠れる場所なんて、無い。
こちらから、攻撃?無理無理無理無理無理無理無理
脱出?どうやって。方法は、無い。
戦闘を放棄する?つまり、殺されろ、と。

どうすればいいんだろう。

一人、ぽつんと考えた。

【残り42人】


14 :名無しさん@├\├\廾□`/:2005/07/28(木) 22:07:17 ID:QafBYQ3n
半数ほどの生徒が出発したころだろうか。モララー(男子20番)は、割りと細めの獣道のような坂道を上り北へ向かおうとしていた。
おそらく数年間放り出された土地なのだろう、アスファルトや住宅地以外は殆ど背の高い草木に覆われている。
エリアでは地図の中央付近、ビル群寄りのC−6にあたる。
とりあえず学校付近から一刻も早く遠ざかり、ビル群で良い隠れ場所を探してからじっくり策を練ろうという考えだった。
モナー(男子19番)やレモナ(女子21番)を待ちたくもあったが、モナーはレモナと合流する為に奔走するらしい。
さっき教室で話を聞いた。既に何らかの方法で合流場所を決めて落ち合う事にしているのだろうか。
自分もモナーやレモナが信用できる仲間と思っているので、合流できればと思ったものの、そこに自分がいては色々と差し支えるだろう。
こんな時に変な気を使う自分に苦笑してから一旦斜面に腰を下ろす。
「なんだよ、ここだって普通に人が住んでたんじゃないか。当然だよな、学校があるんだからな」
道端の大きめの木に寄り掛かり、坂の下の景色を眺める。
当然、明かりを灯している家などは存在しなかったが、学校沿いの道路を見ていると、昨夜までの平穏な日常がむしょうに懐かしく思えた。
不意に中学生生活の楽しい思い出が脳裏を巡る。クラスメート達や親友と一緒で遊ぶ事は二度とこないだろう。
己の無力さに(彼のせいではないが)両膝を抱えて膝頭に額を数回叩きつけた。無力と言えば、彼の支給武器はエアガン(武器と言えるのか?)である。
斜面で下のほうから襲ってきた相手にいきなり銃口を向ければすれば怯ませる事くらいはできるかも知れないが、殺傷力を持たない。
さらにエアガン自体あまりリアルな出来ではない。到底当たり武器と呼べる代物ではなかった。ふと、後ろで茂みが揺れたような物音を感じて振り返る。
木々の間の茂みに誰か潜んでいるのだろうか?ゆっくりと腰を上げて気配を探る。その体制でしばらく……と一旦思い、止めた。
相手がやる気で、しかも拳銃を持っていた場合は格好の的だ。増してや自分の支給武器を考えるととても立ち向かおうとは思えなかった。
再び中腰体勢になり、様子を伺う。モララーには茂みの奥、頭が一瞬出てからすぐに沈んだのが見えた。
ゆっくり地面に足元を密着させてスタートダッシュの準備に入る。
何も合図はない。短く息を吐き、モララーは唐突に斜面を全力で真横に駆け出す。
背の高い草を踏み分けながらの逃走は思うようにはいかないが、相手も同じ斜面に潜んでいるのだから追って来るとしても条件的には五分五分だ。
モララーは運動神経にはかなりの自信があったのでよっぽどの相手でなければ逃げ切れるとふんでいた。
だが、その予想は思いもよらない形で裏切られる事になった。
「うおっ!」
後方を振り向きながら疾走していたモララーの前方に、いきなり男子生徒が姿を現した。
あまりクラスメイトとの交流を持たず、キザな性格から皆から避けられ気味だったチャンコ(男子13番)だった。
決死の形相で体当たりを敢行しようとするモララーを見ると、半ば反射的に右手に持った先が尖った武器(十手)をカウンター気味にモララーに突き出す。
咄嗟の判断で体を逸らして心臓串刺しは免れたものの、チャンコの十手は左の肩口を深々と貫いた。
そのままモララーのタックルがチャンコの胸元に当たり、チャンコが吹っ飛んだ反動で十手が抜けて二人は斜面から転がり落ちる。

15 :名無しさん@├\├\廾□`/:2005/07/28(木) 22:07:52 ID:QafBYQ3n
「痛ぇ……は、早く逃げないと……まさかチャンコが……じゃあ上にいたのはクラスでチャンコと唯一仲の良いネーノ(男子14番)だったのか?」
胸を強く打ち付けた為か、体を起こそうとするも上手く力が入らない。チャンコがモララーを見下ろした。その右手には十手が握られたままだ。
 ……みんな、もう会えそうにない。せめて最後に…あいつにだけは会いたかったな。
「やれやれだぜ・・・」
そう言うのと同時にチャンコが十手を振り上げ、モララーの背中を刺し貫こうとする。モララーにはかわす事はとてもできない体勢だった。
だが次の瞬間、発破音を伴ってモララーの頭上の空気が震えたかと思うと、見上げたモララーの眼に赤い雫が数滴降りかかった。
視界の隙間から、左手で左のこめかみ付近を押さえてゆらりと傾くチャンコの姿が見えた。銃弾か?
更にもう一発、銃声が上のほうから鳴り響く。
それはチャンコには命中しなかったようだが、怯んだチャンコはバランスを崩して今度こそ坂の斜面から一直線に転がり落ちて行った。
「やっぱりモララーくんだった、大丈夫?」
心配そうな面持ちでモララーを抱き起こす。何とそれはモララーが捜し求めていたモナー(男子19番)…の捜し求めているレモナ(女子21番)だった。
右手には拳銃(ベレッタM92FS)を握っていた。
「そうか、お前が助けてくれたのか。恩に着るよ・・・」
「いいって、他人行儀な事言わないの!それで、モララーくんを襲っていたのはチャンコ?弾が命中しちゃったの!?」
見るとレモナの腕は小刻みに震えていた。やはり銃を発砲すると言うのは並々ならぬ抵抗があったのだろう。
自分が人殺しになる(この状況では法律的には関係ないが)という事への抵抗。
言い方は悪いが、もしも襲われていたのが自分と親しくない誰かだった場合は銃を撃てずに見殺しにしていたかもしれない。
「あぁ、よくは見えなかったけど銃弾はチャンコのこめかみ辺りをかすめたみたいだった。それと二発目は命中してないからな。」
「じゃあ、彼も無事なの・・・」
「深追いしようなんて考えなくていいからな、まずは六時の放送でどういう状況になっているのかだ。
 それで誰がやる気になっているか割り出せるかもしれないからな。それまではモナーを探しつつ身を潜めよう。」
モララーは、不自然な偏りでの死者が出ていた場合(例えば特定のグループが一人を除いて全滅していた時など。そうなれば残りの一人が怪しい)
の事を言ったのだが、レモナにはいまいちモララーの言葉の意味が理解しきれなかった。眉をひそめてモララーをじっと見ている。
「詳しい事は後だ。さぁ行こう。お前は危険な目に遭わせたくからな・・・」
そう言って再び山の斜面を登って行くモララー。レモナ慌てて後を追おうとするが、不意に思い出したようにモララーが振り返ってレモナに右手を差し出す。
「レモナ、さっきは本当にありがとう・・・」
「もう!いちいち他人行儀なの、モララーくんは!」
苦笑顔を見合わせて、レモナはモララーの伸ばした右手を握り返した。

【残り42人】



16 :名無しさん@├\├\廾□`/:2005/07/28(木) 22:08:32 ID:QafBYQ3n
ざっ、ざっ、ざっ、ざっ。
【女子八番】しぃは出発した廃校のD-6から、30分歩きマンションに移動し、しかしマンションなどでは人が集まってしまうと思い、50分かけて川に近い雑木林の地帯D-3へ歩いていた。
出発した時、一番最初にデイバックを確認した。護身用に銃でも入って入ればいいのだけどもーーー
中身は20本の手投げナイフだった。
ナイフは、以外と刃先は鋭く、しかし刺さると刃は潰れてしまう。一度樹に向かって投げてみたのだがカツッという音のあと、ナイフを抜くと刃は潰れていた。
これでは、使い切れば完全に無防備になってしまう。
すると、当然自分の身は危険に陥る。それは嫌だ。死にたくない。

彼女は、実を言うとこのBRゲームには特に不満感などは感じていなかった。何故なら、逃げることなんてできないからだ。






17 :名無しさん@├\├\廾□`/:2005/07/28(木) 22:09:01 ID:QafBYQ3n
実は彼女は、二年前、既にBRゲームの存在を知っていた。
しかも、インターネットで我らが2ch国のページで、BRゲームについて調べていたのだ。
この国ではインターネットどころかパソコン自体があまり普及していなく、彼女の家は父親がプログラマーだったので、インターネットが使えたのだが。その時にはじめて知った・・・
BRゲームの事について詳しく書かれているページには、「これから、各々の夢を実現していく中学三年生の少年少女が志し半ばで死んでいくのは大変哀しい。しかしーーー」などの文章の他に、意外な情報が、書いてあったのだ。

第三項ーBRゲームに参加する生徒には爆弾が搭載された首輪が付けられる。
首輪が爆発する条件は以下の通りである。
1.死者・生者問わず首輪を外そうとすると中の配線が切れ首輪は爆発する。
2.ある程度実行本部から離れると自動的に首輪は爆発する。
3.設定された禁止エリアに首輪が入っていて、尚かつ、その参加者の死亡が確認されていなければ首輪は爆発する。
4.最後に生徒が死亡した時間から24時間以内に別の死亡者が出ないと全ての首輪は爆発する。
5.その他、担当官が手動で首輪を爆破することもできる。
首輪を外す命令を出す権利は担当官のみにあり、外される権利を持つのは優勝者だけである。

どうやって脱走者を出さないようにするのかとずっと疑問に思っていたのだが、それはこの「首輪」によってされるようだ。
そして、彼女はさらに重要な、軍事機密でいうと特一級にも属する情報を、このページから入手した。

18 :名無しさん@├\├\廾□`/:2005/07/28(木) 22:09:36 ID:QafBYQ3n
しぃはこのことを、川のすぐ側の雑木林の草むらにデイバックを置きその上に座り、考えた。

5.その他、担当官が手動で首輪を爆破することもできる。

BRゲームは、本来担当官が直接手を加えてはいけないはず。でも、担当官が手動で爆破することができるという事は、何かしらで生徒が爆破される条件を満たした事を知ることができるということ。
では、どうやってそれを知るのかしら?
ーーー答えは簡単。つまり、首輪には盗聴器、最悪監視カメラも仕掛けられている。
首輪は別にマジックミラーのようにはなっていないし(もっともちゃんと確認していないから解らないけど)、透明ではないから、監視カメラは無く盗聴器だけかも知れないけど。

とにかく、彼女は二年前に起こった出来事のおかげで、それを知ることができた。
二年前の出来事。それは、彼女の姉が、BRゲームの参加者だったのだ。
BRゲームの存在は、参加者の家族とその学校にだけ知らされる。そして、そのことを他の者に話した者は殺されるらしい。わざわざそんなことするなら公表すればいいのだろうけど。

とにかく、姉は自分と違ってスポーツが万能な活発少女で、残り4人という所まで生き残ったらしい。そして、一人殺して残り三人となったところで、マシンガンで蜂の巣に。アーメン。
姉と違って、盗聴器があるというのは知っている。しかし、姉と違って自分はむしろ肉体派というよりクールな頭脳派。
まぁ、確率的には超低確率でも、一応もし選ばれてしまった時のために安価なエアガンを購入して銃の構え方の練習や、遠くにある缶に弾を当てる、程度はやったのだけど。
でも、手投げナイフではどうにもできない。
とりあえず、誰かから銃を奪わなければならない。それが最低条件だ。
でも、こちらから仕掛けたとすると、相手は間違いなく反撃をするだろう。先手必勝?
上手く手投げナイフが当たれば、可能性はある。でも近くから投げないとあまり殺傷力はーーー
ガサッ、と近くで音がして、しぃは思考の渦から引き戻された。


19 :名無しさん@├\├\廾□`/:2005/07/28(木) 22:10:16 ID:QafBYQ3n
雑木林は、出発してすぐ見たマンションと同じく長い間ほったらかしにされていたため、膝下まで雑草が茂っていた。
しぃは、極力音を立てないように、音の主に近づいた。
相手は、近くにしぃがいる事に気づいていないらしく、音を立てたまま平然と移動していた。
そして、ようやく相手、【男子三番】おにぎりが完全に見えた時、しぃは、良しと思ったに違いない。
なぜなら、彼は右手に、銃、S&W M945 .45ACPをただ持った状態で歩いていたのだから。
あの銃は、なんとしても奪わなければならない。しかし、猫を被って近づいても殺されるかもしれない。
・・・やはり、不意打ちだ。
しぃは、近くにあった石を拾い、自分とは反対側の繁みに投げ入れた。
石は綺麗に弧を描き、繁みに入りガサッと音を立てた。やはり、おにぎりは驚き一瞬怯んだが、そちらの方に銃を構えた。
「だ、誰!?」
殺るなら、今しかない。
しぃは手投げナイフを思いっきりおにぎりに投げつけた。



20 :名無しさん@├\├\廾□`/:2005/07/28(木) 22:10:49 ID:QafBYQ3n
手投げナイフは、おにぎりの背中に突き刺さった。刺さった瞬間、多少血が霧となり宙に舞った。
おにぎりは、うぁ、と呻き、体を半回転させてしぃの居る方向へ、銃を向けた。
引き金には既に人差し指がかかっている。しぃは素早く、さらにもう一本投げた。
手投げナイフは、銃のグリップを握っているおにぎりの中指を第二関節から切断し、グリップに弾かれ、地面に刺さった。
その直後おにぎりは引き金を引いたが、刺さった衝撃で銃身が傾き、銃弾はしぃの左の肩に的中した。バン、と強く押されたような衝撃が、した。
「うわああああああ」
おにぎりはその場にしゃがみ込んだ。切れた部分からは血が吹き出ている。銃はその場に取り落としたままだ。あれを取らなくてはーーーいや、まずはおにぎりを殺さないと。
しぃは、目を瞑り、右手に力強く握ったナイフをしゃがんで呻いているおにぎりの頭頂部に突き刺した。
ドスッ、と嫌な音がして、吹き出た暖かい血が手にかかった。おにぎりの体はそのまま前に倒れ、息絶えた。
「意外と早めに・・・一人目。・・・っ痛ぅ・・・」
全てが終わった。いや、終わっては居ないのだが。たった二分程度の間に、これだけ疲れるなんて。
安堵したのと同時に、痛みが体を貫いた。そうだ、左肩撃たれたんだ。血を止めなくては・・・。
しぃはナイフで、おにぎりのTシャツを切り裂き包帯としてきつく巻き付けた。これで当座大丈夫なはずだ。
とにかく、一発撃たれてしまったのは、残念だ。銃弾が一発減ってしまったし(一発をバカにするものは一発に泣く、ってね)、銃声で誰かがこちらに来るかもしれない。さっさと荷物を整理しないと。
おにぎりのデイバックから水と食料、弾薬箱を奪い、そこから出て行った。銃の扱い方は、多分知っている。
反動はどれだけなのか撃ってみないと解らないがーーー反動が大きいのは、デザートなんとかという銃で、肩が外れるんだったかな?
とにかく、移動しなければ。

しぃは、黙々とD-3から南下していった。銃は、常に前に構えたままだ。

【残り41名】

男子十番ーおにぎり
女子八番ーしぃに手投げナイフで頭を刺され、死亡。



21 :名無しさん@├\├\廾□`/:2005/07/28(木) 22:11:18 ID:QafBYQ3n
時計を見た。
まもなくレモナ【女子21番】が出発してから1時間がたとうとしている。
この長い時間で何度も悔やんだ。いくら努力してもかえることのできない今を。
時計を見た。
「はいつg―――――」
「はい!!」
ガタン
ギコ教授の声とほぼ同時に席を立ち、彼がデイパックを投げるよりも先に自分のカバンを取る。
それを肩にかけながら、ギコ教授からデイパックを受け取った。
「いやーやる気があっていいですねぇ。」
まだ残っている生徒がぴくりと反応したのを彼は知らない。
流石兄者【男子7番】は走った。

俺たちは殺し合いをする。
俺たちは殺し合いをする。
俺は殺す。殺さなければいけない。
やらなければやられる。
やらなければやられる。
そんなことはわかっている。だから俺は殺さなくてはいけない。
ああそうさ、俺は死にたくない。こんなところで死にたくない。自分が助かるなら何だってできると思っていた。
だがな。クラスの皆を、殺すんだ。一人残らず。もちろん―――――妹者も。
そんなことが俺にできると思ってるのか?

いいか。 サ バ ゲ ー と リ ア ル は 違 う ん だ 。



22 :名無しさん@├\├\廾□`/:2005/07/28(木) 22:11:49 ID:QafBYQ3n
玄関をでて大きく左右を見る。
いつも通っている学校より若干狭く感じる校庭の向こうに、大きな道路が見える。
すでに暗くて見えにくかったが、見える範囲で人影は、ない。
「くそっ」
誰に向かってでもなく悪態をついた。
(それはそうだ。こんな見えるところにいるわけがない。)
とりあえず妹者を探そう、とは思ったものの、どこに行ったのか皆目検討がつかない。
が、どの方向へ進もうか迷っている暇もない。
―――待っててくれたらという淡い望みもなくなってしまったわけだが。
兄者は学校の壁にそって、なるべく音をたてないように左手側から学校をぐるりと裏手にまわり、そのまままっすぐと走った。

走るとは言っても引きこもってばかりの兄者だ、基礎体力など殆どない。
ある程度離れたところ、C=04の・・住宅街だろうか、元々は庭だっただろう場所の片隅に腰を下ろした。
ここなら見つかっても何もないところよりはましだろうと思ったためだ。
中に入ることも考えたが、先に誰かが入っていてはこまる。
――長い草が茂っていたため素肌に当たり、ところどころがチクチクとしたが。
走ったため息が切れている、しかしここは息を殺さなければいけない。 基本、相手に気付かれるな。
配布されたデイパックを開いた。

(なんだこれは?)
携帯程度の大きさの機械だった。こんなものが配布されると言っていたか?否。つまり
(これが武器?)
危うくため息をつきそうになった。せめて銃器だったらという希望を持っていたのだが。
ボタンがあったのでなんとなしに押してみる。ピッという高い音がでたので一瞬あせったが、音はそれだけだったので胸をなでおろす。
液晶がやわく光った。
中心に白い点と、同じ場所に黄の点がある。黄の点は他にも存在し、動いているのもあった。
希望と絶望の入り混じった 引きつった笑みを、兄者は浮かべた。

【残り41名】


23 :名無しさん@├\├\廾□`/:2005/07/28(木) 22:12:20 ID:QafBYQ3n
学校沿いの道をフサしぃ(女子15番)は細心の注意を払いながら進んでいた。慎重に少しずつ少しずつ目的の場所へ向かう。
今、彼女が会いたいのは三人の仲間だ。
プログラムの説明中に(G−6で集合)と書いた小さなメモをリル子(女子19番)とミナー(女子16番)にまわす事には成功した。
けれどもう一人の仲間・妹者(女子7番)とは席が遠かったのでそのメモを渡す事はできなかった。
先ほど数発の銃声が鳴った事もあり、皆の安否を危惧する。
「妹者とか無事かな……早くリル子達と合流して捜さないと。」
目的の場所が近付き、フサしぃは無意識に足早になる。
道路向かいの前方にマンションが見えたところで道路沿いを離れて神社裏の林の方へ……そこに小さな池があった。
「G−6って池があったんだ……リル子はどこかな?」
池の周囲を見渡す。不意に視界の脇に小さくも鋭い光が飛び込む。飛び退きながら振り返り、光が差した方向を恐る恐る窺った。
誰かが森の中から四角い手鏡のような物を反射させているようだ。暗い為に女性らしい事しかわからない。
「リル子? いや、リル子はあんな風に手を振ったりはしない!」
動悸が激しくなり、早鐘のように胸を打つ。フサしぃはゆっくり後退を試みる。だが、すぐにその緊張は緩んで安堵の一息に変わった。
「こっちこっち! リル子もいるのじゃ!」
光を当てていた女性が森から五メートルほど出てきてその姿を見せる。それは仲間の一人で、唯一メモを渡せなかった妹者だった。
改めて辺りを素早く見回してから妹者のところに駆け寄り、そのまま林に身を隠す。
「良かった! メモを渡せなかったから捜しにいかなきゃって思ってたよ!」
「リル子が下駄箱を出てすぐのところにある林に隠れて私を待っててくれてたのじゃ」
リル子って結構こういう時でも頭回るのね。それはそうとして打開策を考えなきゃね。大丈夫、あたしに任せればどんな時も上手くいくの。
だからみんなあたしを支持してくれてるんだもん。ミナーがやってくるまで三人は腰を下ろして池のそばの林の中に座って待つ事にした。
「見てなさいよ政府、わたし達が女だからって何もできないと思ってるんじゃないわよ!」
フサしぃが静かな口調ながら語尾を荒げて言う。だが、フサしぃはこの場に生じている違和感に全く気付いてはいなかった。
妹者が命のかかったこの状況で自分の意見を押し通す考えを持っている事。そしてリル子の口元の端がいびつに歪んでいる事も。
このグループは、最後の仲間であるミナー(女子16番)がやってくるのを闇に潜んで待っていた。向かい合って座り、ディパックの中身を照らし合わせる。
「わたしは爆竹とライター!」
そう言いながらフサしぃは、半開きのジッパー越しにディパックの中の大量の爆竹を見せ、右手にライターを持ち、見せびらかすように前に出す。
 ―――そんな物見せびらかされても頭の下げようがないから、私。
心の隅でそんな言葉が浮かんだものの、リル子は、ただ普段通りにフサしぃに笑みを向けている。
「妹者は?」
妹者の支給品を訊くフサしぃ。
「これ……コルト ガバメントM1911って書いてあるのじゃ。弾はさっきフサしぃを待っている時に装填しておいたから入ってる」
左手に説明書を持ちながら妹者が右手に黒い光沢を放つ自動拳銃を持って見せる。途端にフサしぃの目の色が変わったのをリル子は見逃さなかった。


24 :名無しさん@├\├\廾□`/:2005/07/28(木) 22:13:24 ID:QafBYQ3n
「それで、ミナーが来てからどうするのじゃ?」
「脱出しないとね。あるいはあの学校を……」
フサしぃと妹者が相談を始める。
リル子はその光景を遠い場所での事のようにぼんやりと眺めながら、口元を上げて笑ってみせる(正確には笑った表情を作る)事は忘れなかった。
「車に爆薬とか詰めて学校に……」
「学校へのは道は坂道だし、裏からだと車の通る道が……」
「港で船を……」
「結構距離あるのじゃ。それにそんな事態は読まれて……」
話し合ううちに二人の口調が揃って荒くなってきていたが、リル子はそれを気に留める事もなく、ただ木々の隙間から見える池に視線を注いでいる。
少しずつ、胸の奥が焦げるような不快な感情が緩和される感じがした。
「じゃあ裏から学校周囲の……」
「フサしぃ、何言ってるかわかってるのじゃ?」
「わたしに任せれば上手くいくから!」
その後、妹者がフサしぃに何か強い口調で捲くし立てた。刹那、フサしぃが立ち上がって妹者を睨みながら見下ろす。
「あんたはいつからそんなに偉くなったの? でしゃばらないでよ!」
眉を吊り上げて体を強張らせながら全身で怒りを表して叫ぶフサしぃに、妹者は半泣きの表情で言葉を返す。
「これはみんなの命がかかっているのじゃ!遊びじゃないのじゃ!ゲームじゃないんだから!適材適所って言葉があるのじゃ!
 わらわの案なら上手くいくのじゃ!だからお願い、今はわらわの意見を聞いて取り入れてほしいのじゃ!わらわはまだ、死にたくないのじゃ!」
フサしぃは一つ深く息を吐くと数秒間沈黙し、それからいやらしい笑みを浮かべて口を開いた。
「そう……わたしの案じゃみんな死ぬって言うの? わたしはね、今まで自分の案で完璧にこなしてきた!
 だからみんなわたしを信頼してついてきてくれる! 妹者、あなただってそうなんでしょ?」
「あなたはお山の大将! 裸の女王様じなのじゃ! わらわはブリキの兵隊のまま死ぬなんて嫌なのじゃ!
 この状況では誰もあなたなんて信頼しないし信用もしないのじゃ!」
フサしぃの言葉尻に被せて妹者が噛みつくように叫んだ。呆然とした表情を見せて立ち尽くすフサしぃ。
「妹者……今のあなたはこの状況で平常心じゃいられなくなっているのよ。ここはわたしに任せて。そうだ、とりあえずはそれを渡して」
そう言って妹者の右手に握られたコルトガバメントに視線を移す。妹者はフサしぃの視線からそれを隠すように両手で懐に抱え込む。
「嫌! あなた、わらわを撃ち殺すつもりなのじゃ! 自分の意見を通されたら”もういらない”なの? あなたってやっぱりそういう人だったのじゃ!」
「いいからそれを渡して!」
言うと同時にフサしぃが妹者に飛び掛り揉み合いになる。
安全装置がかかってないコルトガバメントは引き金を引いただけで弾が発射されるので大変危険な行為だったがフサしぃはそれを知る由も無い。
妹者は引き金に指をかけてはいなかったので、丁度両手をフサしぃの両手が掴むような感じで膠着状態になる。
「リル子、手伝って!」
「フサしぃを止めて!」


25 :名無しさん@├\├\廾□`/:2005/07/28(木) 22:13:56 ID:QafBYQ3n
その名前が合言葉だったかのように、池の向こう側にあったリル子の意識が眼前に戻ってくる。
そして唐突に脳裏にノンストップで流れ込む言葉の羅列。
 ―――私は何故こいつの言う事ばっか聞いてんの?こいつの言う事全然分からない。
               何言ってんの?ちゃんとした言葉を話してよ。理解できない―――――
 あの顔もあの声も聞きたくない。
 もういらない。
 うるさい。
 消えろ。
再びリル子は胸の奥が焦げるような感覚を覚える。それは瞬く間に全身に転移し、そして、散華した。
 ―――私はいつものように笑っててあげる。それでいいんでしょ?私はもう利用されない。オマエ達なんかに使われない。
リル子は私物のシャーペンを取り出すと、フサしぃと揉み合っている妹者の左肩に突き立てた。呻き声を上げて仰け反る妹者。
それを見たフサしぃは、妹者の手から拳銃を奪おうとしたが、続けてリル子がフサしぃの鼻っ柱につま先を打ち込んだ為に後方に勢いよく倒れ込んでしまった。
「り、リル子……?」
じんじんと鈍い痛みを放つ鼻を押さえ、口内に鉄の味を覚えながら見上げると、リル子がコルトガバメントを右手に持って見下していた。
「バカ、これが欲しいんでしょ?」
そう言うとリル子はフサしぃの腹、胸部に数発、強力な蹴りを打ち込む。そして銃弾を腹部に打ち込む。
銃口から火炎が吹いたかと思うと凄まじい圧迫感が腹にかかり、フサしぃの中の大事な何かが壊れるのを感じた。
「リル子ぉ……」
二人の後方で妹者の声がした。間髪入れずにそちらにリル子が銃口を向ける。
「いらない。消えろ」
だた単語を並べたような口調でリル子が呟き、同時に再び銃声が走る。数回。
妹者は両手を上空に数回跳ね上げたかと思うと、両足から血を噴きだして仰向けに倒れる。
リル子は苦痛の表情を浮かべ、七転八倒する妹者に近寄り、首輪に手をかけ、思いっきり引っ張った。首輪が点滅を開始した。
「え・・・な・・・何・・・なの・・・・・じゃ・・・?ぇあ・・・?・・ああ・・・!!!あああああああぁぁぁ!!!!!」
妹者は一度七転八倒を止めたかと思うと首輪に手をかけながら立つことも出来ずに恐怖に顔を歪め、絶叫しながらながら七転八倒を再開する。
―――――「一番最初に言ったので覚えている人もいるかもしれませんがー、無理に外そうとすると爆発しまーす。」
次にフサしぃの方を顧みて、近寄り、まるで汚いものを見るかのように見下した。
もう自分の知らない別人と化した彼女を薄れゆく意識の中で見上げながら、何故かフサしぃはリル子の髪がとても綺麗だと思った。
「フフ・・・リル子ぉ・・・・・」
「・・・・・馬鹿じゃないの」
口元の端をいびつに歪めた冷ややかな笑みを浮かべ、フサしぃの首を踏みつける。
熱くなっている銃口をフサしぃの額に押し当てながらリル子が言う。
 ―――あぁそうだ。あたしは裸の女王様だったんだ。みんなの事、何も理解してはいなかった。
     あたしが人生の主役だと思ってた。みんなからすればそれぞれが人生の主役なのにそれを理解していなかった―――
そこまでだった。フサしぃの視界が激しく揺らぎ、永遠にブラックアウトした。さらに数回、銃声が響いた。
後ろで爆音と何か液体が飛び散ったような音とともに叫び声やら草の音やらで騒がしかった林の中は静まり返った。
リル子は脳漿をさらし出したフサしぃと首と胴体とが離れ離れとなった妹者を尻目に爆竹と二人の分の食料と水を自分のディパックに入れて重さを確認する。
そしてそれを肩にかけ、ミナーの到着を待たずにその場を立ち去った。

妹者(女子7番)
無理矢理外そうとした為に首輪爆発
フサしぃ(女子15番)
リル子(女子19)により射殺
【退場者2名・残り39人】


26 :名無しさん@├\├\廾□`/:2005/07/28(木) 22:14:33 ID:QafBYQ3n
時刻はもうすぐ六時だが、この季節の太陽はまだ沈んではいない。
分校からほどなく離れた場所で、目だけがギラリと光るアヒャ【男子1番】の顔が夕日に照らされていた。
アヒャと名乗ってはいるが、彼は別に精神に障害があり、『アヒャって』いる訳ではない。つまり厳密に言うとアヒャではないのである。

彼は、モナー族の父親とモララー族の母親の間に産まれた、ごく普通のAAだった。
5歳の時に始めた野球は、彼の人一倍の努力によりめきめきと上達し、小学校6年生の時には遠くの私立中学からスカウトが来るほどの強打者として成長していた。
そんな彼を、突然の悲劇が襲ったのはクリスマスを間近に控えたある冬の日のことだった。
放火による火事。出火地点から離れた子供部屋にいたアヒャはなんとか助かったが、両親を失い、自身も顔に大火傷を負ったのである。
だが、悲劇はそれだけでは終わらなかった。
火傷は一応治ったものの、傷痕は消えることはなかった。彼の顔からモナーやモララーに特有の白くふわふわとした毛は完全に失われ、醜く焼け爛れた皮膚を残すばかりとなったのである。
醜い姿となった彼を周囲の人間は疎んだ。親戚は彼をたらい回しにし、ようやく今の街の孤児院に引き取られたのだが、いつしか彼はアヒャと名乗るようになったのである。
幸いにも、この中学校の人々に見た目で差別を加えるような人間はなく、野球部へと入部した彼はチームの中心選手として活躍した。
運悪くエースが怪我をしたため全国大会には出場できなかったものの、それでも満足のうちに引退し、スポーツ推薦で進学を狙っていたのだが・・・。

「捕らえ損ねた獲物を、死神が捕らえに戻ってきたみたいだアヒャ。」
自嘲気味に笑うアヒャの手に握られているのはただのおたま。
「だからって、そう簡単に殺されるんじゃ、死んでも死にきれないアヒャ。」
アヒャはそれほど死を恐れている訳ではない。3年前の火事のときに命を落としていてもおかしくなかった。だから、3年送れてお迎えが来たというだけのことだと考えていた。
だが、他人を殺してまで生き残るのは御免だが、このまま何もしないでむざむざと殺されたり、自ら命を絶つなどというのはもっと御免だった。
だからって何か考えがある訳ではなかったが、とにかく、このまま何も為さずに死んでしまうのは嫌だったのだ。
ふと、時計に目をやると、短針がもうすぐ6の時にさしかかろうというところだった。ずいぶん考えこんでいたらしい。おそらく、先に出発した生徒たちはもうこのエリアを出てしまったのだろう。
「『考えるよりは、体を動かせ』、か・・・。」
小学校時代の野球の監督が言っていた言葉を思い出す。反応が遅れるとひどくしごかれた。
「まぁ、なんとかなるアヒャね。」
そう声に出して言うと、彼は何処へともなく歩き始めた。夕方の風が心地よい。
(そういえば、支給されたパンって旨いのかな?いや、こんなことを考えてる場合じゃないアヒャ)
多分、生徒たちの中で一番軽い気持ちで。
【残り39人】


27 :名無しさん@├\├\廾□`/:2005/07/28(木) 22:15:04 ID:QafBYQ3n
モナー(男子19番)は学校を出て南にある神社の入口付近(F−6)に潜んでいる。つまり、恋人のレモナ(女子21番)とは全く正反対に来ていたのだ。(本人は知る由も無いが)
モナーは学校を全速力で飛び出してから周囲を素早く見回した。もしかするとモララー(男子20番)あたりが待っていてくれると思っていたが、モナーを呼ぶ声は聞こえなかった。
また、誰かの銃殺体があるかもしれないとも思っていたがそれもなかった。襲われた生徒は無事に逃走したのだろうか、あるいは林の中に死体が転がっているのかもしれない。
いずれにしてもモナーは学校のそばには長居はできないと判断した。恐怖感を押しのけようといろんな事を考えて時間が来るのを待つ。
だがやはり本能的な怯えはどうしようもなく、定期的に悪寒を感じて背後を振り返る。
ちなみに、モナーのディパックの中にはバトンのような形をした黒い筒が二本繋がった物が入っていた。
同封された説明書には”ヌンチャク”と書いてあった。極めて頼りない武器である。これでは相手が接近戦用の刃物だったとしても負ける。
不意に後ろの茂みの奥からガサリという物音が聞こえ、モナーは反射的に振り向いてしまった。その際、周囲の草に触れてこちらも物音を立ててしまう。
「遊ぼぉ〜ぜぇ〜〜アッヒャヒャヒャヒャヒャヒャヒャヒャヒャヒャ!!!」
「う、うわぁっ!!」
つー(女子11番)である。手には支給品と思われる出刃包丁が握られている。
「……やばい!」
モナーの武器はヌンチャクだ。一方、前にいるつーは鋭利な出刃包丁を握っている。
モナーは混乱寸前の精神を必死にコントロールし、打開策を弾き出そうとする。
じりじりとモナーが後ずさりし、つーは逆に歩み寄ろうとするが距離は縮っていない。
モナーは、つーの運動神経は明らかに自分より下だと認識していた。体育の時間でも目立っているのはもっぱらモナーのほうだ。
つーと言えば二言目には『だりぃ』と言って試合等を放棄してしまっている。
「脇をすり抜けて逃げられるんじゃないのかモナ? いや、上手くすれば武器を奪う事だって……そうだモナ。
 モナのほうが運動神経は上だもな、さっきまでどうモナはどうしちまってたんだモナ? 勝てるだろう絶対!」
「おぉ〜何ぃぶつぶつ言ってるんだよぉ〜、遊ぼうぜぇ〜ッヒャヒャヒャヒャヒャヒャヒャヒャヒャ!!」
自信を込めた表情でつーを見据えるモナー。一方、つーは肩に掛けていたディパックと鞄を地面に下ろす。
「お前もやる気になったみたいだしさぁ〜、漏れ、嬉しいよぉ〜」
心底満足そうにつーが満面の笑みを湛えながら出刃包丁を無造作に振り回す。つーの胸元で出刃包丁が十字の残光が煌いて、その刃先が糸の様に映る細い残光を吸い取った。
微塵も恐怖心を見せないつーを前に、再びモナーに一抹の不安が去来する。しかし、新たな感情がそれを押し流した。
「クソッタレ! 舐めてんじゃねぇモナ、モナの方が上だ。判断力麻痺させてんじゃねぇぞ殺人鬼が!」
瞬く間にモナーの怒りが恐怖心を凌駕する。モナーは唾を喉の奥に流し込み、一度自らを促すように深く頷いてから地面を強く蹴った。
雑草で滑りかけたが、それでも充分なスタートダッシュだった。つーの目が見開かれ、大きく上体がしなるのが見えた。
――快楽犯が!出刃包丁を握ってる右腕を両手で押さえて、そのまま腹部に強烈な蹴りを御見舞してやる!
つーとの距離を縮めると同時に身を屈め、出刃包丁を握る右手に狙いを定める。不意にその視界に映る出刃包丁がつーの手から落ちた。
「えっ?」
呆気にとられて見開かれたモナーの目に何かが投げ付けられた。視界が遮られ、そのままバランスを崩して激しく転倒する。
「うっ、うわぁぁぁ!」
ザラザラしたその粉状の物に眼球が傷付けられるのを生々しく感じながらモナーは転げ回る。
「見え見えだよ、モナぁ〜。右手にばっかり気を取られていちゃぁ駄目じゃん?手は二本あるんだからさぁ〜ッヒャヒャヒャヒャヒャヒャヒャ!!」
つーが左手を広げると、微量の砂が舞い落ちる。広げられたその手の平は茶色になっていた。その手で私物のバックを探り、何かを取り出す。

28 :名無しさん@├\├\廾□`/:2005/07/28(木) 22:15:37 ID:QafBYQ3n
「これこれ」
つーが左手に何かを握ったままで、必死に目を擦るモナーの腹部を思いっきり蹴り上げた。体をよじり倒れ込むモナーの腹部に更に四度爪先が食い込み、モナーが涙を滲ませる。
「さぁ、いきましょう〜」
つーがモナーを引き摺り起こして左手に握った何かを彼の口中に突っ込む。
「んんぉ、んぁ!」
 暴れる間も与えずにつーがモナーの口を左手で塞ぎ、そのまま右フックを鼻っ柱に打ち込んだ。モナーが画鋲を吹きだしながら地面に熱烈キスを施した。

「つー、なんで画鋲なんて持ってきてるモナ?」
「これ?これはよ〜皆にいろいろと悪戯するために持ってきたんだ〜ッヒャヒャヒャヒャヒャヒャヒャ!!!」
「は、はは・・・(苦笑」

モナーは画鋲を口に突っ込まれた瞬間、バス中でのあの平和な会話を思い出していた。
――――悪戯にしちゃあ・・・やりすぎじゃねー・・・?
「ごはぁぁっ! つー、手前っ……」
「次いってみよぉ〜次ぃ〜」
仰向けのままでつーを睨み付けるモナーの顔面を思いっきり蹴り飛ばしてうつ伏せにする。そのままその背中に腰掛けてつーが再びバックに手を入れる。
勿論、取り出した左手では無数の画鋲が黄金色に輝いていた。馬乗りのままで画鋲を再びモナーの口に捻じ込み、両手で彼の下顎を掴む。
「ごっ、ふぉごぉぉぉー!」
これから何が行われるかを察したモナーが、呻きを発しながら両手を地面に何度も叩きつけて抵抗した。恐怖に染まる瞳には、細かい砂がまばらにこびり付いている。
つーが口元を歪め、上体を徐々に後方へ反らす。地面に突っ伏したモナーの上体が反り上げられ、口の中では画鋲が次々と皮膚を貫く。頬のところどころから針が飛び出してる。
「ぼぉっ、ごぶぉっ!」
唇の端から血を流しながらモナーが首を振るが、それは口中での画鋲の活動を更に促進させるだけであった。やがて鼻からも血が流れ出し、鉄の味と息苦しさが膨れ上がる。
「ふぃにっしゅだぁ〜っヒャヒャヒャヒャヒャヒャヒャヒャヒャヒャ!!!」
つーが右手をモナーの下顎から放す。開放されるのかと一瞬思ったが、当然そんな甘いものではなかった。喉仏付近に食い込む冷たく鋭い感触にモナーの全身が戦慄する。
右手で出刃包丁の柄を、左手で剣先の峰を掴んでモナーの首に食い込ませる。鋭い刃が擦れ、喉笛付近に焼けるような痛みが走った。
「やふぇ……ふぇぉぉぉ!」
モナーは何かを言いかけたが、つーが上体を倒れんばかりに仰け反らせたのでその声は絶叫に変わった。ゴリッという嫌な音と共に真っ赤な血飛沫が広角に噴射される。
――――――モララー・・・レモナを・・・レモナを・・・・・頼んだぞ・・・・・。
「限界に挑戦だぁ〜!」
狼狽した表情を上空に向けて激しく痙攣するモナーにも構わず、つーが可動範囲の限界以上まで上体を反り上げた。
不意にモナーの右腕が真上に跳ね上がり、それが頂点に達したのと同時に彼の背骨が粉砕された。
つーがモナーの首に食い込んだ出刃包丁を握ったままで後方へ倒れ込み、そのまま大の字になって狂気の雄叫びを上げる。
「ひゃぁーははは! 凄ぇ、凄ぇよ! 漏れ、完全に普通の人間じゃ体験できねぇとこまでいっちゃってんぞ! どこまで行くんだよ、おい! ひゃぁーははは!」
つーがゆっくりと立ち上がり、ありえない角度で二つ折りになったモナーの遺体を踏み付けた。やがて思い出したように裾野のほうへ顔を向ける。
心底残念そうに首をカクンと垂らし、つーは自分のディパックと鞄を肩に担いで立ち去っていく。
後には余りにも無残なモナーの亡骸が、出来の悪いマリオネットのように陽光の下でポツリと残されているだけだった。

モナー(男子19番)
背骨粉砕殺
【退場者1名・残り38人】


29 :名無しさん@├\├\廾□`/:2005/07/28(木) 22:16:09 ID:QafBYQ3n
「はーい、次、【男子16番】ヒッキー君です。ほーらデイバック。」
ギコ教授が、荷物の入ったデイバックを、焦り席を立って移動してきたヒッキーに投げてよこした。
ヒッキーは、上手くキャッチすることができず転んで、尻をしたたか打ったが自分の荷物とデイバックを持ち直しすばやく廊下に出て行った。
「はいはい、また二分!長いなー。」
ドタドタ走っているのが一番後ろの列にいた【男子一番】1さんにも聞こえたので、ヒッキーにはこの声(と大きな欠伸)は聞こえなかっただろう。

廃校の出口の観音扉を開け、歩きながらデイバックを開けた。
周りは、意外にも森林のような場所であり(最も、何年も放置されていたのだし当たり前か)、空はまだ藍色だったが、かなり暗く見えた。
地面は朝露で塗れた落ち葉で覆われていて、柔らかかった。
いや、そんなことよりも何より見たいのは・・・地図とかコンパスではなく武器だ。
ガサゴソと中身を探ると、いきなり、何か冷たいものにふれ、ジンと指が痛くなった。
引き抜いて見てみると、左手人差し指に切り傷ができていた。ピリッと痛む。刃物・・・?
デイバックを地面に置き、すばやく懐中電灯で中を覗いてみると、そこには自分の血の付いた、刃がそのまま出ているナイフが(柄の部分にセロハンテープで紙きれが留まってあり、黒ボールペンで「軍用ナイフ」と書いてある)あった。全く、危ない・・・。
軍用ナイフ。果たして自分には使いこなせるだろうか・・・?ってか、鞘無いってどういうことなんだろう?
刃を向きだしにした軍用ナイフを、殆ど太陽が出ていない天に上げてみた。波紋が青く美しく波たっている。切れ味は、良さそうだ。
右手、伸ばした腕を戻し少しナイフを振ってみた。ヒュン、と音がして、先ほどついた自分の血が一滴、宙を舞った。そして、それが地面の落ち葉についてしみこまれたときーーー
近くで、女の子の悲鳴がした。



30 :名無しさん@├\├\廾□`/:2005/07/28(木) 22:16:44 ID:QafBYQ3n
悲鳴はすぐ止んだ。この状況なら、止んだというより止まった、いや止められたのほうがいいかもしれないけどーーー
とにかく、すぐ近くだ。やばい。誰かが、襲われた。銃声は、無いならまだいいかもしれない、けど、とにかくとにかく、逃げ、ないと、いや、足音で見つか、るかも知れないしーーー
パニックになっているヒッキーの右足太ももに、何か冷たいものが通過し、ガクッと体が右に傾いた。例え落ち着いていても、何が起こったのか解らないだろう。とにかくなぜか冷たいという感覚だけがした。
そして、ドッ、と体は頽れた。右手に持っていた軍用ナイフは、数メートル先に転がったが、足下がかなり暗いため、倒れたヒッキーの目線からは見えなかった。
左手にあった懐中電灯は、左足のすぐ間近にいったようだ。さっき、当たったのでそれはわかった。
「なかなか切れ味良いし、やっぱり使いやすいな。鎖鎌って」
後ろから、声がする。アレ、ナンデダロウ。イヤニレイセイダナ、ボク、、、ハハーーー。
ニゲナイト。スバヤク。ジブンノモテル、スベテノチカラヲ、ツカッテ。イマ、ボクハカゼニナル。
立ち上がろうとしたとき、なぜか立てなかった。なんでだろう。こんなに立とうとしてるのに。
「無駄だって。お前の右足、切断したから。」
ああ、通りで。ありがとう親切なお方、これから食事でもーーー?
今度は、幾分はっきりと「感じた」。肉を引き裂くような感じ。何かが食い込まれるような、そして激しく熱い。。。
痛い!左足が、すごく痛い!
ヒッキーは、そこでようやく自分の、何故か異常な足を見た。そして、見なければよかった、と思った。
左足の方に転がった懐中電灯が、全て教えてくれた。左足は膝下数センチから謎の、カーブを描いた刃物、鎌によって、見事に「切断」ーーーいや、「分断」されていた。血がありえないほど出ている。
右足も、おそらく同じようになっているのだろう。ヒッキーは、耐え難い痛みを耐え、後ろに振り向き足を分断した者の顔を見上げた。


31 :名無しさん@├\├\廾□`/:2005/07/28(木) 22:17:18 ID:QafBYQ3n
暗い太陽に映された、フサフサの顔ーーー【男子十八番】フサギコだった。
右手に、鎖のようなものーーーそれは、先ほどの鎌と繋がっている。鎖鎌!今の時代で。珍しい。
左手にも何か握っていた。・・・ありえない。そう思いたかった。見なければ、よかった。
クシャクシャの髪らしき、血のついた黒い毛を持っていた。そして、それは球体で、半分から下はまるきり人の、少女のかわいらしい顔のようになっていた。一部分以外、は。
顔面の、ど真ん中に円い刃物(チャクラムだ。ヒッキーはなぜかそう直感した)の刺さった、生首、確か自分の丁度手前の出発者ーーー【女子十六番】ミナーが、あった。自主性のあるコだったっけ。
「ソノコ・・・コロシタノ?」
かすかな、弱い声で質問した。それだけは、なんか聞きたかった。
「ん?ああ。殺したよ。なんか叫んでチャクラム投げてきたから、デイバックで受けてそのまま投げ返した。
それで上手く顔に刺さったからそのまま首をはねたよ。俺の鎖鎌で。OK?」
なんて簡単に言うんだ。世界中の何処にも同じものは無いクラスメートなのに・・・。
フサギコが右手で鎖を強く引っ張り、上手く鎌の柄をキャッチした。
人じゃ、ない。コイツは、絶対、人じゃ、ない。人だったらこんなに簡
そしてまた力強く鎌を投げた。
単に鎖鎌を使って
どっ、と鎌がヒッキーの左目に深々突き刺さり、ヒッキーの頭はドンと柔らかい地面に叩きつけられた。軽く、跳ねあがった。
軽い力で投げていたら、右目が割れるくらいで済んだだろうが、本気で投げ込まれたために、鎌は人を殺害するには充分な所にまで達していた。
右目が、フサギコのどこか奥の方を、見つめていた。
「質問は、終わりか?」
見下す眼差しでヒッキーを一瞥し、デイバックや私物のバックから食料を探し、飴袋なども全て自分のデイバックに移した。支給のパンを取るとき何かの鞘が引っかかっていたが、鞘はその辺に捨てておいた。
フサギコは、左手の腕時計を見た後そろそろヤバいな、と呟き木々の間の自然の道を歩いていった。
当然、数メートル先に地面に刺さっていた軍用ナイフを拾い上げるのも、拾い上げるのに邪魔だった生首をどっかそこらへんに投げ捨てるのも、一旦ナイフを見たあとまたヒッキーの側に戻り悠々と先ほどの鞘を再び拾い上げるのも、忘れなかった。

女子十六番ーミナー
男子十八番ーフサギコに返り討ちされる

男子十五番ーヒッキー
男子十八番ーフサギコに殺害される
【残り37人】


32 :名無しさん@├\├\廾□`/:2005/07/28(木) 22:17:50 ID:QafBYQ3n
チャンコ(男子13番)は、体を極力目立たないように身を隠しながら、神社(F−6)へと向かっていた。
坂の斜面でモララー(男子20番)と交戦したチャンコは、戦闘中に山の上のほうから銃撃を受けた。
そして坂を転がり落ちたために全身をしたたか打ち付けて体のあちこち、特に左の太腿に大きな切り傷を作ってしまったのだ。
しばらくは坂の下で身を隠して今後の事を考えたが(銃撃された事もあり、もう坂を登ろうとは考えなかった)とりあえずは神社で傷と体力の回復をしようと足を運んでいる。
先客がいると考えられなくもなかったが、それを言ったらどこにも入れないと割り切って向かう事にした。
左太腿の痛みを堪えながら歩を進めるチャンコ。既に神社は目と鼻の先に見えている。
あいつに会いたい。あいつならきっと一緒に行動してくれる。一人じゃあどうにもならない――
チャンコはある”男子生徒”を捜していた。

チャンコは、中二の時に仲間を助ける為にゴロツキ達と大喧嘩をやらかして意識不明の重傷を負った事があり、それで彼は留年をしてしまっていた。
運悪くその情報を言いふらしたのが話に尾ひれを付けて流す女生徒だった為に(仲間は別の中学だったので弁解する人がなかった)チャンコは”裏番”のレッテルを貼られた。
それで不良グループに目を付けられた時、自暴自棄になっていたチャンコは暴力で対抗して相手を病院送りにしてしまった為、更に噂に拍車をかけてしまった。
更に噂を流した女生徒をも病院送りにしてしまうというおまけつきである。
当然クラスメイト達からは差別的な目で見られ、かつての同級生を含む誰もがチャンコを恐れて距離を置いて接するようになった。
その度にチャンコは”ケッ! 俺の人生なんて、こんなもんだろ”と吐き捨て、三年進級時には自らの心を閉ざしてクラスメイトとの接触もほとんどなくなってしまった。
そんな彼の心の拠り所はロックだった。退廃音楽として禁止されているその音楽CDを裏ルートで見つけたチャンコは”俺に相応しい音楽だな”と手に取ったのだった。
納得できるロックが完成したら、国会議事堂前でゲリラライブをかましてやる!気に入らないリスナー達に囲まれる事になるが関係ねぇ、俺の為にかますライブだからな。
「よぉ、ロックとかやるんだ?」
三年に進級して間もないある日の放課後、自宅そばの公園の椅子に座りエレキギターを弾いていたチャンコの前に、同じクラスの”ある生徒”が話し掛けてきた。
久しぶりに呼び捨てで呼ばれたチャンコは少し疳に触ったが、その生徒を一瞥しただけで再びギターを引き続けた。
「お前って結構いかしたビート刻んでんじゃネーノ?」
無視を決め込んだチャンコに食い下がるように馴れ馴れしい口調で話し掛ける生徒。堪忍袋の緒が切れたチャンコは演奏を止め、生徒を睨んで胸倉を掴む。
「それがどうしたってんだよ? 俺に構うんじゃねぇ、第一てめぇなんかにロックの何がわかるっつーんだよ!」
クラスメイト達に心を閉ざしてからのチャンコの唯一の心の拠り所であったロックを、自分より年下の、いかにも軽そうな風貌の生徒に語られるのが我慢ならなかった。
しかし生徒の次の一言から、チャンコの閉ざされた心が少しずつ開き始める事になった。
「ロックが何かって? あんたも見た目でロックやる奴を判断すんじゃネーノ? 俺みたいな軽く見えるような奴がロックをすんなって? ふざけんなよ! 
 ロックにはなぁ、世の中を舐めた奴等に見せ付ける為のソウルと、プライドと、信念が詰まってんだよ!」
その言葉でチャンコの中の憤りがかすかに柔和された気がした。だが、それでもなお胸倉を掴んだままチャンコが訊く。
「お前にとってのロックは何だ?」
「ロックはな、叫びだ! 希望の叫びだ! 諦めた夢を語ったり、女に告白もできねぇ奴が憂さ晴らしに聞くような陳腐な詩じゃねぇ。



33 :名無しさん@├\├\廾□`/:2005/07/28(木) 22:18:22 ID:QafBYQ3n
チャンコの顔が破顔した。生徒の胸倉から手を離し、腹を抱えて笑い出す。
「やれやれだぜ・・よくもまぁそこまで無茶苦茶な事を……」
「でも、そう思わネーノ?」
「まぁ……大筋で同感だぜ。よくわかった。胸倉を掴んだりして悪かったな。これはお詫びだ、聞いてくれ。単なるコピーだがな・・・」
そう言うとチャンコは椅子に置いたギターを再び携えて演奏を始める。波打つサウンドに軽快なノイズが絡み付いたそれは、正にチャンコの叫びそのものだった。
 ――俺には決して折れない信念がある、憎しみも恨みつらみも抱き抱え、そこに信念を抱えて腐った社会にダイブするんだ――
 ――勝ち目のない戦いじゃない、”いつか”が”今”になる日がもうそこに見えているだろう――
生徒は感動に打ち震え、涙まで流していた。彼だけの叫びを奏でていたのだから。乾いた唇を一舐めしてから興奮した様子で生徒がチャンコに拍手を送る。
「すげー、すげーよ! こいつはコピーなんかじゃねぇ! れっきとしたブランドじゃネーノ!?」
「上手い事言ってくれるのはいいが、ブランドなんてそんな上等なもんじゃないぜ?」
心底満足した様子でチャンコが足を組み直して言葉を返す。自分の心を吐き出すだけじゃなく、それを人に伝えて理解してもらえるってのはこんなに心地良いものだったのか。
とチャンコはこの時に初めて実感した。
「で、お前はロックでいずれは何をするつもりなんだ?」
「決まってんじゃネーノ? 今の社会は欺瞞に満ち溢れて、差別による偽りの優越感に浸り、自分にメリットのない事は全て不要。ついでに金で動かない人間はつま弾き。
 そんな泥まみれのクソ社会にボイスでパンチをぶちかますんだよ! いずれは国会議事堂前でゲリラライブをしてやるんだ!」
チャンコの質問に生徒が答えるなり再び破顔するチャンコ。まさか同じ事を考えている人間がこんな身近にいるとは思ってもいなかったのだ。それはこの社会では当然だろうが。
「なぁ、どうせやるなら議事堂前なんて言わずに議事堂内でぶちかましてやろうぜ?」
「おぉ、お前ものってきたじゃネーノ!」
その日、チャンコとその生徒は公園で自らのロックにかける想いをぶちまけあったのだった。

神社に着くなり、血の香りがチャンコの鼻腔に飛び込んできた。
「な、何だこの匂いは?」
支給武器の十手を握る手に力が入る。そこには無残にも逆に折りたたまれたモナー(男子19番)の遺体が投げ出されていた。
「くそっ、何だこりゃ!」
鼻を突く匂いに堪えかね、神社内に入るチャンコ。大きく息を吸い込んでいると、近付いてくる人影が見えた。チャンコは一旦は十手を構えたが、次の瞬間にはその手を下ろす。
「お、お前……」
「よう、チャンコ。 厄介事に早速巻き込まれたみたいじゃネーノ? でも、もう大丈夫だぜ」
”ワルサー P88”を右手に握ったままウインクをしてみせたその男は、チャンコが捜していた唯一の生徒であるネーノ(男子14番)であった。
                         
【残り37人】



34 :名無しさん@├\├\廾□`/:2005/07/28(木) 22:18:58 ID:QafBYQ3n
白い海鳥が西の断崖(C−1)を歩く一人の女子生徒を見下ろしている。 ののたん(女子14番)は、頼りない足取りで断崖を歩いていた。
少し大きめの岩に隠れて半身を出し、岸壁の端に腰掛けている生徒を確認した。
「ん〜、られれすか(だれですか)?」
ののたんがもう少しで確認しようと更に体を乗り出す。不意に生徒がこちらを振り向き、ののたんと視線が合った。その距離、わずか十五メートル。
「ぎ、ギコしゃん!」
ののたんが素っ頓狂な声を上げて跳ね上がる。その生徒はクラスの不良グループのリーダー、ギコ(男子5番)だった。うわぁ〜ん!!怖いれすよ!何れすかあのぎょろっとした目は?
逃げようと思ったものの、足が竦んでののたんはその場から動く事ができなくなっていた。たちまち目に涙が浮かび、水中から空を見上げた時のように視界がぼんやりと揺れる。
その視界の先、ギコは立ち上がる事もせずに上半身だけこっちを向けたまま、犬を追い払うような手振りをののたんにしてみせる。
「え?」
半泣きの表情から怪訝そうな顔に変わり、ギコに首を傾げてみせるののたん。まだののたんは彼の手振りの意味を解せずにいた。
「早くどっか行けやゴルァ!」
その言葉でののたんの緊張が少し解けた。無愛想な物言いだったが、ギコのそれに敵意は感じられなかった。少なくとも、ののたんはそう解釈した。
安心とわかるなり急に人との会話が恋しくなっておもむろにギコに近付いて行く。
ギコと約二メートルの距離を置いてののたんは立ち止まった。ギコは両手をだらんと座り込んだ両足の間に落としたまま、ガンを飛ばすように睨みを効かせてののたんを見上げた。
「あんだぁ?んか用かぁゴルァ!!!」
うわぁ〜、やっぱり怖いのれす!目がぎょろっとしてるのが特に!仲良くしましょうよ!私、何もしてじゃないれすかぁ! ……でも、よく見ると……結構格好良いかも。
そんな事を考えながらじっくり唾を呑み込んでギコに話し掛ける。
「ののたんを襲わないんれすか?」
ののたんの質問に首を軽く傾げて苦笑するような顔付きになるギコ。ののたんは少しその仕草が可愛いと思ったが口には出さなかった。
「襲うって、これで襲うってのか?」
「ひゃぁ!」
ギコが手元に置いてあるディバックからはナイフを取り出す。支給品と思われるナイフは結構大振で接近武器の中では当たりの部類に入ると思われる。
それを確認するなり短く叫んで腰を抜かすののたん。やれやれという感じで後頭部を掻いてから武器ををディパックにしまう。
「誰も殺さねえって心に誓ったんだよ。 あ、けどな!」
ギコが気持ち前傾してののたんを指差す。それでののたんは目を見開いて少し後ずさりした。
「……向かってくる相手には容赦しねぇぞ。わかったら行けよ! まだ何かあんのかゴルァ!!」
ののたんはギコの勢いに呑まれて踵を返しかけたが、不意に首をぶんぶんと振ってギコの脇に座り直す(しかも正座で!)。
それでギコが首をゆっくりと大きく捻りののたんを覗き込んだ。
「お前、俺の言ってン事、わかってん……」
「ら、られも殺さない。じゃ、じゃあ、な、何をしてるんれすか?」
正座状態で腰を丸めたまま、低い視点からギコを恐る恐る見上げてののたんが訊いた。ギコは大きく溜息とも深呼吸ともとれる息を吐いて……笑みを浮かべた。
だがすぐに険しい表情に戻る。
「つーとウララーに待ち合わせ場所を伝えてあるから、ここで待ってんだよ。でも、すっぽかされたみてーだな、畜生」
ギコは訊かれたくない事を訊かれたという様子で答えると、海に視線を戻した。つー(女子11番)の顔がののたんの脳裏に浮かぶ。
ウララーさんは、あの大人しそうな顔なのに女の子にも酷い事言うからあまり好きじゃないけろ……れもギコさんの事は心から信頼しているように見えたのに。
つーさんはいつものらりくらりしていて何を考えてるかわからないです。
あの二人がギコさんを裏切るなんて、そんな……まずい事訊いちゃいました……
それでののたんが気まずそうに沈黙すると、急に重い空気が場にじんわりと漂い出す。ギコはそっぽを向いたまま、仕方なくののたんにかける言葉を考え出し始めた。



35 :名無しさん@├\├\廾□`/:2005/07/28(木) 22:19:35 ID:QafBYQ3n
「で、お前はこんな西の果てまで何をしにきたんだよ? 花瓶やモナエと待ち合わせしてんじゃねぇのか?」
初のギコからの質問でののたんの表情に一旦明るさが戻った。
「花瓶ちゃんからは何も聞いてないのれす、席も遠かったし」
ののたんの返答にギコがまた軽く首を傾げた。しばらくして、ののたんがはっと首を擡げた。
「あーっ、わかりました! 病院、病院! さっき行ってきたとこれす! 人影が三つくらいみえたんれすよ!」
 それでギコがますます訝しげな表情になった。眉間に皺を寄せてののたんに訊く。
「はぁ? じゃあ、何でさっき寄らなかったんだよ?」
「人が数人いる場所は怖くて……」
「もうね、アホかと、馬鹿かと・・・・・。 人が数人いるとこだからこそ仲間同士が合流して集まってんだろうがゴルァ!!」
俯いてぼそぼそと呟くののたんを焦れったそうに睨み、彼女の言葉を遮って叱責するギコ。それでののたんが体を震わせて縮こまる。
「ま、いい。わかったんなら早く行けや。花瓶達、心配して待ってんだろうよ」
ギコは額に右手を当てて溜息を付き、ののたんから海のほうに視線を戻す。ののたんは立ち上がり、ディパックを抱えてからギコに深く一つお辞儀をした。
「どうも有難うなのれす!」
「達者でな。俺もやれるだけやるわ。生きろよ」
淡い輝きを放つ水平線を眺めたままでギコが言った。しかしののたんはギコのそばに立ったまま立ち去らずにギコを見下ろしている。
歯をぎりっと鳴らし、ギコが再度ののたんを見上げた。
「あん? まだ何か言い足りない事あんのかゴルァ!!」
「ぎ、ギコさんも一緒に来ませんか!?」
 そのののたんの誘いにギコは唖然としてぎょろ目を更に見開き硬直する。開けた口が開きっ放しになった。
「(゚д゚)ハァ? お前等の仲間が俺をどういう目で見てるかなんてわかりきってんだろ? 馬鹿か?」
「れ、れもギコさんの助言がなかったら合流場所はわからなかったわけれすし……ののたんがギコさんはいい人だって事、ちゃんと説得しますから!」
怯えながらも勢い込んでそう言うののたんにギコは圧倒されていた。ののたんの持つ不思議な”言葉のエネルギー”に驚嘆すら覚えていたかもしれない。
クラスで言葉巧みな人間と言えばフサしぃ(女子15番)の名がまず上がるが、ののたんのそれはフサしぃの捻じ伏せるようなものとはまた違い、
”癒し”を持って相手を軟化させる話術、そんな印象をギコは感じた。
「いい人? 勘弁しろよ、気にしなくていいからよ! それからな、敬語はともかくとして”ギコさん”は止めてくれよ。お前、誕生日はいつよ?」
 訊いてから、丸っきり雑談だなとギコは思った。知らない間にののたんのペースに乗せられている自分が実に珍妙な人間に思えた。
「え? 確か、六月十七日れす」
「確かって何だよ? 自分の生まれた日くらいしっかり覚えておけやゴルァ!
 んで俺より半年も生まれが早ぇじゃねえか! せめて”ギコ君”にしてくれよ。それでもちょっと……だけどな」
 これ以上ののたんにペースを狂わされないように矢継ぎ早に言葉を繰り出すギコ。ののたんが再び口を開きかけていたのでそれを手で遮って続ける。
「とにかく!」
ギコが怒鳴る。ののたんはびくんと跳ねて気を付けの体勢で固まった。額を汗が伝っていた。
「俺に構わないでいいから早く行けや!」
「は、はい!」
 慌てて回れ右をして東のほうへ駆け出すののたん。そこで何かを思い出してギコがののたんを呼び止める。
「あぁ、そうだ。ちょっと伝言を……いや、待った」
ギコのそばにののたんがちょこちょこと戻ってくる。ギコは私物のシャーペンでメモ紙に何か文字を書き、それを四つ折りにしてからののたんに手渡した。
「これを花瓶に渡してくれ。もし途中で読んだり他の人に読まれたりしたら……」
ギコがディパックを開け、再びナイフ(大振)を取り出してののたんの前に翳す。
「これで首を切り落としに行くぞゴルァ!!!」
「え、来てくれるのれすか?」
メモを読まないように釘を刺したつもりだったのだが、予想外の反応に間抜けな表情を見せるギコ。気恥ずかしそうにののたんを手で追い払うようにして叫ぶ。
「いいからさっさと行け! あ、それからこれ持っていきな。素手よりはマシだ」
ギコは私物のバッグをまさぐり、翡翠色のバタフライナイフをののたんに投げ渡す。
「支給品は二つあったのれすか?」
「そいつは俺の常備品だ」
「え! いつもこんな物騒な物持ってるのれすか?」
「んな事いいから早く行けや!」
「はい!」



36 :名無しさん@├\├\廾□`/:2005/07/28(木) 22:20:21 ID:QafBYQ3n
「勘弁しろよ、何なんだあいつは……」
ふと、横向きの視界に誰かの足が飛び込んできた。女子生徒だろう。ギコが反射的に飛び起きて構える。
「何だよぉ〜ギコォ? 漏れだよ、漏れ。ギコがあいつといい感じだったから出て行けなかったじゃねぇかよぉ〜」
その生徒を見てギコは構えた両腕を下ろす。それはギコの幼馴染でありグループの一員、つーその人であった。
「そ、そんなんじゃねえよ。それより遅ぇぞつー、何してやがったんだよ!」
つーを小突いて突っ掛かるギコ。しかしつーは独特ののんびりした口調で悠長に答える。
「そうだぁ、神社の正面でモナーの奴が腰を逆に折り曲げられてて死んでたなぁ。荷物も空っぽだった」
「モナーが死んだ? マジかよつー!」
実際はモナーのデイパックに入っていたヌンチャクを回収しているのだが、つーは考えがあってそれは言わなかった。
だがそれよりもギコは”モナーが死んでいた”と言う言葉にショックを受けた。グループは違うが、同じ部活の仲間であったからだ。
「あぁ〜本当だよ。っと・・・・すぐに放送で発表されるんじゃねぇか〜」
ポケットから怪しげな白い粉が入った袋を取り出して吸い込みながらつーが気だるそうに答える。
【残り37人】


37 :名無しさん@├\├\廾□`/:2005/07/28(木) 22:21:32 ID:QafBYQ3n
流石兄者【男子7番】は暗闇で目を凝らしながら D=03の道を、なるべく壁に添ってゆっくり歩いていた。
歩く道順は、なるべく遠くから発見されないようにと広い道路は使わなかった。・・こちらから誰かの居場所を慎重に発見しなければいけないことはない。見つからなければそれでいいのだ。
こちらには広範囲をもれなく見ることのできる眼があるのだから。

眼・簡易レーダーが兄者の行く手―もうすぐ近くだ―に黄色の光を示している。その光に向かって今は歩いていた。それは移動することがなく、同じ場所にずっとある。
つまり、休憩もしくは待機しているか・・・・もしくはすでに死んでいるか、だ。
こっそりと壁をはさんでその光の位置する場所をかいま見た。
(はずれか・・・。)
もう一度レーダーを見て、すぐ近くに誰かがいないかを確認する。1エリア程をはさんで何人かいるようだったが、流石にすぐにはこないであろう。
兄者は壁を乗り越えておにぎり【男子4番】の”ある”ところへ行った。血があたりに散らばっている。まだ乾いていないのでついさきほどあったことだろう。――この”ゲーム”がはじまったのもついさきほどであるが
(しかし、こんな早く・・・)
やる気がある者がいるのだな。と、どことなく苦い表情でその事実を噛みしめた。
近くに落ちていた、元おにぎり所持物であったであろうデイパックをあける。水も食料も武器も入っていなかった。殺した者にとられたのだろう。到底つかえそうにないものしか残ってはいなかった。
それだけ確認すると兄者はおにぎりを少しだけ移動させた。
背中と後頭部に穴が開いている。相当の量の血が流れたようで、3頭身ということもあってかおにぎりの体は人形のように軽かった。
それを近くの木の根元に横たえてやる。見開いた目を伏せて、両手を胸の前で組ませてやった。
「まぁ、俺にできるのはここまでだ。あとはプログラムが終わるのを待ってくれ。」
クラスメイトだったヤツの無残な死体を見ても何とも思わないなんて、グロ画像の見すぎかな、と考えた。それでも血の匂いは濃厚で、微かに吐き気を覚える。
ぱき、と小さな音が聞こえた。


38 :名無しさん@├\├\廾□`/:2005/07/28(木) 22:22:19 ID:QafBYQ3n
反射的に伏せたのが良かった。そうでもしなければ見事に脳天に穴があいていただろう。
それでも・・・パン という音とほぼ同時に耳が熱くなった。
OK、ピアスの穴でもあけましょうか? 何号まで入るかな、そんなに大きなピアスはいらないのだけれど。
「ぁっ・・・っぅ!!」
兄者は左耳を押さえた。じわりと血がにじむがたいした出血はない。それでも痛いものは痛い。
そのままうずくまっていたかったがそうもいかない、あわてて木のかげに隠れる。
「っまってくれ!俺はおまえと戦う気はない!やる気はない!」
「う・・嘘をつくな!その・・おにぎり君を殺したのはお前だろ!」
この声は・・。1さん【男子2番】だった。
「違う!俺が来たときにはもう死んでいたんだ」
回り込みながら1さんはじりじりと近づいてきた。
僅かに銃・・S&W M19・・を持っている手が震えている。
「・・・・武器はない。だから信じてくれ、殺しあう気はないんだ!」
兄者から目をそらさずに、1さんはその場の下に倒れているおにぎりの死体をちらりと見た。
「手を挙げて、姿を見せて。」
どうしようかと迷ったが、言われた通りにする。他に良い選択肢も思い浮かばなかった。
二人は暫く見合っていたが、1さんが静寂を破る。一瞬にして緊張がとけた。
「・・・・・・・撃ってごめん。やる気のある人だと思ったんだ・・。
・・・先に撃っておいてあれだけど・・・僕はこんなゲームに乗るつもりはないんだ・・。」
銃口を下に向けたのを見て、兄者はほっとため息をついた。
「いや、普通撃つから気にするな。信用してくれて・・一応礼をいっとく。」
兄者はそう言うとカバンとデイパックを持ち直した。場所を移動しなければ、今の音で誰かがくるかもしれない。地図と簡易レーダーを見比べた。
1さんはというと、気が抜けたのかおにぎりの前に座り呆然と彼を見つめていた。
「1さん、ついでだから一緒に行かないか。一人より生き残る可能性は高くなるだろう。」
痛む耳はこの際無視だ。痛みなら、殴られなれているし・・このくらいなら、まだ我慢できる。
「う・・うん。そうだn―――」
盛大にチャイムがなった。


39 :名無しさん@├\├\廾□`/:2005/07/28(木) 22:23:00 ID:QafBYQ3n
キーンコーンカーンコーン・・・・・・・
静かな夜にスピーカーで増幅された、学校ではおなじみのビックベン・・ウェストミンスター・チャイムの音が、不似合いに響いた。鐘が鳴り終わったあとに、今度は
『それでは6時をお知らせしまーす。』
ギコ教授の明朗な声が続いた。
二人は思わず顔を上げる。各場所にどこか置いてあるのだろう、全体的に彼の声が聞こえた。
『死んだ人の発表をしまーす。番号順に言いますよー。』
1さんは名前をチェックしようと地図と一緒に折りたたみ支給されていた名簿と鉛筆を出した。
ここは地獄だ。くよくよしていたら始まらない。・・・そう、”彼”のようになってしまうかもしれない。
『男子10番おにぎりー。15番ヒッキー。19番モナー。女子7番流石妹者―。15番フサしぃー。16番ミナー。計6名です。いやー皆頑張ってくれて先生嬉しいでーす。』
順番に名前に線を引いていく。まだ始まってから間もないのに、こんなに人がいなくなっているなんて、信じられなかった。
引き終わってから、兄者の妹・・妹者の名前が入っているのに気がつく。
兄者を見たが向こうを向いていてどのような表情をしているのかよくわからない。声をかけようとしたがギコ教授の声が続いてかき消された。
『えー、禁止区域を発表しますよー。皆さんメモの準備をしてくださいねー。ええ、まず30分後の6時30に、D=06・・・皆さんが出発したところですよー。に入れなくなりまーす。』
地図に線を入れる。
『その後、9時からA=03。11時からG=06が禁止区域になりますよー。
クラスメイトがいなくなるのは少し寂しいかもしれませんがー。この調子で張り切っていきましょうねー。』
今度は鐘がなることなく放送はぶつっと切れた。
見知った屍の隣で、1さんは口と胸元を押さえている(鷲掴みと言った方が正しいかもしれない)兄者を見上げた。

血の匂いに当てられたのかもしれない。

09/26 PM6:00 【残り37名】


40 :名無しさん@├\├\廾□`/:2005/07/28(木) 22:23:33 ID:QafBYQ3n
時計の針が6時10分を示そうとしていた。
花瓶(女子6番)、モナエ(女子17番)、ガナー(女子5番)の三人は、病院(C−8)に潜伏していた
「ののたんとえーはどうしているのかな……」
「放送では呼ばれなかったけど…」
モナエが外の木々の隙間から僅かに見える道路へ目を移して人影を探す。ガナーも同様に目を凝らすが目立つ道路を堂々と歩く生徒などいるはずもなかった。
「私、話しておきたい事があるの。今はモナエとガナーしかいないけれど、ののたんやえーと合流できたら二人にも話すつもり」
二人の顔を真顔で覗き込んで花瓶が唐突に言う。
「何よ改まって? 何でも話してくれればいいじゃん」
「時間は一応、あるんだからさ。私達が生きている限りだけどね」
「うん、わかった……」
二人の承諾を得たものの、よっぽど話しにくい事なのだろうか花瓶は二人を見据えたまましばらくの間沈黙を続けている。落ち着いたムードの中でようやく花瓶が話を始める。
「あのね、こないだのコイバナ(恋話)ね。私の好きな人の話、覚えてる?」
二人が興味津々の顔で頷き、ガナーがにやけ顔で口を開く。
「覚えてるよ〜、あの時の話。小学一年生の時の話で、何かかなり王子様発言してたよねぇ?」
「あの時、本当は全部話しきれてなかったのよね」
モナエは数週間前学校で話した時の記憶を手繰る。確かあの時、花瓶が好きな男の子がどこの誰なのかについては一切花瓶は触れなかった。
ガナーが問い詰めたが花瓶は”内緒”の一点張りだったのを記憶している。モナエは、その男の子については単なる幼馴染だろうと思っていた。
「誰とかは私は言わなかったでしょ?実はその人……皆が知っている人なんだぁ」
「マジ?」
「その前にね、この話には続きがあってね……一から話したほうがいいと思うからそうするね」
体育座りのまま穏やかな笑みを浮かべて花瓶が続けた。それにモナエはガナーと共に聞き入る。さっき聞いた時とは違う臨場感があった。
「ガナーが今言ったとおり、私が小学一年生の時の話ね。近所に仲良しの友達がいて、私はその人が好きだったんだ。優しくていつも私のそばにいてくれた。
 六歳で優しいとかって言うのもあれだけどね」
思い出と言う名の引き出しから一つ一つ宝物を取り出すように言葉を紡いで花瓶が話す。どれだけその人の事を花瓶が好いているかが窺えた。
尤も今の状況ではつい先日の事すらも遠い日の思い出に思えたが。
「いつだったかな? 近所の公園に凄い綺麗な花が咲いてた時、一緒にピクニックに出かけたんだ。いっぱい花を摘んでね、交換とかしてたの……」
男が花摘みなんかするんじゃねぇよ……という顔でガナーが苦い顔をしていたが、それはともかく。


41 :名無しさん@├\├\廾□`/:2005/07/28(木) 22:24:19 ID:QafBYQ3n
「ねぇ〜、このお花、綺麗でしょ?」
「うん、綺麗。あのね、僕、花瓶ちゃんと約束したい事があるんだ」


「たまんねぇ〜っ!」
ガナーが背中に手を伸ばして両手で掻き始める。よっぽどこそばゆい話なのだろう、それを見て吹きだす花瓶。
「それで?」
いつの間にかモナエは胡座を組んだまま興味深そうな眼差しで花瓶の話の続きを待つ。
「その辺までの話はちゃんと覚えてるんだけど、そこから良く覚えてないの。でもね、結婚しようねって約束した。
 私、小さく“ウン!”って頷いて一緒に手を繋いで帰ったんだ。そこまでは話したよね?」
まずモナエが頷き、続いて首筋を掻きながらガナーも二度首を縦に振った。少ししんみりとした表情になって花瓶が続ける。
「それからその人が引っ越して……六年間は会えなかったけど、私は片時も忘れた事はなかったんだ。勿論、連絡なんか取れなかったけど……」
そんな昔の事をよくそこまで意識しているなぁとモナエは思った。その話に特別な感情は込み上げてこなかったが、それにしてもガナーが少しリラックスし過ぎだ。
普通、こういう時に支給品のパンを食う?しかも寝そべって?ガナーがこういう話は苦手なのは百も承知してはいるんだけどね……
それは気に留めずに花瓶の話が徐々に熱を増してゆく。
「小学校卒業寸前に私も引越しして……引越し先はすぐそばだけどね、中学に入った時は本当に驚いた! あの人、同じ中学校だったの。
 その時ちょっと声をかけたんだけどね、うちの中学校は二つの学区の生徒が集まってるでしょ?あの人は小学五年の時に隣の学区に引っ越してきてたんだって!
 そう言ってた。でも昔の王子様っぽい感じは全然無くなっててビックリしたなぁ」
中学生になってて王子様のままだったら怖いな……そうモナエは思ったが、これも脳内で留める。
話が核心に近づいてきたを察知したのか、ガナーが体を起こして花瓶の話に再び耳を傾け始めた。
「……それでもやっぱり、その人が大好きだった。忘れられなかったのもあるけど、私の中ではあの人の中身が全然変わってなかったんだと思う。でも現実は甘くなかったんだ……」
話を進めるうちに花瓶の声のトーンが段々沈んだようになり、浮かない表情に変わっていく。
それを気にしながら話を聞くモナエ達のいる隣の病室、右手に銃を握りながら花瓶達の様子を窺う男子生徒の影があった。


42 :名無しさん@├\├\廾□`/:2005/07/28(木) 22:24:50 ID:QafBYQ3n
「これではまるっきり盗み聞きにょら……」
黒く鈍い輝きを放つH&K MP5A5。その引き金にかけていた指の力を緩めてしたらば(男子9番)は苦笑いをした。
彼は自分のプログラムでのスタンスを模索しながらとりあえずは生徒を捜していた。誰とも会う事なく時間が経過している。
それで仮眠をとるために隣の病室で寝ていたのだが、花瓶達の賑やかな(状況を考えて欲しいにょら……苦笑)話し声が耳に入ったのでやってきたというわけだ。
話しの途中からやってきたので詳しい内容はわからないが、どうやら花瓶の小学校時代の初恋らしき話をしている事だけはわかった。
少々の時間ならばこういう話を聞くのも悪くはない。それにしても寝転がりながらパンを食べるガナーはリラックスし過ぎだろうとしたらばは思った。
可愛い目して・・・あれではまるっきり男子生徒だにょら……一見、蛮族風(失礼な!)のモナエさんのほうがよっぽど女性的だにょら。ははは。
それはともかく、これ以上盗み聞きを続けるのはなんだか悪い気がした。意を決して……という程のものでもないが、したらばは立ち上がり三人の前に歩み寄り始めた。
人影が伸び上がったのに最初に気付いたのは花瓶だった。すぐさまH&K P9S .45ACPに手を掛けてそちらのほうへ向ける。
それでモナエとガナーも反応し、背後を振り返った。それでしたらばはようやく気付いたが、モナエの右拳には鈍い銀光を放つメリケンサックが装着されている。
あれが彼女の支給品だろうか?その装飾品はモナエが装着しているからこそ見栄えが良いが(失言)、実際にはハズレ武器と言っていいのではないだろうか。
今までの銃声の数を聞く限りでは拳銃も相当数支給されているはずだ。それで場を和ます話が思いついたので、したらば引き金から指を外してからモナエに話し掛けた。
「ね、念のために聞くケド、そ、それは最初から鞄に入れていたにょら?」
それでモナエは眉をしかめながらメリケンサックを見つめる。
「そうだけど(怖っ!!)・・・ したらばさぁ、未だに私をスケ番とか思ってるわけ? 口元が震えてるわよ〜。」
そのモナエの言葉のどこかに反応したのか、花瓶の顔色が一瞬変わったのをしたらばは見逃さなかった。視線が送られているのに気付き、続いて花瓶が口を開く。
「……やる気じゃないのね、したらばくんは」
「暗中模索の段階……かな? やる気になる予定はないにょら。一つだけ言える事は、お話の邪魔をするつもりはないってことかな。
 僕はこの奥で仮眠してたんだけど、話し声が大きかったのでつい顔を出しちゃってさ・・・」
「あっ、ごめんなさい」
したらばと花瓶が揃って苦笑する。花瓶もH&K P9S .45ACPの引き金から指を外し、再び腰を下ろした。
「まぁ、したらばで良かったよ……やる気の人間かと思ったじゃん。一安心ね。どっこいしょ!」
気だるそうにそう言うと、モナエもどかっと座り込んで胡坐をかく。 先程、ガナーより女性的と思ったのは撤回したほうが良いかも?
「改めて聞くけど、それが花瓶の支給品にょら? ちなみに僕の支給品はこの銃だけど」
したらばが訊いた。花瓶の銃は理解したが、モナエとガナーの本当の武器が何なのかがわからなかった。
「そう、私がこの銃でモナエがアイスピック。で、ガナーの支給品は、これ」
そう言うと花瓶は体を捻り背後を手で掻き分ける。そこには角ばったUFOのような物体が置かれていた。
「説明書を読んだ限りだと、これは地雷みたいね。もう二つあるわ。」
とりあえずしたらばと花瓶達はお互いの今までの行動を話し合った。


43 :名無しさん@├\├\廾□`/:2005/07/28(木) 22:25:24 ID:QafBYQ3n
双方とも特に得るべき情報はなかったが、花瓶達はえー(女子3番)とののたん(女子13番)を捜しているという事だ。
一応、したらばからはモララー(男子19番)とレモナ(女子21番)がビル群で隠れているのを見掛けたということを話しておいた。
もし、二人がまだそこに隠れているのであれば、何かえーやののたんに関する情報を得ていたかもしれない。
「したらばくん、色々と有難う。こっちからは何も情報与えられなくてごめんね。ずっとここに隠れていたから」
「いやいや。ところでさっきまで話していた恋愛話の続きをそろそろどうぞにょら〜」
「あっ! そうだった。じゃあ続きを話すわ。したらばくんも聞いていって欲しいけど、いい?」
すっかり忘れていた様子の花瓶が訊き、したらばは木に背中を預けたままで頷いた。あの後の話の流れが何故かむしょうに気になっていたのだ。
したらばは常に己の良心が語りかけるままに行動しているのだが、その良心が”この話の先にこれからの行動を決める何かが隠されている”と告げているような気がする。
「どこまで話したっけ? あ、その人と中学が一緒だったってところまでだったよね。それでね、その人は両親が喧嘩別れして、母親と一緒にこっちに戻ってきたの。
 離婚が原因で少し不良っぽくなったんだと思う。でも格好良くて女子から人気あったから・・・
 ちょっと話しただけで他の女子から滅茶苦茶暴言を吐かれて“女狐”とかっていじめられて精神的にもかなり参ってた……」
花瓶のグループで花瓶と中学初期の頃から一緒だったのはえーだけだったので、この時点ではモナエ達もまだ男子生徒の正体は勿論の事、
花瓶がそんな目に遭っていた事すら初耳だった。
「ある日、彼を三年の先輩が3人くらいで暴行している所を見ちゃったの。”ちょっともてるからっていい気になるなって……いっぱい殴られたり蹴られたりしてた。
 私はもう夢中で止めに入ったの。そうしたら彼を暴行している人達は、今度は私の制服を引き剥がして…強姦しようとした…
 それで彼はもの凄い怒って、その場で先輩達を金属バットで散々に殴って…殴って……」
そう言えば入学して間もない頃にしたらばの隣のクラスの生徒が三年生数名を病院送りにして停学になった事件があった気がする。したらばは考えを巡らせた。その生徒は確か……
「もしかしてその人……うちのクラスの…ギコ!?」
モナエが驚愕した様子で目を見開いて花瓶に訊く。それでしたらばも思い出した。そう、その暴行事件で停学になった生徒は現在同クラスのギコ(男子5番)だったはずだ。
花瓶が半泣き状態で頷いた。それでもしっかりした口調で話しを続ける。
「それが原因で彼……ギコくんは、更に周りから孤立して今みたいになっちゃったの。私も話し掛けたけど、もう彼は聞く耳を持ってくれなかった。
 何もかもが嫌になったんだと思う。でもね……」
そこまで話してからしばらく沈黙して目を伏せる花瓶。次に顔を上げた時は幾分明るい表情に戻っていた。


44 :名無しさん@├\├\廾□`/:2005/07/28(木) 22:26:00 ID:QafBYQ3n
「……三年で同じクラスになって、その時に謝ってくれた。二年間邪険にした事を、あの時に危険な目に遭わせた事も。悪いのは自分じゃないのに。それっきりなんだけどね」
花瓶がモナエ達を見回したのでしたらばも不意にモナエ達のほうを見てみる。二人共先程とは違い話を聞く事に没頭していたようだ。
特にモナエは胡座をかいたままながら花瓶のほうへ前傾している。
「その後も相変らずつーちゃんとかウララーくんとかと悪い事をしているけど、私は今のギコくんは今でも優しい心を持った人なんだって信じてる……」
そう話す花瓶の表情は、とても幸せそうだなとしたらばは感じた。
したらばは恋人を作る云々に関しては今までに全く関心がなかったが、少しだけ興味を持ってみるのも悪くないのではないだろうかと今更ながら思った。
そう言えばこの間、文化祭の後片付け中に廊下で話していたモナー(男子19番)とレモナ(女子21番)も今の花瓶のような表情だったな、とも思った。
「あいつがねぇ……でも、花瓶の目は間違っちゃいないよ、きっと」
「馬鹿だねぇ! 馬鹿の天才! でも、いいと思うよ。そう思えるっていうのは素敵な事だと思うよ」
ガナーとモナエの言葉に照れ笑いを浮かべて小さく何度も頷く花瓶を見ながら、したらばの脳裏に天啓のように一つの考えが閃いた。おもむろに花瓶を見据えて捲くし立てる。
「つまり、ギコくんと合流して打開策を考えたいんだにょら。その為に二人にギコくんの事を理解して貰う為に今の話をしたんでしょ?
 もし信頼してくれるなら、僕がギコくんを捜してここにあなたがいる事を伝えるにょら?」
「えっ?」
突然のしたらばの提案に鳩が豆鉄砲をくらったような表情になる花瓶。そのまま薄笑いのような表情に変わり硬直する。

したらばは花瓶から手渡されたメモをポケットに入れて走っていた。
「良心に従って行動するのが、後悔しないで人生を全うできる手段だと思うにょら。僕はそれに従ったまだから・・・」
首を傾げながらメモを手渡す花瓶の表情を思い出し、その回想に返答するかのようにしたらばが独り言を呟いて満足げな笑みを浮かべる。
したらばは出口の先の林に駆け込む。やがて彼の姿は梢の奥に消えていった。


09/26 PM6:20 【残り37名】



45 :名無しさん@├\├\廾□`/:2005/07/28(木) 23:00:59 ID:12XdHKE0
場所はG−7の民家の一部に当たる。ありす(女子2番)は戦慄して、右手に収まっている仏像を強く握り締めた。
眼前に立つフサギコ(男子19番)の鋭い眼光、そして右手に握られた鎌。 夕焼け空に煙を伸ばす煙草を咥えた口元は強く食い縛られている。
はたして、これを好意的に受け止める生徒がいるだろうか?フサギコが、ありすを襲う目的で立ちはだかっているという事は、一目瞭然だった。
ありすは唾を呑み、フサギコの目を見詰め返した。鋭い目付きが、射抜くようにありすを見据えている。
フサギコは、ありすの幼馴染のタカラギコとは親友と呼んでいいかもしれないほどの親密な関係だった。
ありすやタカラギコと知り合ったのは中学入学時で、当時のフサギコは素行不良のお手本みたいな生徒だった。
しかし、他校の生徒と喧嘩をやらかして怪我を負っているところをありすに助けてもらったり、タカラギコの薦めで音楽を嗜むようになりし始めた頃から、徐々に話し易い人物になった。
平たく言えば、人間として”丸く”なったと言えた。中学三年に進級して同クラスになった時には、ありすすらも普通に話し掛ける事ができるほど常識をわきまえた生徒になっていた。
少々女性に対して軽い部分があったが、それはご愛嬌として流す事ができた。自分がちょっかいを出されれば、また見方も変わっただろうけれど。
「俺の……」
膠着が途切れ、ありすの心臓の脈拍が上がる。フサギコが煙草を咥えたままで、声を口の端から出した。ありすは今一度考え直した。
頻繁に会話をしていたわけではないけれど、フサギコは男子の中では比較的親しい生徒だ。率直に”やる気”だと判断するのは、いけない。
現に今、フサギコは襲い掛かるでもなく話し掛けてきているではないか。ありすは一抹の希望を胸に秘め、祈るように続く言葉に耳を傾けた。
しかし、その希望は瞬く間に打ち砕かれた。
「俺の支給品は、この”鎖鎌”なんだ。結構切れ味いいんだぜ。簡単に首を切り落とせたんだもんな。ほら。この軍用ナイフとチャクラムは戦利品だぜ?
 でも、こんなんじゃ、銃には勝てないだろ?死にたくねぇんだよな俺。だから……」
戦利品って・・・!!やる気になっていたなんて・・・。ありすの背筋を冷たい汗が伝う。続くフサギコの言葉は概ね推測できた。少なくとも、ありすの顔をほころばす内容ではない。
聞く必要もなければ、聞きたくもなかった。フサギコが鎖鎌を両手で握り直している。街灯の明かりが反射して、光が刃の上を滑らかに走った。
「悪ぃけどさぁ、ありす、死んでくれな♪」
そう言うとフサギコが腰を軽く沈め、咥えていた煙草を地面へ吐き捨てた。煙草の先端に灯っていた火が、線香花火の最後のようにぱあっと小さな花を咲かせて散華した。
―――――タカラ、ゴメン。あたし、早くも終わったかもしれない……!
ありすはそう思いながら、神に祈る思いで仏像を強く両手で握った。その時、砂利を磨り潰すような音と共に、手の中の仏像の上半身が九十度横へと傾いた。
場違いに間の抜けた顔になっていたかもしれない。手の力を緩めて両手に収まった仏像を覗き見る。
上半身を右へと捻った仏像の足元、ありすの手の平に黒い粉状の物があった。刹那、閃きが走り、ありすはその粉の正体を理解した。
同時に固い地面を叩く靴音が鳴り、フサギコが鎖鎌を突き出してありすへと突っ込んできた。 ありすは慌てながらも、懸命に仏像の上体を回転させた。
その度に仏像の台座下から黒い粉が磨り出され、ありすの右手の平へと溜まっていく。足音は既に寸前まで迫っていた。
ありすが顔を上げた途端、フサギコが突き出している鎖鎌の刃全体からカメラのフラッシュに似た閃光が放たれた。

46 :名無しさん@├\├\廾□`/:2005/07/28(木) 23:07:05 ID:12XdHKE0
その目映い光の直撃を受け、ありすはたまらず両目を瞑ってしまった。それでもありすの右手は、フサギコの顔があるであろう部分へ向けて振るわれた。
開いた右手から黒い粉が飛び散り、フサギコの眼球へと降りかかった。
「ぐぁっ!舐めたまねを・・・!!」
視界を封じられたフサギコは暗闇の中で絶叫し、反射的に身を翻した。金属音が響き、同時に地面へと倒れ込んだ。
「げっほげほっ!」
フサギコが咳き込む声が聞こえる。ありすは早足に後ずさりをしながら、縮小した瞼の筋肉の抵抗に抗って目を開こうと試みた。
僅かに開いた左目の向こう、ぼんやりした視界の中でうつ伏せになっているフサギコの輪郭がおぼろげに見えた。
あれこれ考えている暇はなかった。ディパックを掛けなおしながらフサギコに背を向けて駆け出す。
しかし、数歩も走らないうちに何かと激突して、ありすはもんどりうって仰向けに倒れ込む事となった。
「えっ……?」
壁にしては柔らかい感じだった。そう思いながら見上げると、それほどガタイの良くない男子生徒が、戸惑ったような顔でありすを見下ろしていた。
「どうなってるにょら? ありす……」
その男子生徒――したらば(男子9番)がありすの腕を右手で掴み、引き起こした。それからが、鎖鎌を掴んで立ち上がろうとしているフサギコを睨みながら、言葉を続けた。
「……何があったのかって、まぁ、予想はつくにょら。」
「したらば……」
フサギコは多少狼狽した様子で、それでも距離が空いたのをこれ幸いと懐から煙草を取り出し、口に咥え、火を点けた。
ありすは続けざまに現れた男子生徒を前に半ば混乱に陥りかけたが、どうにか意識を留めて考えを巡らせた。今、するべき事は何か……。
「僕の支給品、これだにょら。すごいっしょ? でもここで弾を使うのは少しもったいない気もするにょら・・・」
したらばが、握った両拳を胸元で構えながら言った。ありすがその拳へと目をやると、奇妙な形の銃が構えられていた。
フサギコがありす達との距離を摺り足で少しずつ詰めてきた。ありすは、フサギコの背中越しに窺い続ける。
鎖鎌を下手に構え、フサギコが駆け出してきた。
「ふっ!」
ありすは驚きに目を見開いた。したらばが、フサギコと同時に駆け出して一気に距離を詰める。次の瞬間にはフサギコの手から鎖鎌が弾き出されて宙を舞った。
何が起こったのがありすが理解できぬまま、頭部から血を流し、白目を剥いたフサギコは再びうつ伏せに崩れ落ちた。
よく見るとしたらばがバットをスイングしたあとのようになっている。ありすは状況を理解した。
フサギコはあの銃でフルスイングされて失神したのね!さすがしたらば。野球部の四番バッター・・・。
したらばは考え込んでいるありすを尻目にフサギコの武器をすべて自分のディパックに移した(酷っ)。
「他にもやる気の奴がくるかもしれないにょら!それとこれをもっておくにょら!」
「え・・・?ええ!わかったわ!」
したらばは自分の銃をありすに渡し、自分は軍用ナイフを握り締め、駆け出した。

09/26 PM6:40 【残り37名】

47 :名無しさん@├\├\廾□`/:2005/07/29(金) 16:28:23 ID:PeJTffsb
はぁ・・・困った。
【男子六番】ウララーは、地図とコンパスを何度も見交わし、そして空を眺めた。
手はずでは実行本部から出発したらすぐC-1で【男子五番】ギコたちと落ち合う予定だったのだが、迷いに迷い、いつのまにかF-4の公園にたどり着いていた。
彼は、クラスでも1,2を争うほど方向感覚が無いのだ。コンパスを見て地図を見て、頭では理解しているはずなのに、なぜか別の方向へ行ってしまう。
おかげでいつも一人で買い物などには行けないのだった。
今も、公園の、既に草原となっているところを、うろうろしているのだが、なかなか抜け出せない。何故?
もう一度、コンパスと地図を見直し、左腕に付けた腕時計の時刻を見た。現在時刻は、丁度AM7:00を廻ったところだった。
先ほどの放送では、禁止エリアは九時からA-3、十一時からG-6となるそうなので、当座大丈夫なはずだ。多分また見当違いな所に行かなければ。
しかし、放送を聞いた時、死亡者の多さに彼は驚かざるを得なかった。既に男子十番おにぎり、十五番ヒッキー、十九番モナー、女子十六番ミナーの四人が死んでいるのだ。しかも、銃声も聞こえた。
やはり、もう皆やる気になっているのだろうか。
彼は、支給武器の防弾チョッキを下に着込んだTシャツの裾を、ギュッと握り締めた。
防弾チョッキ。それは、当たりといえば当たりなのだろうが外れといえば外れだった。
確かに彼はケンカが強く、反射神経もとても良いのだが、相手が例えばボウガンや刃物だった場合、効くのだろうか。
それに、相手が胴を狙うとも限らないわけだし。頭を撃たれたら、一発で終わりだ。
とにかく何か頭を覆うものを探さないといけない。落ちている可能性は0に近いけども。
そう思っていると、草原に風が吹いてきた。
涼しい。風が顔に当たり、とても心地よかった。秋の風だから結構、冷たいけど。
気持ちいいなーと思っていると、自分が空腹であることを思い出した。
彼は公園の、草原の中にポツンと置いてある、雨風に晒されてかなり痛んだベンチにデイバックを下ろし腰掛けた。

48 :名無しさん@├\├\廾□`/:2005/07/29(金) 16:29:28 ID:PeJTffsb
デイバックの食料は、結構カタくなっているパンと水1リットル。普通に、足りなかった。
しかし、彼は自分のバックに、千円以内という規定を大幅に逸脱したスナックや飴、クッキーなどの菓子と、ジュースを容易していたのでそれほど困りはしないはずだ。
ひとまず、900mlのペットボトルに入ったスポーツドリンクを飲み、チョコチップクッキーの箱を開けた。
甘い匂いが、鼻を刺激した。溜まらず、一枚を一口で食べる。美味い。
本来なら、彼(気さくな性格だが、あまり友人は作らないタイプだった)の少ない友人、ギコやモナー(もう死んでいるんだったっけ)、【男子二十番】モララー、【女子十一番】つーと一緒に食べられたら、どんなに幸せだっただろう。
というか、本来はそうなるはずだったのだが。そう思うと、涙が出てきた。
「あいつらに、会いたい・・・」
ウララーは、いつのまにかそう独り言していた。

「会わせてあげようか?冥土で。」
突然、バン、と左胸に衝撃を食らい、ウララーは左胸を押さえた。
痛い、かなり強い衝撃だった・・・でも、耐えられる。銃弾を食らった?防弾チョッキが無ければ、死んでたな・・・
ん・・・?あの声って・・・。
「こんな目立つ所で、クッキー食べるなんて余裕ね。」
【女子八番】しぃが、目の前、およそ十メートルの距離からぬっと現れた。右手に、血の付いた銃(S&W M945 .45ACP)を持っている。左手にも何か持っているようだが、見えなかった。
しまった。クッキーを食べている間に忍び寄られた・・・?にしても、何故気づかなかったんだ、自分のバカ!
「やぁ、しぃちゃん・・・一緒に食事でもどう?」
左胸を押さえたまま、ウララーが言った。しぃは、また銃をウララーに向け、腹に二発発砲した。痛い。泣きそうに成る程痛い。
「私は冗談をいわれに来たんじゃないのよ。貴方を、殺しにきたの」
「可愛い顔して、ずいぶん怖い事を言うようになったね・・・」
「武器を持っていないくせに、偉い口を叩くのね・・・」
銃を構えたまま、ウララーに近づきながら言い捨てた。
何か、違う。彼女は前はこんな性格じゃなかったはず・・・?


49 :名無しさん@├\├\廾□`/:2005/07/29(金) 16:31:49 ID:PeJTffsb
彼女からしてみれば、武器を持っていない僕は相手にもならないっていうことか?
・・・気にくわない。
ウララーは、指をポキポキならし、彼女に言った。
「武器なら、あるさ。俺の、右腕がある!」
性格なんて、今はどうでもいい!殺すか殺されるかの状況だ。
殺されるくらいなら・・・自分が殺してやる!性別なんて関係無い!
ウララーは、怯んで足を止めたしぃの右手、S&Wの弾倉を蹴り、銃を後ろ数メートルに飛ばした。すばやく、彼女はこちらを向いたまま後ろに逃げる。
このまま鳩尾に入れて、顎にアッパー。そして、垂直に軽く跳んで側頭部に回し蹴り。
足の長い、自分だけの、自分だけで編み出したこの技。コイツは文字通り「必殺技」。以前、高校生を地に伏せさせた事もある。
この技なら、いける!
ウララーは、2,3メートル離れたしぃへ一気に突撃した。右手を構えた。
しかし、自分が走り出したと同時に、彼女は足を止め、左手に持っていた何かを右手に移動させた。
迎え撃つつもりか、ケンカなら負け知らずの僕を!面白い、受けてたってやる!
彼が右手を振り上げ、殴ろうとしたとき、いきなり何か異変が起こった。
右腕が、今まで生きてきて、感じたことの無い、想像を絶する痛みを生じている。
見てみると、右腕に手投げナイフが刺さっていた。彼女の武器ーーー!?
痛くて動かせない右手をかばい前を見ると、既に彼女は居なかった。何処に!?消えた!?
「こっちよ」
後ろから声がするのと同時に、彼女の細い左腕がウララーの首に巻き付いた。
ウララーは足が長いが、別に身長が特に高いわけでもなく、一般の三等身の身長だ。
彼女も、確か自分とは変わらない。もっと身長があれば・・・。いや、なんとかこの状況を打開しないと。
左手で肘打ちを、と思ったが、既にそれは読まれていて、すばやく左腕、肘のすぐ上にもナイフが差し込まれた。とても、痛い。腹に三発食らった時とは比べようも無い。
「貴方は、今日、ここで死ぬ。さようなら」
やばい、刺される!
ウララーは、首を振った。それと同時に、何かまた別の異変が起こった。
カツッ、という音がして、首が重くなった。しかし、今度は痛くない。しかも、首を刺されたら普通死ぬはずだが、意識ははっきりしている。
むしろ、首輪が重い?いや、そんなことはどうでも良いのだけど。
「ああもう、動かないでよ!」
彼女が逆ギレしている。それはそれでかわいいーーーいや、今はそんな事考えている状況じゃない。


50 :名無しさん@├\├\廾□`/:2005/07/29(金) 16:32:39 ID:PeJTffsb
一瞬のスキを付き、ウララーは後ろに頭突きをした。キャッという声の後、首は軽くなった。しぃの腕がほどけたのだ。
後ろに振り返ると、彼女はもう武器を持っていない状態で、尻餅をついていた。両腕にナイフさしやがって・・・ぶっ殺してやる!
彼は右手を振り上げーーーナイフが揺れ、かなり痛んだが耐えたーーーしぃの顔後数センチというところで、右手は止まった。
しぃも、思わず目を見開いた。今までの異変とは、遙かにレベルが違う「異変」が、発生した。
ウララーの首輪が、ピー、ピー、という音を発しているのだ。
ここは禁止エリアではない。しかも、別に首輪を引っ張られたりはしていないはずーーー
「え、何?何だよ、何なんだ!?」
ウララーは、両手で首輪を握って、何か探っている。そして、それが首輪の後ろに回ったとき、首輪は爆発した。
爆弾の搭載された首輪といっても、恐らくそれは子供の首を爆破して二つに分ける程度の爆弾だったので、しぃを巻き込んではいなかった。勿論、衝撃波ぐらいは伝わってきたが。
それどころか、上半身は、爆心に近いところ以外はほぼ普通だ。首が無いのを、除いて。
どうやら首はどこかへ飛んでいったようだ。胴体は、赤々とした血を大量に吹き上げはじめた。
血のシャワーが、しぃの体を赤く染め上げた。そして、それが止まったあと、彼女は倒れた胴体の方に近づき、首があったところをよく見た。そして、刃先の溶けた手投げナイフを拾い上げ、ピーンときた。
あのとき刺した手投げナイフは、ウララーが首を動かしたために狙いがはずれ、首輪に刺さっていたのだ。力一杯刺しただけでは首輪に傷ができるだけだっただろうが、それが首輪をつけるとき
にできたであろう隙間だったため、うまく突き刺さったのだ。
首輪の爆破条件には、確か「取ろうとするとコードが切れ爆発する」とあった。刺さった時、恐らく、コードがあのナイフによって切断されたのだ。そして、爆発。
これは、使える。
しぃは、ニヤリと口元をゆがめた。そして、ウララーの服を剥ぎ、防弾チョッキを奪い、着込んだ。
実は彼女は防弾チョッキの存在にも気づいていたのだ。撃たれても血が出なかったから。
とりあえず、銃に、減った四発を追加し、ウララーの食料を全て奪い、しぃは再び移動した。

これでいい。この調子で、恨み死にした姉の無念を、晴ラシテヤル。

【残り38名】

男子六番ーウララー
女子九番ーしぃに首輪を爆破され、死亡。

51 :名無しさん@├\├\廾□`/:2005/07/29(金) 23:36:11 ID:nE79D7Aq
マンション(B−8)の一階に、えー(女子3番)は出発直後から立て篭もっている。
「テレビは見られない、電気は点けられない、おまけに食事は安っぽいパン! もう、最悪!!」
愚痴愚痴と言いながら(気持ちはわかるが)、えーは椅子に腰掛けて支給品であるS&W M19 .357MAGを鞄の脇から抜き出す。
「でも、これさえあればきっと生き残れる・・・あたし、頑張りますよ!! つーさん!」
S&W M19の銃口を恍惚の表情で眺めながら、えーは独り言を呟いた。
「そろそろ行こうかな。つーさん待っててくださいね!・・・あっ! あれで試しうちでもしようかな・・・」
公園のほうから鳴っていた銃声が止んでからしばらくして、えーは窓の外の何かに気づき、椅子から立ち上がりディパックを担ぎ上げた。

「られかいます! この建物に誰かいますよ!」
ののたん(女子14番)は、人影を頼りに、マンションの中の人の存在を認めていた。
「られれしょうかね……やるきじゃなきゃいいのれすが…」
音を立てないように古びたドアノブに手を掛けて少し開く。ドアには鍵が掛かっていなかった。まず耳を澄ませて音を聞いてみる。
荷物の整理をするようなガサガサという音が耳に届いてきた。続けてドアと向き合った状態で中を覗き込む。
「誰?」
建物の中から馴染みの深い声がして、それでののたんの表情がパアッとほころぶ。それがクラス内で同グループの上に、その中でも特に親しいえーの声だったからだ。
ドアを開けて室内へ飛び込むと、部屋の奥にある机の前にディパックを担いだえーが立っていた。
右手に持った銃を向けていたが、ののたんの姿を確認するなりゆっくりとそれを下ろす。
「えー! 私れすよ!」
「ののたん、無事だったのね?」
えーが微笑みながら声を掛けた。ののたんは元気良く頷いてからディパックを投げ出してえーに駆け寄る。
「良かったれすよ! 花瓶ちゃん達と……えっ?」
ののたんがブレーキをかけて室内の真ん中付近で急停止する。机を隔てた向かい、えーの握るS&W M19の銃口が再び持ち上がりののたんの胸に向けられていた。
「な、何れすか、えー?」
ののたんは入口に誰かが来たのかと思い、振り向く。今さっき彼女が閉めたドアは、色んな意味で無情にもしっかり閉められていた。それで漠然と状況を理解する。
「そんな……らって今、呼んでくれたじゃないれすか……」
えーに向き直り、消え入りそうな声で訊くののたんの目を、既に透明な液体が満たしていた。えーは、その顔を鼻で笑いながら一度銃口を下げる。
「あたし、まだ経験がなくて近くないと当たらないんだ。さっきの距離じゃ、外すかもしれなかったから」
えーの理解不能な……いや、心の内では理解したのだろう、その言動にののたんはただ、半開きの口と涙で濡れた瞳を向ける事しかできなかった。
「じゃ、そろそろ始めよっか!」
えーが銃口を向けた。今度こそあの銃口から放たれた鉛玉が自らを撃ち抜くだろう。
親友のえーに銃を向けられた事で、ののたんの心に僅かに残る希望の光が絶望という名の黒い闇に包み込まれていく。
「悪いけどあたしさぁ、友達なんてどうなったってしってこっちゃないからね。こんな状況だし。」
えーの言葉も、ののたんの耳にはもう入らなかった。
「ののたん……」
トリガーに指を掛けたえーが、一瞬躊躇したように言葉を止める。ののたんが何か言うのを待っていたのだろう。
「バイバイ」
数秒の間を置いて、えーがゆっくりと息を吐き出して付け足す。そして両手で握った銃のトリガーに力を込めた。

52 :名無しさん@├\├\廾□`/:2005/07/29(金) 23:37:17 ID:nE79D7Aq
銃声が室内に鳴り響き……何故かえーが左手で耳を押さえ、顔を歪めている。
「ののたん、こっちへ早くくるにょら!」
ののたんはその声で硬直させていた体を解除させ、後ろを振り向く。一人の男子生徒が身を翻して建物の中に飛び込んできていた。
ののたんはわけがわからないままにその生徒、したらば(男子9番)に駆け寄る。
「ありす! そいつを頼んだにょら!」
屈みながらののたんの脇をすり抜け、したらばがえーへ接近する。左手に銃ような物が握られていたが、それが何なのかはよく見えなかった。
したらばと擦れ違いざまにありす(女子2番)に手を引かれ、ののたんは玄関のほうへ消えた。同時に頭上で壁の一部が爆ぜて白い残骸が舞った。
「何すんのよ!」
建物の真ん中付近を横切って駆けるしたらばを二発の銃弾が襲う。だがそれは机の上の筆記用具を砕き、メモ帳を破り散らしただけだった。
そのまま入口側の大きな机を一周して、したらばは再びののたんとありすがいる玄関口へ戻って来た。
「親友を泣かせた上に銃を向けるなんて・・・・・許せない!
「まったくだにょら! 状況が状況とは言え、聞くに堪えないにょら!」
混乱気味に見開いた目で見上げるののたんをありすが外へ連れ出した。したらばがH&K MP5A5をえーへ向ける。
「さすがネズミ、チョロチョロするのね。すぐに黙らせてあげる」
えーも一歩も引かずにS&W M19の銃口を玄関口に突き出した。それでもしたらばはえーにメンチ切って口を開く。
「銃を握っただけで生還を確信してるんなら、お前に希望はないにょら。僕を含め、銃を所持している人は多数いるにょら。」
「ねぇ、もうシナリオは出来上がってるんだよ?」
あくまで強気を通すえーに、諦めたように溜息を吐いてしたらばが銃口を下ろす。低く笑い声を上げて、えーが続けた。
「したらば、少しカッコ良かったよ? もう少し張り合って欲しかったけど……序盤じゃ、こんなもんかな? じゃあ、本当にバイバイ……」
「張り合って欲しい? それじゃ……」
銃口を下げたままでしたらばが言葉尻に被せ、微笑み返す。不可解な表情になるえーに、余裕の口調で言った。
「こんなのはどうにょら?」
その時、ようやくえーは鼻を突き刺す不愉快な匂いを感じ取った。嗅ぎ覚えのあるこの匂いは……

53 :名無しさん@├\├\廾□`/:2005/07/29(金) 23:42:32 ID:nE79D7Aq
「……ガソリン?」
えーの言葉尻に、今度はマッチを擦るような音が聞こえた。
突如、したらばの手前で炎が立ち昇ったかと思うと、火線が生き物のように床を駆け巡り、室内の机を囲むように燃え狂い始めた。
「な、何よこれ!」
「二人とも、逃げるにょら!」
慌てふためくえーを尻目に、したらばはののたんの手を引くありすをつれて逃げ出した。
そのまま公園の北の空き地(E−3)までしばらく走ってから、後方のマンションを振り返る。もうすでに一階から二階までは火に覆われていた。
「あれはしばらく消えそうもないにょら・・・政府の連中も消してくれるとは思えないし・・・」
「しかたないよ。命がかかってたんだからさ・・・」
六階建てのマンションが炎によって次々侵食されるのを見据えるしたらばを見ながら、ありすは言い聞かせるように呟いた。
「はっ、はっ……」
「乱暴にしちゃって、ごめんなさいね。」
仰向けに寝転び、息を切らしているののたんにありすが優しく言う。
「さっき、のは……何を、やった……れすか?」
ののたんの質問に、したらばは左手に持った二リットルサイズのペットボトルを見せた。
「?……いゃっ!」
その口からガソリン臭が漂ってきたので思わずののたんは顔を背ける。その様子に笑ってから答えた。
「簡単な事にょら。これにマンションの隣の物置小屋にあったポリタンクに奇跡的にもガソリンが入ってたにょら。
それをこのペットボトルを入れて、床に撒きながら机の周囲を回っていたにょら。そしてそこへ火をつければ、当然ああなるにょら」
ののたんは感嘆の息を洩らし、それから心配そうな顔で燃え盛るマンションのほうに視線を移した。
「あの子が気になるの? 優しいのね」
「だって……何かの間違いれすよ、こんなの!」
「逃げる時に部屋の中でガラスが割れる音がしたから、えーも脱出しているでしょ。心配はないにょら」
えーがどんな捨て台詞を吐いて立ち去っただろうと想像を膨らませて苦笑いするしたらばの脇で、二人はその様子を不思議そうに見つめていた。

無論、したらばはえーを倒さなかった事に一抹の不安を抱いていたのだが。
そして、公園の殺人鬼がこちらの様子に気が付き、近づきつつあるとはこの三人の知るところではなかった・・・。


09/26 PM7:10 【残り37名】

54 :名無しさん@├\├\廾□`/:2005/07/31(日) 17:08:33 ID:mvBBI13J
時間は夜の7時40分を回った所だ。僅かな月明かりが梢の隙間から差し込んでおり、青みがかった視界で朧気な光の帯を成していた。
その公園の北の空き地(E−3)の隣の自然公園(E−2〜3にかけて)の森の奥で、ありす(女子2番)はバックを枕に寝息を立てている(暢気な!)。
この状況下に措いて、彼女は体力的にも精神的にも疲れたのだろう。
ののたん(女子14番)はどうしても花瓶(女子6番)たちに合わなければならないらしく(ギコ[男子5番]から手渡されたメモ)、この場をすでに後にしていた。
その際はもちろん彼女達が病院にいたことを知らせたが。一方、したらば(男子9番)は今まで森の入り口付近で何かの作業をしていたらしく、多少、息が上がっている。
「これでひとまずは安心、か……」
今更だが、したらばはプログラムに乗ってはいない。ただ、逃げ出せるとも思っていなかった。
時には身を潜め、時には島を徘徊して誰か話せる人や使えそうな物資を捜す、いわゆる気の向くままに行動をしていた。
そして、好条件の整った潜伏場所として病院(C−8)を見つけ、一休みをしていたところ花瓶を始めとした、女子中間派グループの話し声を聞きつけてそこへ顔を出した。
この状況でもなお、幼い頃の『約束』を信じて幼馴染のギコ(男子5番)を捜そうとする花瓶に心打たれた……のかはしたらば本人もわかっていないが。
とにかく『良心の赴くままに』したらばは、花瓶とギコを合流させるべく、花瓶に渡されたメモを手にギコ捜しへ出発した。
途中、マンションにて花瓶のグループの一員であるののたんがえー(女子3番)に襲われている場面に遭遇して、秘策の一つを用いて無事にののたんを救出した。
結果、マンションを全焼させてしまったが、これは致し方なしだろう。
そして現在に至る。今は南東部に位置する公園の北部の自然公園(どうやら一つの公園として繋がっているらしいが)で休憩がてら夜が明けるのを待っている。
「さて、どうしようかな……」
何気なしに懐からライターを取り出して火を点ける。
その時、ガサガサという草の擦れる音が森の入り口辺りからして、したらばはライターを懐へ押し込んで入れ違いにH&K MP5A5を手に取る。
刹那、銃声が鳴り響いてしたらばの頬脇を細い風が掠めた。その音でありすが目を覚ました。
「・・・?な・・・何!?どうしたのしたらばくん!」
「いいから、奥へ逃げるにょら!」
したらばが小声で叫びながらありすの背中を押してやる。ありすは素直に従い、森の奥へ駆け出す。先ほど炎上作戦を見て、彼の戦闘能力を信じているのであろう。
「この状況で仕掛けてくるとは…実にいい度胸にょら…。」
『この状況』というのは、暗い森の中という事と、そして相手の武器がわかっていない状態で襲撃をかけているという二点だ。
いちいち不利な状況で襲撃している以上、相手は単に自信過剰なのか、実際に運動神経に優れているかだ。
銃の扱いはそれなりに手馴れているようだ。ましてや、今の銃撃には微塵の躊躇も感じられない。既に誰かしら殺している人間だとしたらばは推測した。
草を擦る音が徐々に大きくなり、したらばの背中へ迫る。したらばの運動神経はけして低くはない。
しかし、したらばは一歩も引くことはなく、むしろ余裕の表情だった。
「そちらがやる気なら、容赦はしないにょら。」
したらばが右手でH&K MP5A5構え、続けて両脇の木の幹へ左手を一振りする。その左手には、いつの間にか軍用ナイフが握られていた。

55 :名無しさん@├\├\廾□`/:2005/07/31(日) 17:23:52 ID:mvBBI13J
血のシャワーを浴び全身が真っ赤に染め上がった女子生徒が、森の中を駆けていた。前方の茂みの隙間からはクラスメイトの姿が見え隠れしている。
しぃ(女子8番)は、何の罪もないウララー(男子6番)を無残にも殺害していた。
彼女は、これまでにおにぎり(男子10番)と前述のウララーを自らの手で殺害している。
おにぎりとウララーは、それぞれまだ夕日が顔をのぞかせているうちに倒している。しぃは『夜の戦闘』に対する分の悪さを感じていた。
しぃは『やる気』の人間である。しかし、彼女は先天性の網膜疾患で夜盲症(鳥目)に罹っていたのだ。しぃは、夜は休む時間にするつもりでいた。
しかしその矢先、何者かの走る音が聞こえ、現場へ向かい様子を見ていたところ森の奥に小さな明かりが灯るのを見てその生徒を襲う事にした。
自分から居場所を知らせてくれた生徒を放っておく理由はない。それに万一、相手もやる気ならば放置しておけば逆に自分が安心して休めない。
拳銃の弾数がなくなれば、泥試合になる可能性がある。ましてや相手は男子生徒だ、夜が苦手なしぃとしては現状以上の不利な展開は避けたかった。
 ――私は姉と同じ道はたどらない。姉のようなドジは踏まない。
刹那、前方から炎が連続的に迸(ほとばし)った。その炎で生徒の顔が照らされ、大きな影が周囲の木々をバックに伸び上がった。
「したらば……ッ!」
数発の銃弾のうち、後の数発がしぃの腹部を貫いた。それでよろけたしぃの腹部二箇所に何かが突き刺さった。
「うぅっ?」
しぃは鋭い痛みに身をよじるも、すぐさま追走を続行する。
どうやら脇腹に刺さったのは多少錆付いているメス(したらばが病院で手に入れたのだろうが、しぃが知る由もない)のようなものだった。
「くっ・・・トラップを仕掛けてたのね。」
呟きながらS&W M945の引き金を続けて引くしぃ。発砲しようとした時、前方の木の幹、丁度しぃの顔の高さ付近を何かが横切った。何か、輪っかのようなものだった。
「えっ!?な・・・何!!?」
同時に顔の表面あたりから痛みが跳ね上がり、血が流れ出す。そのまま足を縺れさせてうつ伏せに倒れ込む。
腹部に刺さっていたメスが更に深くしぃに食い込んだ。
「っぁあぁ!!」
倒れた状態ながらもでS&W M945の弾を撃ち尽くし、同時に左手に持った手投げナイフを形振りかまわず投げる。
だが、それらの銃弾もナイフはおそらく掠りもしなかっただろう。したらばの姿はおろか、足音すらも消え去っていたのだから。
そのまま周囲を見渡す。おそらくはかなりの距離を突き放されたのだろう。もう、しぃにはこれ以上したらばを追う事ができなかった。
それどころか姿の見えないしたらばが息をひそめて銃を向けているのではないかという危惧が膨らんできた。
「くっ…覚えてなさいよ」
しぃが踵を返して、腹部から突起物を生やしたまま一目散に今来た道を引き返していく。その声を耳にして、森の奥でしたらばとありすは安堵の息を漏らす。
「しぃか。夜くらいは休ませて欲しいにょら……」
「したらばくん……ありがとう…」
したらばは頬を赤く染めたのをひた隠しにしながら、トラップの仕掛けを直しを始めた。

09/26 PM7:50 【残り37名】

56 :名無しさん@├\├\廾□`/:2005/08/01(月) 20:22:54 ID:0GbY2XPA
「さて・・・これからどうするアヒャ・・・?」
アヒャ【男子1番】は会場の最も南東、10-1の崖で佇んでいた。
彼は、とりあえず同じ野球部のしたらば【男子9番】との合流を目指すことにした。
しかし、それには大きな問題があった。彼がどこへ行ったか、全く見当がつかなかったのだ。
・・・気がつけば、会場の端。したらばがいる場所とはそうとう離れていることを彼は知らない。既に日は落ち、空も少しずつ闇に侵食されている。
「それにしても、高いアヒャね・・・。」
彼がいる10-1は切り立った崖となっていた。海岸まで来たのだからついでに海草でも拾おうと思っていたのだが、遥か下には海が広がるばかり。波が岸壁を削り取っていった結果だろう。
濃い潮の香りがする風に吹かれながら、今後の行動を考えていたアヒャだったが・・・。
「っ!?」
背後に気配を感じ、振り返る。
ようかんマン【男子21番】がそこにいた。しかし、その顔は最早いつもの笑顔を浮かべてはいない。
その時アヒャは、初めて恐怖で精神が崩壊した、自分の焼け爛れた顔よりも異常な顔を見た。そして、その手に握られたトンファーが、今まさに自分に振り下ろされようとしているのを。

―――野球部の一番バッターとして活躍していた彼にはたくさんの武器があった。
地区でも1、2を争う俊足。捕手以外ならどこでも守れる器用さ。精密なバットコントロール。投手の精神を乱すその顔。
しかし彼の最大の武器は動体視力と瞬発力だった。痛烈なライナーでも絶対に捕球し、甘い球は確実に打ち返す。それが彼の命を救った。
ようかんマンを確認したその瞬間、彼は横方向へと跳び、数センチの差で頭蓋骨を砕くべく襲ってきたトンファーの一撃を回避した。
アヒャを捉えられなかったトンファーが岩を砕く。その一瞬後、ようかんマンが体勢を立て直す前に、隙だらけになったその身体をアヒャが思い切り突き飛ばした。
ようかんマンは地面に叩きつけられることで襲ってくるであろう衝撃に備え、反射的に目を閉じ、身を固くした。が、それはいつまで経ってもやってはこない。
果たして彼は、地面ではなく海面に叩きつけられ意識を失う前に、自分が崖から突き落とされたことに気づいただろうか?
最早知る術はない。そのまま彼は波に飲まれ、二度と浮かんではこなかった。

アヒャはしばらくその場で海を覗き込んでいたが、周囲が夜の闇に包まれつつあることに気付くと、その場を後にした。

―――これはしばらく後の話になるが、ゲームの会場からほどなく離れた海岸で生徒に支給されたものと同じ時計が見つかったという。
時刻は7時38分で止まっていた。

PM7:38 ようかんマン【男子21番】 アヒャに崖から海へ突き落とされ、水死。 【残り36名】


57 :名無しさん@├\├\廾□`/:2005/08/01(月) 21:36:35 ID:rTqVf81Z
ビル街の外れの雑居ビル(B−8)で、レモナ(女子21番)の嗚咽が木霊していた。
グループの仲間であるおにぎり(男子4番)、そして何より最愛の男生徒モナー(男子19番)がその短い生涯に幕を下ろしてしまっていたのだ。
「モナー君が……嫌…嫌ぁ…」
モララー(男子20番)は立ち上がり、レモナの震える背中に手を添える。レモナは昔から情に厚く涙脆い昔気質なところがあったが、それもまた彼女の魅力の一つであった。
レモナが振り向かずに震える声でモララーに呟く。
「ねぇ、モナー君とおにぎり君は最期まで一人だったのかな……もしかしたら私が出発時に合流場所を教えていたら彼らの運命は変わっていたんじゃないのかな? うぅ……」
モナー達の死は自分次第で回避できたんじゃないかという考えがレモナの心理の奥で残酷に回巡していた。
「クラスメートを殺すなんて誰が……信じられない…信頼していた仲間同士がお互いの命を天秤にかけられて、玩ばれて……悪趣味なんてレベルの話じゃねぇよ…
 …レモナ、俺が必ずモナー、そしておにぎりの死に報いるプランを考える。だから、泣くな。モナーが心配するぞ…」
「モララー君……」
レモナはかすれた声を出しながらモララーのほうを振り向く。そして涙をモララーに手渡されたハンカチで拭った。
「モララー達でしょ?」
その場に居合わせていないはずの生徒の声に二人は声がしたほう、明かりがなく、暗い入り口の方に目を凝らす。
「……そうだ。そっちは誰だ?」
モララーが訊いた。レモナは支給品のベレッタM92FSを構えている。
「僕だよ! 兄者さんも一緒なんだけどいいでしょ?」
「1さんか! OK、こっちは俺、モララーとレモナだ。顔見せてくれるか?」
ようやくその声に安堵してモララーが呼ぶ。しかしレモナは銃口は向けたままでだったが。
すぐさま出入り口から同グループの1さん(男子2番)が腰を屈めた姿勢で顔を出した。
続いてその背後から男子生徒流石兄者(男子7番)が体を乗り出してモララー達にお辞儀をする。
「とりあえずは無事で何よりだった」
1さんはモララーの言葉に頷づいてから二人の様子を見比べる。やはりレモナの沈んだ表情が気になったが、とりあえずは話を進めないといけない。
「えーっと、何から話せばいいかな?」
「したらばとは合流できなかったのか?」
顎を指で掻きながら考える1さんにモララーが訊いた。
自分たちは同グループのしたらば(男子9番)と合流できなかったので、もしかしたら1さんと合流していたかもしれないと思っていたのだ。
しかし、その1さんが合流できてない上に今さっきの放送で呼ばれなかったと言う事はしたらばは島のどこかで彷徨っているという事に他ならなかったが、
確認だけはしておく必要がある。 あの楽天家のことだ、おそらくどこか気楽にぶらついているのだろう、とモララーは思った。
もしかしたら同じ部で仲の良いアヒャ(男子1番)とも合流してるかもしれない。その時は快くアヒャを迎えてやらないと・・・

58 :名無しさん@├\├\廾□`/:2005/08/01(月) 21:43:06 ID:rTqVf81Z
そんなことを考えているうちに幾分声のトーンが落ちた感じで1さんが答えた。
「駄目だった。僕が出た時には誰の姿もなかったし、どこからも呼ぶ声はしなかった……海岸そばの雑木林(D−3)に隠れようと思って行ってみたんだけど……」
そこまで話して1さんは兄者のほうを見る。今度は兄者が視線を上げて話し出した。
「……おにぎりが死んでいたんだ…1さんに俺が殺したと勘違いされてな…ちょっとしたいざこざがあって……まぁ、和解したけどな。」
「で、放送聞いた後にモララー達を探そうってことになって。…兄者さんと一緒にここまで来たら、レモナっぽい声がしたから声をかけて今ここにいるってわけ。」
一通り話を終えて安堵したのか、1さんはみんなに断りを入れてからディパックから水を取り出して喉を潤した。
「俺達のほうだが、簡潔にいうと俺がチャンコ(に襲われていたところをレモナに助けてもらったってとこだ。
 これからの行動予定だが、色々と要りようになるからこのビル群でいろいろと捜索するつもりだ。四人もいれば大分作業がはかどる筈だ。」
そこで三人に一度視線を移した。 その心中は、足並みを揃えて確実に前に進んでいた。
―――打倒・政府の目的の元に―――
腕時計に一度目を移してから、モララーがメモ書きを見せる。
『一つ考えた事がある。けれど、問題はやはり首輪だ。しかし、これを解決した時の為の下準備はしておきたい。』
それを見て、1さんは右手首をぽいっと外側を投げ出すような動きをしながら首を軽く傾げた。モララーが頷いて第二のメモ書きを渡す。
『材料は、ガソリンや軽油等の燃える物だ。最良の策とは思えないが、現状況ではこれしか方法が見当たらない』
そのメモで兄者はモララーの狙いを察し、それで頷く。
「俺達の精一杯を、見せてやろう」
4人はそれぞれ探す物資を分担し、散って行った。
09/26 PM7:00 現時点で【残り37名】→ 7:38【残り36名】

59 :名無しさん@├\├\廾□`/:2005/08/02(火) 11:31:48 ID:v5MPIn+o
「ん……?」
激しい頭痛に呼び起こされ、フサギコは覚醒した。開けた視界の半分に、コンクリートの地面が広がっている。
それでフサギコは、自分がしたらば(男子9番)に銃で殴られてその場で気絶してしまった事を即座に思い出した。
地面にうつ伏せになっている身を起こしかけると、中腰姿でフサギコの顔を覗きこんでいるリル子(女子19番)の冷たい瞳が飛び込んできた。
リル子の目が驚きに見開かれたのが合図だった。
フサギコは両手に力を込めて飛び起き、リル子は飛び退きながら右手に握った黒い筒―フサギコは銃に見えた―をフサギコの眼前へと向けようとする。
前傾してダイビングしたフサギコの両腕が、リル子の腕が上がるよりも早くその黒い筒を掴んだ。
そのまま蹴りを放ってリル子を引き離そうと右足に力を込めたが、反射的にか、あるいは指が滑ったのか、リル子の手はそれよりも早く黒い筒から放れた。
さすがにこれは予想外で、フサギコはバランスを崩して仰向きかけた。一方のリル子は後方に一回転し、間髪入れずにフサギコに背を向けて全速力で駆け出した。
なにか空になった黒い筒状のもの大量に投げ捨てたが、フサギコは見向きもしなかった。

馬鹿が。死にな。

フサギコは、奪い取ったばかりの銃の引き金に指を掛け…?あれ?引き金が無い?それどころがグリップも無い・・・?
刹那、高く強烈な、そしてくぐもった爆発音がフサギコの耳朶を打った。フラッシュが、瞬時にフサギコの視界一杯に広がる。
続いて首がもげんばかりの圧力を感じ、更に顔の所々に異物が突き刺さる感触を受けた。
「うぅ……なっ……?」
漠然とした疑問を呟くと、口元から赤い血の霧が吹いた。もっとも、暴発した黒い筒の破片に貫かれたフサギコの両目がそれを認識する事はできなかったが。
当然、リル子から奪った黒い筒が、通常の数倍の火薬の詰まった爆竹であること、それを作ったのがリル子であることなどフサギコの理解の及ぶところではなかった。
フサギコの体がしばし虚空を泳ぎ、それから地面へと背中から倒れ込んだ。強く後頭部を打った衝撃から、閉ざされた視界の中で小さな火花が光の筋となって咲いた。
「……馬鹿じゃないの」
唯一無事だったフサギコの聴覚が、リル子の呟きをとらえていた。続いて、遠ざかる足音。
その聴覚もすぐに鈍くなっていき、フサギコの意識は再び無明の闇の底へと沈んでいった。

60 :名無しさん@├\├\廾□`/:2005/08/02(火) 11:41:33 ID:v5MPIn+o
タカラギコ(男子11番)は民家G−7〜8のいずれかに隠れようと移動していた。
先ほどまでH−3に身を留めていたのだが、北の方角から銃声が何度と無く鳴り響き、
次は自分を狙っているのではないかという恐怖心に押しつぶされ、移動を決意したのである。
到着すると同時に何かが破裂したような音が鳴り響く。音のした方へ視線を向けるとタカラギコは言葉を失った。
一人の男子生徒が、タカラギコの正面二十メートル付近の場所で仰向けに倒れていた。
「……な、何、誰ですか?」
数秒の沈黙の後、タカラギコはその生徒のところへと駆け寄っていった。
無残な事に、男子生徒の顔は何かの破片が刺さっていたり皮が剥けていたり歯が抜け落ちていたり血まみれになっていたりで――要するに、原型を留めていなかった。
同じく血まみれの両手にも破片が埋め込まれており、十本の指のうち実に八本がもぎ取られ、グロテスクな断面をのぞかせている。
皮一枚で繋がっている二本の指も、その機能を失っているのは明らかだった。それでもタカラギコは、その生徒がフサギコ(男子18番)である事を即座に了解した。
「うぇあああぁぁ!」
タカラギコは嘔吐感が限界を越えて嘔吐する。泣きながら記憶が飛びそうになるのをなんとか抑えてフサギコを揺する。
「げほっ……ふ、フサギコ! し、しっかりしてくださいよ!」
喉の奥から出した声は、掠れて、振るえていた。それでもその声はフサギコの耳に届いたようで、フサギコの首がゆっくりとタカラギコのほうへと傾いた。
「た……タカラ?」
消え入りそうな声で、フサギコが口を開いた。
既に目は見えないようだったが、その目はタカラギコを捉えようとしているのか、微かに動いていた。
「も、ももも、問題ないですよ! に、に、逃げましょう!」
タカラギコは血を目前にして、なるべく血を見ないようにし、飛んでしまいそうな記憶を必死に留めながら、フサギコに肩を貸して立ち上がらせようとした。
しかしフサギコの体からはすっかり力が抜け落ちており、タカラギコが頑張ろうとも、ただ無駄に力を消費するだけだった。
「……つなよ」
「あっ? い、今、何と?」
耳元でフサギコが何事か囁いた。タカラギコはフサギコを支えたまま、フサギコの口元へと耳を近付けて訊き直した。
「ヘマ、打つなよ……。狂って、ジブン見失った、ら……胸糞悪い、思い、すんぜ……」
声を出すのも相当しんどいのだろう、貸した肩からフサギコの震えがタカラギコの全身へと伝わっていた。
無論、何故こんな無残な姿になってしまったのかを聞きたかった。しかし、フサギコがこの状態では万事後回しだ。
とにかく、安全な場所までフサギコを連れて行かないと危険極まりない。

61 :名無しさん@├\├\廾□`/:2005/08/02(火) 11:45:57 ID:v5MPIn+o
「恐らく、モララー達なら信頼できる……。無闇に勘ぐって、俺みたいに後悔すんじゃ……。それと、死んだら、誰も守れ、ねぇぞ……。
 お前みたいな奴こそ、命、粗末にすんじゃ……ね……」
「わかりました!分かりましたからもう喋らないで!!」
フサギコの目が見えていない事も構わず、タカラギコは血を見ないように目をつぶりながらも何度も頷いてみせた。
そんなフサギコの姿がどこまでも痛々しく、そして最期の時まで自分を気遣ってくれている事に愛おしさも感じた。
暖かい思いと深い悲しみが入り混じり、タカラギコの胸の中を一杯に満たしていた。
「勝手に逝かないでくださいよ、フサギコ! フサギコ!」
まだフサギコは、何か告げようとしていた。
「お、俺、謝んな、きゃ、いけねぇ……お、俺、ありすを………」
「えっ?」
それでタカラギコは、ありす(女子2番)の事を思い出した。フサギコとありすの間に何かあったのだろうか。
まさかありすがフサギコをこんな姿にしたとは思えなかったが、とにかく。タカラギコは、続きを聞くためにフサギコの顔の辺りに耳を傾ける。
しかし、その口から言葉が出てくることは二度と無かった。

『ヘマ、打つなよ……。狂って、ジブン見失った、ら……胸糞悪い、思い、すんぜ……』

そうだった。自分が死ねば、ありすはどうなってしまうのだろう。この場に関しては、まず己の生存を考えるべきだった。
タカラギコは低威勢のまま自らのディパックを掴んで身を翻し、フサギコに背を向けて走り出した。

フサギコ、ごめん! 本当にすまない…

タカラギコは心の中で、何度もフサギコに詫びた。既に命の火は消えていようとも、親友を残して逃げ出した事に。
途中何度も血まみれのフサギコが頭に浮かんでしまい、混乱してしまい、記憶が飛びそうになるが、すぐに振り切った。
恐怖、悔しさ、そして悲しみが、タカラギコの目に涙を浮かべさせた。
それを乱暴に拭ってから唇を強く噛み締めた。この”プログラム”に対する憤りが恐怖心を凌駕した。
「ちくしょう……!」
タカラギコは絶叫と共に先にある民家へと飛び込んでいった。

フサギコ(男子18番)
失血死
09/26 PM8:00【退場者1名・残り35名】

62 :名無しさん@├\├\廾□`/:2005/08/03(水) 17:15:51 ID:mPftz3wz
「ありす、ちょっといいにょら?」
背後で大きめの石に腰掛けていたしたらば(男子9番)の呼び掛けに首を軽く傾げてから笑顔で歩み寄るありす(女子2番)。
「どうしたの?」
「考えたんだけど、夜が明けきる前に他の隠れ場所を探さないにょら?」
それを聞いたありすが、少し驚いた表情になる。
「え? でも、朝の放送まではここでじっとしてるって決めたのに?」
「さっきの銃声で“やる気”のある方々がこちらに向かってる可能性が高いにょら。それにタカラギコ君にも会えるかもしれないにょら。」
「そんな! 私に気を使って誰が潜んでいるかわからないとこへ……」
手を前に出してありすの言葉を遮り、したらばが続ける。
「正直、僕も眠れなそうなんだにょら。それに、タカラギコ君にも会いたいでしょ?」
そう言って、はにかんだ笑みを見せるしたらば。
当然、これはありすを気遣うあまり口から出た方便であったが、ありすはその気持ちに応えないわけにはいかなかった。
「……ん、わかった。それじゃ、早く行こう。日が昇るのは早いから」
言いながらありすが自分の鞄とディパックを抱える。したらばも同様に所持品を抱えて立ち上がった。

63 :名無しさん@├\├\廾□`/:2005/08/03(水) 17:36:02 ID:mPftz3wz
二人は森を抜けながら東を目指す。
「ん?」
「きゃっ!」
突然したらばが足を止める。すぐ後ろを歩いていたありすは、したらばの背中に鼻っ柱からぶつかり短く声を発した。
「ど、どうしたの!?」
「あそこ誰かいる。そこに隠れるにょら!」
ありすの問い掛けに、前を向いたままでH&K MP5A5を構え、叱責するような口調で言い放つしたらば。
ありすはしたらばの背中越しに脇にあった木の陰に隠れ、半分だけ顔を出して覗き見る。こめかみを汗がつたった。
「見たにょら?」
「うん、見えた」
したらばの言葉にありすが返す。一瞬、茂みの中に耳が見えた。耳があるのは…あーもう!居すぎて分からない!
だとしても、今はしたらばと一緒なのだ。充分対抗できる。
「声を掛けてみようよ、相手がやる気だとしても今なら二人だし対応できるでしょ?」
「よし、もし相手がやる気なら即座に森へ逃げるにょら、僕が何とかしてみる」
したらばはちらっとありすのほうを向き、ありすが無言で頷いたのを認めてから、十五メートルほど先の場所に視線を移す。
「誰にょら? 僕達はしたらばとありすだにょら! やる気はないにょら! だから出てきて!」
したらばは“耳”が隠れた茂みのほうに銃を構えたままで呼び掛け、十秒ほど返答を待つ。しかし返事は返ってこなかった。
痺れを切らしたありすが木の陰から姿を現したその時、茂みの隙間から生えてきたかのように腕がこちらに伸びるのが見えた。
「っ!」
続いてそこから腕の先端が小さく燃え上がったかと思うと、したらばが頬を押さえてその場に転倒した。
ありすが倒れたしたらばの顔を見ると、表面が抉られたらしく、血が頬に直線を描いていた。したらばは即座に立ち上がる。
「したらば、大丈夫!?」
「どうってこと無いにょら・・・」
息を荒げながらもしたらばの右肩を揺さぶりながら声を掛けるありす。しかし、すぐに下から聞こえてくる駆け足の音に気付く。
そこからは、ダマレコゾウ(男子2番)がデザートイーグルを片手に土を蹴り散らし、決死の形相で全力で駆け上がってきていた。
したらばがH&K MP5A5を撃つ。直前にダマレコゾウは左に飛んで茂みに姿を消し、そこからまた射撃した。ありすのすぐ脇の土が跳ね上がる。
「あの反動の強いはずのデザートイーグルを自在にあやつるなんて…! くらえ!」
したらばが叫ぶのと同時にH&K MP5A5から大量の弾が噴き出した。地面の土がダマレコゾウの居ると思われる茂みに大量に降りかかる。
あくまでも、したらばは殺生は行いたくないようだ。
「したらばくん、大丈夫?」
「ありす、森に逃げるにょら!」
したらばとありすが二人並んで一目散に上に駆け出す。したらばはH&K MP5A5を向けたままで。
足をもつれさせそうになりながらも地面に手を付きながら必死で走った。

64 :名無しさん@├\├\廾□`/:2005/08/03(水) 17:46:26 ID:mPftz3wz
十メートルほど走った時、背後で銃声が鳴ったかと思うと道を一筋の炎が貫き、ありすの背中付近で血飛沫が爆ぜた。
そして、間髪入れずに、ありすの背中に潜り込んだ弾丸が胸部を内側から突き破り、したらばの目の前の木の幹に深々と食い込んだ。
力なく膝から崩れ落ちるありす。
「っ?・・・??」
開校記念日に登校して教室のドアを開けた瞬間のような空虚な感覚が突然したらばを襲う。地面に足が付いているはずなのに、感じなくなっていた。
目の前の光景が別世界の事のようにも感じられた。とにかくしたらばの脳は、たった今目の前で起こった状況を理解する事を拒否したのだろう。
それによりしたらばは状況把握が行えずに放心状態に陥ってしまっていた。
ぼやけた眼前の光景がぐるりと回転しかけたその時、再び掃射音が響く。したらばが無意識のうちに撃ち返したのだ。
「し・・・した、らば、くん・・・!・・・ぅ゛う!!」
ありすがうつ伏せのまま、放心状態のしたらばに声をかける。同時にありすの口から血があふれ出す。
それでしたらばはようやく我に返り、うつ伏せのありすの肩を揺する。その背中から噴水の如く血を噴出していた。
「ありす、僕に負ぶさるにょら!」
「……て…!」
「えっ?」
ありすは蚊の鳴き声ような声で何か叫んだが、したらばには聞こえなかった。
「私、には構わ、ないで…逃げ、て…!」
したらばは時が止まったように感じた。
えっ?なにいってるの?はやくたってよ。たちあがってよ。いっしょにたからぎこくんをさがすんでしょ?なにたおれてるんだよ。じょうだんはよせよ。
「早く…行って……」

―――行け、たとえ困難に直面しても――戦え、自分が信じる物のために
              行け、たとえ弱気な自分に負けそうになっても――戦え、自分が信じる物のために―――

したらばは森の中をひた走りながら、毎日のように聞いている曲―退廃音楽として禁じられている―のフレーズを思い出していた。
目には、涙を浮かべていた。もうダマレコゾウの姿は見えなくなっていた。

―――俺たちが生きた昨日という瞬間は、決して無駄なんかではない―――

09/26 PM9:00 【残り35名】

65 :名無しさん@├\├\廾□`/:2005/08/04(木) 02:03:42 ID:WkQiQ+wn
ダマレコゾウ(男子12番)は、恐らく彼のクラスの中で、いやもしかすると登校している生徒の中でも一番かもしれないが、とにかく彼はかなりの恐がりだった。
彼は、お化け屋敷に入ったことがないどころか、一人で留守番をすることもできない。
そのことを話すと、いつも彼は周りの人たちにいじめられるのだ。
いつしか、彼はあまり他の人と会話をしなくなっていった。

分校を出るときも、周りにいた同級生にも教室内の兵士にも担当官のギコ教授にも全く一瞥もくれずにデイバックと自分の荷物を持って出て行ったが、本当なら泣き出したいくらい恐怖の元にあったはずだ。
そして、分校の近くにあった、女子十六番ミナーと男子十六番ヒッキーのむごたらしい死体を発見し、彼の「中身」は、全てが無になった。
DesertEagle 50A.E.は、通称ハンドキャノンと呼ばれる通り中学生が使えば間違いなく肩が外れるなどの反動を受ける。しかし、完全に自分を失った今、彼にとってはなんら関係無いことだった。
そして、ついに彼は「的」を見つけた。というか、自分から場所を教えてくれた。

一発撃ったとき、右の腕が何かおかしな振動を生じさせた。問題は、無い。
素早く、相手もマシンガンのような銃器で攻撃してきた。問題は、無い。
どうでもいい。とにかく、今一番大切なのは、ただ、的を破壊する事のみ。
何度も発砲。一発の銃弾が小さい的(女子二番ありすだが、彼は知るよしもない)の背中を貫き、胸を破壊する。
ただただ、機械的に。無感情で。スベテヲ、コワス。
まず相手の四肢を機能停止させ、正面から鳩尾に何発も撃ち込む。そして、最後に相手の頭部を、「爆破」させるのだ。
再び、彼は引き金を引いた。しかし、弾は出てこない。
装弾数が0。問題は、無い。弾丸を七発、装填。的を探す。目視では、発見不可能。
逃げられた。問題は、無い。

女子の悲鳴を確認。
すばやく、その女子を殺害するべく、彼は異常な腕を気にせず走り出した。



例えば、人の気持ちを察知することが得意な(女子12番)でぃなどが近くに居たら、この闇の中でもすぐ解っただろう。
彼が、狂っていることに。

66 :名無しさん@├\├\廾□`/:2005/08/04(木) 02:05:02 ID:WkQiQ+wn
はぁっ、はぁっ、はぁっ、クソッ!
(女子九番)しぃが息を切らせ、走りながら悪態をついた。
先ほど、ウララーを殺害したあとに公園を徘徊して発見した人影、くそやくたいもない(男子九番)したらば達(彼以外にももう一人居たはずだ。誰だか解らなかったが)を殺害しようとしたとき、数カ所に仕掛けられていたトラップが彼女の腹と顔を切り裂いたのだ。
腹に刺されたさび付いているメスは、防弾チョッキの範囲内だから致命傷になるまで深々と突き刺さることはなかった。だがそれでも転んだ拍子で3cmは腹に突き刺さったはずだ。
しかし、問題なのは、腹の傷よりも顔だった。
あのとき、トラップか本人が投げたのかは知らないが、恐ろしく危ない一刀だった。
円い刃物・・・チャクラムは、しぃの顔、即ち右頬ー鼻ー左頬を、5cmにわたり横に切り裂いた。
左頬は鼻の骨があったためにあまり裂かれていないが、一番損傷が激しいのは右頬だ。ざっくりと切り裂かれたおかげで皮膚がえぐれているのが感じ取れた。
しかも、止血法が解らない。包帯は持っていないので、やはり多少危険を冒してもC-8の病院(おそらく、いや間違いなく病院「跡」だろうけど。)へ行ったほうがいいのだろうか。
走るたびに、血液がそこからどばどばと流れ口に入り、しぃは思わず咽せた。咽せるたびに鼻の骨がズキンと痛む。
やはりーーーいや、でもーーー駄目だ、やったほうがーーーやるしかない。
しぃは、震える手で(男子六番)ウララーを殺して奪った水のボトルをなんとか震える手で開け、大きく息を吸い込み、ボトルの水をざばっと傷口にかけた。
「ああああああっ、痛いぃぃ!」
水が血液を流し、ぐいぐいと割れた皮膚に吸い込まれていく。吐きそうになるほど、痛い。
「ひぎいいいぃぃぃ!」
目から涙を流しても、水をかけ続けた。永遠とも思える、苦痛。
そして、ボトルの水が全て無くなったとき、彼女はボトルから手を放しその場にぐったりと膝をついた。
かなり痛かったーーーだけどおかげで、まだこちらの方が耐えられるーーー。
しぃは、目から流れ落ちる涙を手で払い、戦利品のS&Wに無くなった弾を装填した。
一発一発に、したらばへの恨みをこめた。パチッ、あいつはーパチッ、絶対ー、パチッ、私がーパチッ、殺す!ジャコン。
拳銃を再び構え、(といっても、彼女は生まれつき鳥目で、自分の血の臭いしかしない今耳だけが頼りなのだが)彼女は手投げナイフを入れたウエストポーチに手を入れた。・・チャックが、開いている。
そんな、私がこんなミスをーーー手投げナイフは、既に5本しか残っていないようだった。途中で、落とした!
ムカつく!ムカつくムカつく!しぃは、その辺に落ちていた石を思いっきり蹴飛ばした。
とにかく、ここから移動しよう。
デイバックから懐中電灯を取り出し、しぃはゆっくりと歩き出した。


67 :名無しさん@├\├\廾□`/:2005/08/04(木) 02:07:28 ID:WkQiQ+wn
途端、目の前で眩い火花が閃き、腹に三発の鉛玉が食い込んだ。防弾チョッキがあるおかげで致命傷になるどころか鉛玉は体内に侵入してすらいないが、衝撃が痛い。しぃはうっ、と呻きその場に膝をついた。
ガサガサと、撃ってきた犯人が近づいてくる。しぃは、左手に持った懐中電灯をその犯人へ向けた。
ものすごい形相が、あった。きっと、どんなに親しい友人でも(そもそも彼には居ないが)彼、ダマレコゾウだと判断するのに数秒はかかるだろう。
すっと、レコは右腕を伸ばし、銃をしぃの左腕に向けた。やばい、撃たれる!
こちらも、先ほど装填した銃を、相手が引き金を引く前に発砲する。くぐもった音が鳴り響き、銃弾はレコの腹部に直撃した。
しかし、その衝撃を気にもとめず、レコは発砲した。多少、衝撃で標準がずれ、左腕の肉をえぐっただけになったが。
なんでーーーなんで腹に撃たれても、その顔はそのままなのーーー
しぃの体を、凄まじい恐怖心が襲った。幼稚園のころに乗ったジェットコースターとは、全く比べものにならない、まさしくそれは死の恐怖。
私は、こんなところで……しぃは、尻餅を付き、抵抗するのを止め、ゆっくりと目を閉じた。
ゴシャッ、と音がした。ああ、私、殺されたんだな。




生きている。

確かに、自分はまだ生きていた。しぃは、再び目を開いた。

目の前には、確かにダマレコゾウが居る。しかし、何か様子が変だ。
見てみると、目はどこか遠くの方を見つめている。右手に構えていた、デザートイーグルを持つ指から血が一滴、滴った。
「大丈夫です?・・って酷いケガや!止血しないと、止血!」
クラスの中で、唯一人京都弁を話す生徒ーーー(女子13番)のーが、何かグロテスクなものが大量に先端についたバールを持ち、しかも自分の顔に血液が大量にかかっているのにも動じず、言った。


ダマレコゾウがその場に前のめりに倒れた。
しぃは、彼女が自分の顔から流れ続ける血を彼女のタオルで拭かれたあと包帯を傷口に巻き付けてくれたことにあまり気にかけず、(私は最初病院に行ったんやけど、包帯しか残ってなかったん。)放心状態で彼の頭を見て、改めてしぃは恐怖を感じた。

後頭部の三割ほどが、彼女のバールによって、ーーーおそらくたったの一撃でーーー「失われて」いたのだから。

【残り34名】

男子12番ーダマレコゾウ
女子9番ーしぃの殺害を謀ったが、女子12番ーのーに撲殺される

68 :名無しさん@├\├\廾□`/:2005/08/04(木) 08:36:06 ID:XC+PupPg
腹部の鈍痛と共に、しぃ(女子9番)は目覚めた。誰が掛けてくれたのか、毛布を剥いでしぃは上体を起こした。
少しの動作でも顔と腹部がかなり痛む。周囲を見回すと、神棚のようなものが伺われた。
もしやと思い入り口のほうを見ると、案の定赤く燃え盛るマンションが伺えた。ここが神社(F−6)だと理解した。
不意に立ち眩みを覚え、額に手を添えながら思い返す。しぃにとっての最後の記憶は、ダマレコゾウ(男子12番)の爆ぜた頭部を見たあの瞬間だった。
墓地の教会寄りの場所(F−4)でダマレコゾウの追撃を受けたしぃは、のー(女子12番)の乱入によって命を救われた。
彫像のある壁の外寄り、戸が開く音でしぃは顔をそちらへと向ける。のーが、何か茶碗のような物を手に姿を現した。
「あ! 目、覚めた?」
のーはしぃの姿を確認すると喜びに目を見開き、早足でこちらへと近付いてきた。
反射的に自らの腰を探ったが、所持品のS&W M945 .45ACPはどこにも携えられていない。やるならば素手だ。
しかしとりあえずは話を交わしておくべきだと思った。研ぎ澄まされた殺意は起き抜けで鈍っているのかもしれない。
「……のーちゃんがここまで連れてきてくれたの?」
口に出した声が体内で異様に反響し、それで喉がいがらっぽくなっている事に気付いた。軽く咳払いしながらもう一度周囲を見渡す。
自分が気絶したであろう場所から教会はそんな遠くはなかったはずだ。
「ここ、倒れてた場所からすぐ近くの神社ですわ。さっきまで誰かおったみたいやね」
しぃの考えを復唱する感じでのーが言い、手に持った茶碗をしぃに差し出す。湯気を立てているその湿ったご飯は、いわゆるお粥だった。
「ちょっと遅い夜食のつもりねんけど、それはしぃはんが食べてや。うちはまた作るし」
のーはそう言ったが、しぃは受け取った茶碗を傍らに置き、言った。
「先に、話いい?」
「あっ、せやね! しぃはんも気絶してる間の事は気にりますやろ」
そののーのたどたどしい物言いにしぃは少々の疑問を覚えたが、すぐにその意味を理解した。
しぃは自分の足元にデザートイーグルを発見しすぐさま取って構えた。銃声が御堂内に木霊する。
弾丸がのーの胸部を貫く。
「どうしてなん…?」
押し出された声はとてもお粥を持ってきた時の彼女とは似ても似つかぬ、燃え尽きる寸前の炎の燻りを思わせるか細い声だった。
「詫びないわ。この選択は覚悟の上のこと」

やりきれない痛みと悲しみ、そして苦しみを内で殺し、しぃは教会から足早に去っていった。
神が実在するならば、一番すがりたかったのはしぃだったのかもしれない。
決意の鬼神と化した彼女に、それはもうどうでもいい事だったのだけれども。

のー(女子12番)
失血死
09/26 PM11:00 【退場者1名・残り33人】

69 :名無しさん@├\├\廾□`/:2005/08/04(木) 08:42:52 ID:XC+PupPg
準備を終えた花瓶(女子6番)はガナー(女子5番)、モナエ(女子17番)らと共に潜伏場所から北のビル群を目指していた。
病院入り口近辺の腰程まである雑草を手で掻き分け、地図で言う所の病院寄りのC-6を歩いている。今、森に入ろうとしている。
「……ッ!」
尖った痛みが指先に走り、裏返した右手を見る。手首よりちょっと先端に近い場所、三センチ程度の切り傷が生まれていた。
「ガナー、大丈夫?」
「いや、余裕で掠り傷だし。気にしないでオッケー」
振り返り、心配そうな表情の花瓶へと言う。そのまま花瓶の肩越しで立ち止まっているモナエへと顔を向けた。
命のかかった状況のためか、すっかり無口となったモナエが鋭い眼つきでガナーを睨み付けていた。後ろめたいような感情がガナーの中に生まれる。
「わかってるよ。しっかりやるからさ!」
その言葉にもモナエの険しい表情は変わっていない。その表情がガナーを責める類のものではなく気遣いからくる面持ちと理解しているからこそ、心苦しかった。
モナエから視線を引き剥がしてもう一度右手の平を見詰めると、赤い液体が河川のように枝分かれし始めている。
その右手に握っているH&K P9S .45ACP(花瓶の支給武器)が、ガナーを一層心苦しくさせた。

70 :名無しさん@├\├\廾□`/:2005/08/04(木) 08:53:57 ID:XC+PupPg
花瓶は自らの胸に秘めた幼馴染への思いを告げた。
ガナーも自分の恋人――ネーノ(男子14番)――のことを話すつもりだったが、中々、その事を言い出せずにいた。
潜伏場所を発つ際、ガナーは自ら先頭に立つと言い、ガナーは花瓶に言ってみせた。
「花瓶、モナエ。あたしがあんた達を絶対守る。そして、その“幼馴染”と合流してみせる!だから諦めないで気を強く持ってよ!」
その言葉に花瓶は笑顔で一つ頷いたが、モナエが水を差すように溜息を一つ吐いたのをガナーは聞き逃さなかった。
「なにー? 文句あんの?」
「ガナー」
モナエは俯いていた首を上げ、花瓶の支給品の銃をガナーに投げてよこした。
「それで花瓶を守れるか?」
「……んだよ、モナエ?」
「殺し合いだよ。路傍の喧嘩とは違うの。撃てる? 場合によっては、ネーノを!」
それでモナエが言いたい事を大方理解した。要はガナーの”覚悟”というのに不信を覚えているのだろう。
同時に、ネーノというガナーの恋人がやる気になっていると見なされているような発言に腸が煮えくり返った。
瞬間沸騰電子ジャー、今なら五千円と超お買い得価格ですよ?
「あいつはやる気にならないよ!」
「その言葉がまず甘いんだよ!」
急に突き放すような喧嘩腰になったモナエに疑問を覚えながら、ガナーは駆け出してモナエの襟を掴んでいた。
「モナエぇ、あんた、随分と香ばしいこといってくれんじゃねぇか!テメェコラァ!!」
目一杯凄みを利かせて睨み付けた。見開いた目が乾燥してヒリヒリする。モナエはの腕っ節は学校でも有名だが、ガナーも素手の喧嘩なら負けるつもりはなかった。
「二人とも、止めてよ!」
涙目で駆け寄ってきた花瓶が二人の袖を掴み、悲痛な叫びを上げた。しかし完全に頭に血が上ったガナーは更に睨みを利かせ続ける。
それでもモナエは怯まず、鋭い目をガナーに向けて、言った。
「言葉は軽いの。そして現実は、重く残酷なの。後悔したと同時に、全ては終わんだよ!」
「何が言いてぇんだよ……?」
「言葉で理解してもらえる事じゃない。とにかく、花瓶や…ネーノを守るなら躊躇するんじゃないよ!」
謎かけにも似た物言いに、しばし考えを巡らせた。その為か、湧き上がった怒りが少し引いた。
そこへ畳み掛けるように、モナエが言った。
「これは一発勝負だよ。迷う度に三人が二人、二人が一人になる。そして、失われた者は戻らない。死んだ皆の教訓を無駄にするな。自分の運命に反映させるんだよ」
モナエの口ぶりにしてはまとまりがないように思えた――モナエは緊張しているんだ――が、その言葉は充分に理解できた。
同時に、モナエの発言がネーノを貶める目的ではない事や、ガナー達に心を砕いてくれている事を察した。
「ネーノの事は心ない発言だった……ゴメンネ!だけどこれだけは覚えておいて欲しいの。
 生き残った奴は殺人の罪悪感に悩まされ、相手の死を悲しむ奴の存在に永く心を痛める。
 生きるも死ぬも地獄、究極の選択。実質、殺し合いに勝者はないとあたしは思っている。」
「モナエ……」
ガナーと花瓶の声が被る。モナエの表情がやや和らいだように見えた。
「大切な者を守るのは大切だし尊い事。それを最後まで成し遂げる為に、深い覚悟を刻んで欲しいの。」
その言葉でガナーは両手をモナエの服から離し、無言で一つ頷いた。何に対して頷いたのか、自分でもよくわからなかった。
結果的に言うならば、喧嘩の終わりを示す頷きだったと言える。モナエの言葉は、いつもの会話とは違い、恐ろしく重みを感じさせた。
ガナーの手に滲んだ汗が、銃のグリップをじっとりと濡らした。モナエは”死”に対して深くクレバーに考えているなと思った。

71 :名無しさん@├\├\廾□`/:2005/08/04(木) 09:04:19 ID:XC+PupPg
そして今、なおもモナエは不安に満ちた目でガナーを見据えている。その執拗なまでの態度に、今は腹が立つよりもむしろ疑問を覚えていた。
何故、そこまでにガナーの覚悟が甘いと言い切れるのか。ぼんやりと心の片隅に浮かんでいたモヤが、ゆっくりと形を成してきた。 
そうだ。モナエは多分何かと比較し、その上でガナーの覚悟に対して憤慨している。対象の存在が、ガナーの覚悟の甘さを際立たせているのかもしれない。
それは一体何なのか。しばらく悩んだがわからなかった。
「…そこに誰かいるよ」
モナエがいつしか険しい顔つきになり、ガナーの背後へと視線を向けていた。使い慣れたメリケンサックを握る手に力をこめている。
ガナーは振り返り、花瓶を隠すように立ちながらH&K P9S .45ACPを前方へと構えた。
前方十メートル付近、密集した腰丈の草に隠し切れない大柄の体が一瞬横切った。
「誰!?」
ガナーの叫びに同調したように、茂みの中から二メートル弱ほどの角材のを手にしたシラネーヨ(男子10番)が向かってきた。
「シラネーヨ! あたしらは……」
「ガナー!」
花瓶より後ろでモナエの怒鳴り声が響き、それでガナーは動揺する心を抑え込んだ。覚悟。その言葉が脳内の空白部分にフェードインしてくる。
銃をシラネーヨに向けてグリップに力を込める。このまま引き金を引けば、シラネーヨの頭部は弾け飛んで全ては終わるはずだ。
しかし、いざとなると様々な迷いが飛び交った。時間にするとほんの数瞬。その数瞬は、シラネーヨに角材を振り抜かせるだけの時間があった。
脇腹に強い打撃力を感じ、両足が地面から離れた。風切り音を耳にしながら、視界が急速に振れる。すぐさま右肩から地面に転がり込んだ。
「キャァ!」
鈍い音と共に花瓶の叫び声が上がった。急いで顔を上げるとシラネーヨの前で花瓶がガナーとは反対の方向に倒れこもうとしており、
シラネーヨがバッティングの要領で花瓶に角材を振るったのだとわかった。
「花瓶!」
叫んで立ち上がりかけ、手から銃がなくなっているのに気付く。周囲を見回すも拳銃はその姿を見せない。というか暗くて見えない!
「撃って!」
モナエが、シラネーヨの振るう角材を両手の平で受けながら叫ぶ。ガナーは銃を探す暇も惜しくシラネーヨに殴りかかる為に立ち上がりかけ、そこで銃声を聞いた。
「ぐあぁぁあ!!いてーヨ!いてーヨ!」
シラネーヨが絶叫を上げ、その太ももから血飛沫が散った。それからシラネーヨは数度片足で跳ねてから踵を返して逃げだした。
ガナーは後を追うよりも、細い煙を上げるH&K P9S .45ACPの銃口をじっと眺めていた。その銃を両手で構えているのは――花瓶だった。
「ガナー……あたし、まだ死ねないから、けれど、何てこと……」
よほど力一杯握っているのか、グリップに添えた右手の指が真っ白くなっているのが目に入った。
「花瓶……」
呆然としたまましばらくじっと見詰め合う。不意に、モナエが肩に手を添えてきた。
「ガナー、次、次が許されたからには今度守ればいいよ!こ、これからしっかりと守ればいいの!…(ハァ…」
ようやくモナエの最後のため息の意味を理解した。そしてモナエの真意を察した今、深い屈辱に心底打ちのめされた。
これを感じさせたくなかったからモナエははっきりと言葉にしなかったのだ。”ガナーの覚悟は、花瓶のそれに劣っている”と。
喧嘩もしたことが無い花瓶に、男相手にガチンコかましたことすらある自分の覚悟が劣っていた。
やはり、モナエの”花瓶と比べてガナーの覚悟が甘い”という懸念は的を得ていると認めざるを得なかった。
「口だけ女かよ、あたしは! 守れねぇのかよ? 底が見えちまったよ、ちっくしょー!!」
やり場のない悔しさは、拳に乗せられて地中深くへと叩き込まれた。脇では花瓶がすすり泣いていた。
腕っ節も心も今よりずっと――強くなりたい。 刻み直した覚悟の程と比しく、切実にそう思った。
09/26 PM11:30 【残り33人】

72 :名無しさん@├\├\廾□`/:2005/08/04(木) 23:20:09 ID:XC+PupPg
暗い森の中でありす(女子2番)は、うつ伏せに倒れながら天からの迎えが来るのを待っていた。
先ほどまで流れ続けていた血は止まり、今や広範囲に血だまりを広げていた。
息を漏らす度に走る痛みも、既に無くなっていた。血液不足の為か、凍て付くような寒さを感じていた。
ありすに致命傷を与えたダマレコゾウ(男子12番)は、一度ありすを見下ろした後、その場から去っていった。
即死には至らなかったものの、この傷こそが結果的にありすの命の灯火を消そうとしているのだが。
あれ以降人が訪れる事はなく、ありすは朦朧としてくる意識の波にただ流されていた。
目を瞑ると、開いている時よりも幾分深い闇がありすを包み、そのまま永遠の眠りへと陥りそうだった。
しかし、ありすはその心地良い誘いを拒否して再び瞼を開いた。森の外から聞こえてくる自分を貫いた銃声。
その銃声はありすにはもう関係が無いものであったが。

不意にどこか遠くでありすを呼ぶ声が聞こえた気がした。男性の声だ。
『いつでも再戦は受けますよ』
タカラギコ(男子11番)が、ゲームセンターでの勝負でありすを負かした時に度々口にする台詞だった。
細い指を立て、ありすを挑発するように口元を吊り上げるタカラギコの姿が思い出された。
再戦、次。タカラギコはいつもネキストを求めていた。自分が勝ってもそれを良しとせず、次なる戦いを見据えて。
それは自らの向上にも繋がる事だったし、あるいは他に何らかの思いがあったのかもしれない。今更ながら。
夏休み、ありすは陸上部のマネージャーとして、部活動に精を出すタカラギコを応援していた時の一幕。
”世の中にこれでいいという事はないんです”。陸上部の後輩達に、タカラギコはそう言っていた。
タカラギコやフサギコ(男子18番)達も、この状況下で目一杯できる限りの事を行っているだろうか?
そんな事を思い返しながら、ありすは懸命に重い瞼を必死に持ち上げた。暗がりの中で、何か見慣れないものが視界一杯に映っていた。
頬を包む優しい、暖かい感触、続いて、悲壮感のこもった叫び。
「ありす、しっかりしろ!」
ふわっとした白を確認し、それで自分が不良グループリーダーのギコ(男子6番)に支えられているのだと知った。
同時に、温かいギコの温もりに対して自分が随分と体温を失っている事にも気付いた。
「ひゃひゃ〜! すっげぇ量の血だぜぇ〜!」
こちらもピンと来る声だった。ギコの背後へと目を向ける。おぼろげながら視界の中、甲高い特徴的な笑い声でつー(女子11番)だと確認できた。
何故ここにこの二人が・・・?

「アヒゃぁ〜!!あっちでなんか祭りがあるみたいだぜぇ〜!!」
「おい!つー!やめろ!むやみに動くな!おい!!」
つーの独断で二人は銃声のあったこの森へ来ることとなっていたのだが。

73 :名無しさん@├\├\廾□`/:2005/08/04(木) 23:23:19 ID:XC+PupPg
「……ぁ…ぅ…」
「喋るな!」
その時、頬で温かい雫が跳ねた。あの校内一の不良・ギコが泣いているのだ。
ありすは『ありがとう』と言いたかったのが、喋ろうとしても声が全くでないことに気づいた。
ついには体中からすべての力が抜け、視界が永遠にブラックアウトした。
聴覚だけはまだ生きているのか、ざわざわと風のざわめきに似た音が聞こえている。
二人はどんな顔で自分を見ているだろう。どう思っただろう。わからない。

―――――タカラ、ゴメンね。あたし、終わっちゃった…でも、悲しくなんか無いよ。
          したらばくんは私を必死に護ってくれたし、死ぬときも…ギコ君達が私を看取ってくれたんだもん

その思いを最後に、ありすは考えるのを止めた。
いつ脳が活動を停止したのかはわからない。ただ、ギコがありすの死に気付いたのは、それから僅か二分後の事だった。
ギコが何度も地面に拳を叩きつけていたのだが、ありすにはもう伝わることは無かった。

ありす(女子2番)
失血死
【1名退場・残り32人】

74 :名無しさん@├\├\廾□`/:2005/08/05(金) 09:44:22 ID:ZTYWWl51
暗闇の中、一人の女子生徒が千鳥足で並木道(H−4)を歩いている。
道の脇に腰を下ろし、カウガール(女子4番)は据わった目を並木道の先へと向け続ける。
脇にディパックを下ろし、右手で乱暴にジッパーを開ける。鞄からは、大胆にも瓶の先端が顔を覗かせていた。
”テキーラ”、それは彼女が飲み慣れた酒だった。カウガールの親は人里離れた土地で農場を経営している。
カウガールは、幼い頃に牛を一頭、与えられ、小学時代から酔っ払っては相棒の牛に乗って暴れまわっていた。
彼女の将来の夢は海外へ渡りプロのロデオ選手になることであった。
そんな中、彼女も他の生徒同様に無慈悲なプログラムに夢を妨げられる事となってしまったのだ。
「あぁ〜やだよ〜!!」
カウガールはテキーラの瓶を豪快にラッパ飲みしてみせる。体の奥が熱を持ち、強張った筋肉の感覚がぼやけた感じになった。
このテキーラは民家から調達してきたもので、ぬるいのが気になりはしたが味のほうは暗所に保管されていた事もあってまんざらでもなかった。
「なんであたしがこんなあwqせdrftgyふじこlp;@:」
舌が回らなくなり始めた事も構わず、何度も酒瓶を呷る。口の端から、テキーラが零れてふくらはぎ付近に落ちた。
カウガールは酒に強く、本来テキーラ一瓶程度で泥酔するような内臓機能ではなかったのだが、
プログラムという状況下で不安定になった精神状態からだろうか、今は酷く酔っていた。
それでも生き残ってみせるという意思は失われてはいなかった。握った瓶が、夢の存在を脳裏に繋ぎ止めているのかもしれない。
カウガールが目論んでいる生還へのステップ、その第一歩は優れた武器を確保する事にあった。
ディパックの底に収まり、先ほどまでテキーラの瓶の尻に潰されていたその支給品、彫刻刀セットは決して悪いものではなかったが、
カウガールとしては相手を狙撃できるような銃器が欲しかった。
初の放送で連ねられた死者の報告に怯えながら、銃器が残らず強い連中に渡る前に奪わなければいけないと考えた。
隠れていた民家から出てきたカウガールが一人の女子生徒を発見したのは、僅か数分前の出来事だった。
普段と変わらぬ飄々とした佇まい、素っ気無い表情。気だるげに並木道を先行しているその女子生徒は、じぃ(女子9番)だった。
じぃの様子はプログラムという状況下にも全く動じていないように見え、その迷いがなさそうな姿で、カウガールは彼女が殺し合いに乗ったと判断した。
じぃの右手に握られている長い銃、レミントン M700を見れば、それは無理もない考えだったかもしれない。
あんな当たりの武器を支給されれば、カウガールも民家に隠れたりなどせずに獲物を探して会場を駆け回っているかもしれない。そう思った。
獲物といってもクラスメイト、ひいては友人達であるのだが、まず自分の命あっての人生だとカウガールは放送直後にどうにか割り切った。
余計な事を考えれば死に直結する。皆も乗ったに違いない。だから戦うしかない。頭にはそれだけ叩き込んだ。
いや、他の余計な思念を叩き込んでしまっては戦えるはずが無かった。慣れぬ泥酔こそがその”割り切り”を可能にさせたのだが、カウガールは知る由もない。
酔いが覚めた時、カウガールはそれまでの自分の考えに対してどういった感情を抱くだろう。

「あー、ラッ○ーストライク吸いたーい!(一応、銘柄は伏せます」
幾分間抜けたじぃの声で、カウガールは知らぬ間に混濁しかけていた意識を引き戻す。しばらく立ち止まっていたじぃが、歩き出すところだった。
強烈にふらつきだした腰に力を込め、前へと歩を進める。並木に隠れながら、道路の真ん中を大胆に歩いているじぃの背中を追い続けた。
じぃは、持て余している左手を絶えず握ったり開いたりしながらずっとタバコの銘柄を繰り返していた。
ちなみに学校での昼食後はいつもそそくさと教室を出て行き、つー(女子11番)やガナー(女子5番)等の女子愛煙家(!)と共に屋上で一服しているようだが。
じぃが再び足を止める。左手を顔の付近に当てている仕草から、カウガールにはじぃが考え事をしているように見えた。

75 :名無しさん@├\├\廾□`/:2005/08/05(金) 09:47:43 ID:ZTYWWl51
呑気に考え事しててよ〜。隙を見て必ずその武器を奪っちゃうんだからね。それまでは大事に持ってて……

「なーんか」
間延びした声に続き、じぃがゆっくりと後ろ――カウガールのほう――へと振り向いた。
その動作があまりにも自然だった為にカウガールは並木に全身を隠すのを忘れ、思わず目を合わせてしまった。
「誰か、いると思ったんだよね。やる気?」
じぃが右手のレミントン M700を一度頭上に掲げてから、両手で握り、銃口をゆっくりとカウガールのほうへ下ろした。
酒瓶や彫刻刀を手に立ち向かったところで体のどこか――恐らく一撃でしとめるための胸部か頭部――に巨大な風穴を開けられるのは自明の理だった。
カウガールは息を呑んだまま、動揺した心を抑えつける。凝視しているじぃの瞳は依然恐怖の色を見せず、ごく普通にカウガールを捉えている。
「こそこそ後をつけるなんて、やる気って証拠だよね。カウガールがやる気なんて、意外かも。」
返答が喉から出てこなかった。ただ、敵と見なした相手が眼前にいるというのにどうしてじぃはあそこまで冷静、否、マイペースでいられるのだろうと不気味に思った。
そしてこの状況下、不気味と思う気持ちは危機感へと変化した。同時に酒による酔いは一気に醒め、自分の失態が招いたとんでもない事態をようやく理解するに至った。
弁解の言葉も出ない。最初に襲おうとしていた事を考えれば、当然の事だったが。
「黙ってちゃ、わからない」
次の瞬間、重厚な銃声が並木道を駆け抜け、同時にカウガールの足元に広がるアスファルトの破片が高く飛び散った。

76 :名無しさん@├\├\廾□`/:2005/08/05(金) 10:08:21 ID:ZTYWWl51
オヤジの再婚でできたあたしん家は、一人増えて四人構成。
あたしとオヤジは同じ血が流れている。アニキと”あの女”も、同じ血が流れている。
でも、あたしとアニキは、血の色が少ーしだけ、違うんだぁ。
あたしやオヤジの血は多分、アニキ達のより少ーしだけ赤黒いんじゃないかなって、こないだ――夕暮れの公園で、思った。
ブルーな気分で飛び降りた後のブランコは、錆びた鎖同士を擦らせてキィキィ耳障りな音を出してる。
家に帰ったら、もっと耳障りな雑音が待ってる。あぁ、頭痛がする。鬱だ、鬱。けれど、帰る。それでもそこはあたしの家だから。

憑り付かれた様に女遊びに走り続ける父親に、じぃの実母は愛想を付かしてある日突然蒸発した。
これだけだと実母が被害者に聞こえる。けれど、真の被害者は実母に手を引かれず父親の元に置き去りにされたじぃではなかったろうか。
父親は仕事だけはきちんとやってたので金銭的には不自由しなかった。そして数ヵ月後、ホームヘルパーのような感覚で第二の妻は娶(めと)られた。
どんなに抱かれても、最後に選ばれなければ意味がない、そんな強烈極まりない信念を持った”あの女”は、数いる次期・妻候補の中から、妻の座を射止めた。
同時に、じぃには継母の息子、すなわち兄ができた。兄はじぃと親しく接してくれたし、じぃもその兄を慕った。
しかし、両親内で半ば必然的に生まれた愛憎は、軌道に乗りかけた家庭を跡形もなく崩壊させた。それは、たった一晩の事だった。
絶叫と騒がしい物音で、当時小学生だったじぃは目を覚まして掛け布団を押し退けた。聴覚を震わすそれらの要素は、階下からのものだった。
階段を下り、台所へと足を踏み入れたじぃが目にしたのはあまりに刺激の強い凄惨な光景だった。
蒼白色に顔を染め上げて打ち震える継母、開かれた冷蔵庫の前にできている血溜まりに沈んでいる兄。
その脇では、背中からから包丁を生やしてうつ伏せで事切れている父親の姿があった。サイレン、赤いパトライト、台所ではフラッシュが光の花を咲かす。
白いチョークで描かれた人型、台所入口に張られたロープ。見慣れた台所が見知らぬ人間に埋め尽くされる様を、じぃはじっと見詰め続けていた。
騒ぎの後、家に残ったのはじぃと継母。この世に残ったのも、じぃと母親だった。詳しい事は聞かなかった。
ただ、今では父親と継母の罵り合いを兄が止めようとした結果、ああいう事になったという事だけは知っている。
あの日、じぃは実父と兄、そして、ショックから心の中のネジを数本失った。もう、多分どこをさがしても見付からない。
それからの家は、冷え切ったものだった。
母親は自分を殺そうとした男の娘とは関わろうとしなかったし、じぃはじぃで前々から気が合わなかった継母と今まで以上に距離を置くようになった。
そして、学校でもしばらくその事件は話題となり、色々と詮索されるのを嫌ったじぃは友人達との関係も断ち切って孤独になった。
いつしかじぃは表情が乏しい人間へと変わっていた。内面の部分はほぼ以前のように回復していたにも関わらず。
ある時は小学生時代の友人達と仲を戻そうと試みたが、当時じぃに冷たく突っ撥ねられた元・友人達がじぃとの友情を甦らせる事はなかった。
こうして、じぃは中学校でも虚無的な人間に見られ、幾分浮いた存在となった。それが気に障って喧嘩を売る連中もいた。
が、これは生来から持っている気の強さでいなしたり、時には返り討ちにもした。
その手段が階段からの蹴り落としだったり、鉄パイプや刃物を用いたりと度が過ぎたものであった。
その上、じぃの無機質な表情も相まってそれ以上手を出される事はほとんどなかった。
じぃからすれば仲間のいない自分が不良グループに対抗する為の決死の歯向かい方だった。
だが、それは同級生達に”じぃは人を刺したり殴り倒したり怪我を負わせたりするのに一変の躊躇も心の痛みもない”と受け取られた。
こうして、じぃと同級生との距離は更に開いていった。じぃに話し掛けてくる生徒の大半は、せいぜい彼女の美貌を上手く利用しようとする生徒ばかり。
例えば、携帯ネット内でセッティングされた合同コンパに誘ってくるフサしぃ(女子15番)――フサしぃもそういう時以外はじぃに近付こうともしないが――や、
そっち系のバイトの話を時折持ちかけてくるモナカ(女子18番)。
しぃ(女子8番)やのー(女子13番)、不良グループのつーは気軽に話し掛けてくれるが、いずれも”親友”と言えるほどの関係ではない。
学校を離れれば、今もじぃは一人ぼっちだった。

77 :名無しさん@├\├\廾□`/:2005/08/05(金) 10:14:42 ID:ZTYWWl51
教室内に親しい友人がいない事や表情の乏しさ。これらの要素によって、クラスメイトの大半がじぃが殺し合いに乗ったと予想している。
じぃは、そう思っていた。目の前にいるカウガールも、要するにじぃが”やる気”だと思っている。じぃは確信した。
やらなきゃ、やられる。細腕に力を込めてレミントン M700の引き金を引いた。
重厚な音と共に銃口が火を噴き、銃弾が並木道脇のアスファルトを削る。
銃の反動は相当なものと聞いていたが、いざ撃ってみるとそれほどでもなかった。もともと射撃には慣れていたのだが(何故か。
カウガールが並木の裏へと身を隠した。じぃはしばらくその木を見詰め続け、ゆっくりと銃口を下ろす。
「もう、大丈夫かな」
飛び道具のようなものは見えなかったので、このまま消えてくれれば深追いする必要はないだろうと思った。
左手を放し、付着した汗を上着で拭う。それから再度顔を上げたが、カウガールは木の陰に隠れたまま一向に走り去る様子がない。

あー、もう。そこにいられちゃ落ち着かないじゃない。

じぃはギリッと歯軋りをしながら銃口を持ち上げ、再度レミントンの引き金を引いた。
今度の銃弾は木の根っ子付近に着弾して、驚いたカウガールが一瞬体をのぞかせたがすぐに引っ込む。
しばらく木と睨めっこを続けた後、じぃはいよいよ口元を歪めて――と言っても微かにだが――苛立つ。
「どっか行ってってのがわかんないわけー?」
棒読みにしたそれは、じぃが本気で怒った時の口調だった。再度、顔を出したカウガールに向けて銃口を向ける。
じぃ本人は怒りで我を忘れかけていたが、それでもカウガールにはじぃの表情がなおも無機質に見えていただろう。
実際、じぃの顔の筋肉はほとんど変化していなかった。顔を引っ込めたカウガールと入れ違いに、銃弾がその場所を通過する。
それで最悪の事態を考え、ようやくじぃは引き金から指を放した。
「っつ!」
瞬間、カウガールが並木の間から飛び出し、右手に並ぶ並木の間へと駆けていった。
その姿が消えるのを確認してからじぃは一息吐き、再び歩き出しかけ――再度背後を振り返った。
うっとおしい事に、カウガールがなおも木の陰からじぃのほうを見ていた。まるっきり”だるまさんがこーろんだ”である。
カウガールは何としてもレミントンを手に入れたかったのだが、じぃにとってはそんな事理解できるはずもなく、また、どうでも良かった。

いや、もう言葉はいらないでしょ。我慢の限界、これは。

78 :名無しさん@├\├\廾□`/:2005/08/05(金) 10:23:51 ID:ZTYWWl51
今度こそじぃはレミントンを手に忠告なくカウガールに向かって駆け出した。内心は激怒していたものの、表情は相変わらず固まったままで。
「きゃぁっ!!」
カウガールの目が大きく見開かれ、喉の奥から強引に引っ張り出したような声を上げる。そしてこちらも今度こそじぃに背を向け、一目散に逃走を開始した。
走りながらの射撃だったが狙いは正確だった。木の幹の破片が頭上から降ってきた事でカウガールの恐怖を煽る効果があったようだ。
木々の合間を抜け、開けた空き地(G−3)――何らかの施設が設置される予定なのだろう――の中を二人は駆けていく。
じぃの走力は女子でも上位のほうだったが、カウガールもまた女子では学年で指折りの素早さを誇っていたが、、彼女は足が竦んでいて普段の走力は出せずにいた。
カウガールの下半身へと目を向けると、左のふくらはぎ付近を覆う衣類の布地が黒く染まっていた。被弾したのかもしれない。
縮まらずも開かぬ距離を保ち、じぃはカウガールへレミントンの銃口を向け続ける。
「ひいぃぃぃぁぁぁあ!!!」
前方の路地で、カウガールが地面に這いつくばって悶絶していた。
「な、何?」
困惑しながら周囲に注意を払い、じぃはゆっくりとカウガールへと近付いていく。カウガールの右肩には何か、矢のようなものが先端部だけ刺さっていた。
しかし、どうしてカウガールは矢の先端部が刺さった程度で足元で悶絶しているのだろうか。
考えている間にもカウガールの動きは激しさを増し、船に投げ込まれた魚のように激しく痙攣を始める。
目は眼球が転がりだしそうなほどに広がり、開かれた口の中では舌が強烈に巻き込まれ、泡が吹き出し始めていた。
「カウガール、しっかりしなよ」
じぃは先ほどまでの怒りも忘れ、カウガールの肩を揺らす。しかし、カウガールはそれに応える事なく悶え続ける。
最後に一度大きく全身が跳ね上がり、口から大量の血を吹き出した後、カウガールの心臓の鼓動は停止した。
「な、なんなのよ…わけわかんないよ!!」
わけがわからぬまま、じぃはその場から走り去った。

「『対象に刺さると矢の中の猛毒が対象を死に至らしめます』、結構な効果だよね。反動も少ないし、使い勝手はそれなりにあるし」
ちびフサ(女子10番)はボウガンの説明書を片手に笑みを浮かべていた。
時間は深夜の放送まで後、2分と迫っていた。

09/26 PM11:58 【退場者1名・残り31人】

79 :名無しさん@├\├\廾□`/:2005/08/05(金) 10:51:10 ID:ZTYWWl51
二人の男子生徒が、無機質な空間の中で向かい合っている。その脇、一人の男子生徒は時計をじっくりと見つめている。
埃を被ったソファーの上では女子生徒が背を預けて寝息を立てていた。
モララー(男子20番)は、レモナ(女子21番)、1さん(男子2番)、流石兄者(男子7番)と共に、ビル街の外れの雑居ビル(B−8)の中で身を潜めていた。
彼等は、クラスをまとめる秀才のモララーの導き出した作戦に従い、先ほどまで準備を進めていた。
だが暗い中ではあまりに作業が行いづらい上に明かりなどをつけたらやる気のある奴に狙われかねないというモララーの判断で今は休憩中である。
「この曲は、この部分が印象に強いよね。”世界中の神様だって君を笑う権利なんかない”という下りが希望を感じさせてくれるよ。」
「ああ、俺の一番好きな部分だからな!」
モララーは先ほどからずっと、1さんと曲の話で盛り上がっていた。自然と笑みがこぼれ始めていた。
プログラム開始後、お互い初めて見せる笑みだろう。
『Vrei Sa Pleci Dar♪ Nu Ma Nu Ma Iei♪ Nu Ma Nu Ma Iei♪ Nu Ma Nu Ma Nu Ma Iei♪』
「はぁい?」
突然流れてきたダンサブルなポップス曲に、モララーと1さんは拍子抜けた顔で窓の向こうを見る。
仮眠していたレモナも、目を覚まして同じ方向へ顔を向けた。
その曲はまるまるサビが流れ終わった後、低音量になり、入れ替わりにギコ教授(担当教官)ののんびりした声が流れてきた。
『みなさん、こんばんはー。ナイスガイなプログラム担当教官、ギコ教授がお送りする深夜情報番組、定時放送の時間がやってまいりましたー!
眠い人も眠い目を擦って、しっかり情報をゲットしちゃいましょう! ではヒア ウィ ゴーゥ!』
「いつの時代の人間だよあいつ。大体なんでラジオのDJみたいな…。」
「ナイスガイじゃなくて死骸にしてやるって」
レモナを見ると、既に長テーブルの上で名簿を広げてペンを右手に持っていた。緊張で胸が軽く締め付けられる。
『それでは死亡者情報でーす。男子6番、ウララー君、同12番、ダマレコゾウ君。同12番、フサギコ君、同21番、ようかんマン君
 ……っとぉ〜じゃあ、次は女子だなぁ〜。女子2番、ありすさん、同4番、カウガールさん。同12番、のーさん。合計7名の退場になります!
まぁ、こんなところで退場しちゃう人達は結局ヘタレ!同情している暇はないぞぉー。ペース上げていきましょうねー。』
モララーの中で、胸を撃ち抜かれたような鋭い衝撃が走った。あの教授は本当にこの世の生き物なのだろうか?
何か生きていない無機質なものにしか感じることの出来ない発言だった。
「罪無き死者を冒涜、是非もないな…」
流石兄者が憤りまじりに呟く。細い目の奥、深い黒色の瞳に慈愛を込めた輝きが見えた。
その背中越しでソファーに座っているレモナが震えているのが見えた。プログラムの現実に改めて戦慄しているのだろう。
近づいて声を掛けようと立ち上がりかけたが、放送の内容だけは把握しておこうと座り直す。レモナがこちらを不思議そうに首を傾げた。
『続いて禁止エリア情報でぇ〜す。午前1時からE−3,午前3時からF−4、午前5時にはB−9になりまーす!
 死んでしまうことの無いように気をつけましょう!』
聞きながら、地図にペンを走らせる。
『あっ、忘れてました! 今回から“強制ハンター”なるシステムを導入しましてね。えっと……』
ギコ教授が何か説明を始めた。”強制ハンター”という単語に、モララーは首を傾げて1さんに顔を見合わせる。

80 :名無しさん@├\├\廾□`/:2005/08/05(金) 10:53:47 ID:ZTYWWl51
『ぬゎんと!厳正なる抽選の結果、“強制ハンター”に指名されたた生徒は次の放送までの六時間以内に誰か最低2人の生徒を殺さないといけないんでーす。
 もしそれができなかったら指名放送の六時間後、次回放送と同時に首輪が爆発して名前を読み上げられる事になるぞーギコハハハ!』
「ふ、ふざけるな……」
押し殺しはしたものの、充分にドスの効いた声が喉から出た。言霊というのが実際にあるのならば、ギコ教授を呪い殺せるかもしれなかった。

あいつ等……政府の連中はやり過ぎだ。悪ふざけはとっくに度が過ぎてるが、とにかくこれはもう……言葉じゃ言い表せない。
心の腐った……いや、既に心すらない!

「モララー君」
その声で、奥歯を噛み締めたまま顔を上げる。いつの間にかレモナが横に来ており、興奮を抑えるようにモララーの肩に手を添えていた。
「あ、あぁ。熱くならないからな。」
先ほどまでレモナを慰めようとしていたにも関わらず、知らぬ間に熱くなり、逆に彼女に気遣わせてしまった自分を恥ずかしく感じ、レモナから視線を外した。
レモナは察したのだろう、モララーからゆっくりと手を放した。
『じゃあ指名生徒の紹介だ。今回の生徒は男子8番、ジサクジエン!しっかり戦って生き延びてくれよ!』
モララーは反射的に拳を強く握り、再び絶叫しかけた。慌てて大きく息を吸い込みかけた口を塞ぐ。
胸中に湧き上がった怒りは、正に火の粉を散らす業火に似た激しいものだった。
神経の逆撫でをくらいながらも我を保てたのは、脇で腰を下ろすレモナの姿が視界に入ったからに他ならず、心中感謝した。
『じゃあ、本当に第2回定時放送を終了です。皆さん、元気に戦いましょう!』
ギコ教授の声で放送は終わった。不愉快な余韻に包まれ、モララー達の間に奇妙な沈黙が生まれた。

09/27 PM00:05 【残り29人】

81 :名無しさん@├\├\廾□`/:2005/08/05(金) 23:00:58 ID:ZTYWWl51
G−9。図書館に一人の女子生徒が潜んでいる。
モナカ(女子18番)はバスが出発する前にコンビニエンスストアから調達してきたお菓子を食べるため、ビニール袋の中をあさり始めた。

 どれにしよう。ココアウエハース、ピーナッツチョコ、チョコスティック、プチシュークリーム……。

大ぶりのビニール袋を手で探り、お目当ての菓子を探す。どんなに抑えているつもりでも袋が擦れる音は完全に消せはしない。
モナカは本棚の隙間から人が接近しているかを再確認し、いない事を確信するとチョコチップクッキーが入った袋を取り出した。
図書館の一角で二つの棚に挟まれたここならそうは見付からないだろう。周囲は壁で囲まれているので、おそらくは入口の方向だけ気を付けていれば大丈夫だ。
そう思った。”いただきまーす”と口を動かし、クッキーを口に含んで景気良く齧る。サクサクという軽い音が耳元で鳴り、チョコレートの風味が口中を満たす。
至福の瞬間に、モナカは小さく微笑む。ようやくありついた甘い味に、感嘆の息とともに舌鼓を打つ。
甘い物を食べて乾いた喉に、これまた調達した紅茶を流し込んだ。
「疲れには、やっぱ甘いものよね」
今度はスティック状のチョコ菓子の封を開ける。銀色の袋の中から甘い香りが漂ってきて、それでモナカはまた恍惚とした表情を浮かべた。
スカートにカスが落ちるのも気にせず食う。その間にも他の袋へ手を伸ばし、次々と袋を破っていく。
「死ぬかもしれないんだもん。一度、気が済むまで暴食してみたかったのよね〜」
授業中も菓子を食べているほどの無類の甘党。その食欲ならぬ菓子欲が今ここで爆発を見せていた。
彼女が今の体型を維持できているのは、生来の太らない体質の持ち主であったからである。
「美味し〜い♪」
食欲は止まる事を知らない。モナカはなおも菓子の袋を破り捨て、空箱をビニール袋の中へと放り捨てた。
次の菓子を口へと運びかけ――そこでモナカはようやく背後から差す影が揺れるのに気付いた。
誰かが肩を叩き、モナカはそれで背後に立つリル子(女子19番)の存在を認める事となった。
「リル子……さん」
「……無警戒ね…」
モナカの言葉を半ば無視し、リル子が一人囁いてから呆れた様子で溜息を吐いた。無視された事による直情的な怒りからモナカは立ち上がりかけた。
しかし、リル子が右手に装着したコルト ガバメントM1911が目に入った事で腰を止める。
丁度上目遣いでリル子を見るようになりそれが命乞いをするようで屈辱だったが、モナカは堪えながらリル子に懇願した。
「私を殺すつもりなの? お願い、殺さないで」
日頃から漠然と感じていたリル子の冷さが、この場において冷血なる殺人鬼のオーラとなってモナカの心根を畏怖させた。
リル子は殺し合いに乗る。それは直感だったが、異様な真実味が感じられた。現に今、リル子はモナカに対して武器を向けている。
祈るように両手を重ねる。血液の循環リズムが激しく乱れ、呼吸間隔はより早く変化していった。
リル子は返答せず、顔色の変化でも観察しているのかじっとモナカの顔を眺めている。
それから一旦視線をモナカの足元へと移し、床に落ちる菓子のカスを見た。
眉を寄せて露骨に嫌そうな顔をしてからリル子がモナカのほうへと視線を戻し、唾棄した。
「……馬鹿じゃないの?」

82 :名無しさん@├\├\廾□`/:2005/08/05(金) 23:10:53 ID:ZTYWWl51
 ぶ、武器を持ってるからってよくもそこまで!

モナカは怒りですっかり血走った目をリル子へと定めた。睨み殺してやるとまで思った。 ふとリル子の右腕のコルト ガバメントM1911を見詰め直す。
そこでまた思い留まる。今度はリル子がディパックから黒い筒を取り出す。
「…銃殺か爆死…どっち?」
爆死というフレーズで、モナカは目を見開いて筒を見詰める。つまり、リル子の言葉が示すところは――
「そ、それって爆弾……?」
「……フサギコはこれで死んだ…」
そのリル子の爆竹は、フサしぃ(女子15番)の支給品であるが、その爆竹をリル子が改造したのだ。
校内で唯一、モララー(男子20番)の成績を凌ぐ彼女だからこそできた改造、ということでもない。
他の爆竹の火薬を足したという実に簡単な作りだが殺傷力は申し分ない。実際にフサギコ(男子18番)を死に追いやっている。それはともかく。
リル子の両手の武器を見比べながら、モナカはなおも突破口を見出そうと再度考えを巡らせ始めた。

 どうせ殺されるなら今ここでやるしかないよね……!

結論は即座に出た。それしかなかった。意を決して唇を噛み締める。しかし、リル子がまたしても機先を削いだ。
「……一つ提案…」
「えっ?」
モナカはわけがわからずリル子に訝しげな表情を向けた。リル子の髪が揺き上がり、それを白い指が文字通り手櫛となってすいた。
「……一緒に行動する…悪いけどあなたを利用する…」
リル子の提案は、屈辱の極致だった。そのあまりにふざけた提案に、モナカは怒りを通り越して呆れる。
「……私が隙を見せれば…?」
続いた言葉でモナカは提案を理解した。言ってみれば、これはプログラムというゲームの中に現れたミニゲームだ。
残り二人になるまでにリル子を殺せればモナカの勝ち。殺せぬまま残り二人になってしまえばリル子の勝ち。
「……死ぬか、乗るか…」 
モナカは三度考えを巡らせた。殺し合いになど乗るつもりはないけれど、棚に両脇を挟まれた今の状態では背を向けて逃げても立ち向かっても
実質、銃撃は回避不可能だ。やはり提案に乗るほうが生還の可能性は高いと判断した。
リル子にとってもリスクが少なくない提案だが――確実に”元がとれる”自信があるのだろう――、一体モナカをどのように利用するというのだろうか。
それが不安だったが、結局はやるしかないと決断を下した。

そう。提案に乗るのはリル子さんと同じ、”それだけの事”。私は生還する為に、ルールにのっとってリル子さんを殺す。
こんな人、生還なんかさせちゃいけない。こんな人に殺されたくない!

「その提案に乗るわ」
モナカはリル子を睨みながらはっきりと言った。リル子は澄まし顔になり、軽く顎を上げて呟いた。
「……フフ…馬鹿な女…」
どこまでも挑発的なリル子にモナカは精一杯の威圧的な視線を投げ付ける。当然と言えば当然だが、食欲はいつの間にか失せていた。
極めて奇抜な生死をかけた死闘が、今ここに幕を開けた。

09/27 PM00:50 【残り29人】


83 :名無しさん@├\├\廾□`/:2005/08/07(日) 17:46:19 ID:DRjVxzYB
定時放送を聞いて、B-8、モララー達と同じ雑居ビルに身を潜めていた男子8番ジサクジエンはがちゃりと、彼の体や腕には結構大きめの支給武器のU.S.M3グリースガン、まさしく当たりのマシンガンを床に落とした。

先ほどの定時放送の、ある言葉が頭に反響し続ける。
『二人の生徒を殺さないといけないんでーす。』
『首輪が爆破して』
『男子8番、ジサクジエン!』
全身の筋肉が萎縮し、そしてガクガクと震えはじめる。
きっと、何もしなくても隠れていれば生き残れると思っていたのに。 
六時間後には、首輪が爆発する。
彼は、涙をぼろぼろと、ホコリの溜まったベッドの上に落とした。

全く、気づいていなかった。
隣りの部屋にモララーたちが居ることに。
そして、自分の部屋の扉に手をかけている人物が、居るということに。

84 :名無しさん@├\├\廾□`/:2005/08/07(日) 17:48:10 ID:DRjVxzYB
「おい、モララー。今物音がしなかったか?」
【男子7番】兄者が、自分で持ってきていた携帯電話(どうせ使えないさ、と言っていた)とパソコン、そして配布された簡易レーダーと赤や緑の配線を使って何か作業をしながら、聞いた。
「ん、そうか?」
先ほどの放送での怒りがまだ静まっていないようだが、比較的冷静な声で【男子20番】モララーが言った。
「というか、何やってるんだ?」
彼がその質問をするのも、不思議ではなかった。いきなり、レーダーや携帯電話、ノートパソコンを分解し始めたのだから。
「このレーダーは1エリア分の情報しか見れないからな。全エリアを見られるようにしてるんだ」
「へぇ・・・まぁ、頑張ってくれ」
カチャカチャと兄者がキーボードを打つ音と、【女子21番】レモナのかすかな寝息が、交錯する。
【男子2番】1さんが大きな欠伸をしながら、開けていた棚を戻した。
「こんなところにはやっぱり無いよー?E-5のマンションにならあったかもしれないけど・・・」
もう既に窓のはまっていない窓に寄りかかり、南南東の方角に目をこらした。
【男子9番】したらばが放火した炎。それは、マンションを全焼させたあと、周りの草木にも炎は移り、山火事のようになっていた。まだ、遠くの方で赤々と景色が揺らいでいる。
「でも、本当に有刺鉄線を・・・ごめん」
モララーが、口を手で塞ぐというジェスチャーをしたので、1さんは口をつぐんだ。
どこに政府の目、いや耳があるか解らないから、なるべく作戦は口に出さない、という約束をしたのだ。
そうして正解だった。プログラム担当官は、教育長に「少しでも反乱を企てる生徒がいたら首輪を爆破せよ」との命令が来ていたからだ。


85 :名無しさん@├\├\廾□`/:2005/08/07(日) 17:49:02 ID:DRjVxzYB
1さんは、修学旅行用に持ってきていた自分のノートに、綺麗な字で今の質問を書いた。
『本当に有刺鉄線を爆破して逃げられる?』
モララーも、結構雑な字で返答をし始めた。
『爆破するだけじゃ、絶対に逃げられないよ。でも首輪を分解できる人がいれば、逃げられる可能性は高い。こちらにも銃はあるからね』
1さんは、ふむふむと頷いた。モララーも微笑みさらに鉛筆を進める。
『本当は兄者が本部のパソコンをクラッキングしてくれればまだ良かったんだけど無理みたいだしね。
あと爆破した後でも前でもいいけど、電流の流れを止める必要もある。多分A-2とA-10、I-10の角かA-5、DかE-10の真ん中あたりに』
兄者が、OK、できたと言ったので、二人ともノートから目を離し兄者のパソコンに近づきディスプレイを覗き込んだ。
「全エリアは流石に出来なかったがな。衛生電話だったらできたかもしれないが・・・。
障害物とかの位置を表示することができたし、半径250から500m圏内は多分見えるようになったはずだ。
あと、・・・生存者は黄色で死亡者は赤で見える」
「凄い、それで充分だよ・・・」
1さんが感激の声を出したのを体に受け、兄者が、エンターを押した。ディスプレイを見て、三人は息をのんだ。
「おい、これって・・・」
「間違いない。すぐ近く、いや隣りに二人いる」
部屋の外にあった黄色い点が扉を開けた直後、パン、というもう聞き慣れた銃声と、たらららら、というマシンガンの音が部屋に鳴り響いた。
そして、その黄色い点は赤い点へと変わった。

レモナががばっと起きたときには、既にモララーは1さんの支給武器のS&Wを構え、廊下に出ている状態だった。



86 :名無しさん@├\├\廾□`/:2005/08/07(日) 17:50:40 ID:DRjVxzYB
廊下の壁や床には所々に血が飛び散っていた。モララーは、ディスプレイに映っていた部屋の方を見据えた。
そこには、壁にもたれかかり、血にまみれ既に死亡しているのが明かなのに、銃撃を止められない、ぼろ切れのような【男子6番】コリンズの体があった。
額、顔、胸、腹と縦に一直線に銃弾が埋め込まれ続ける。衝撃で一発一発ごとに壁に叩きつけられている事以外には、全く動かない。
酷い、誰がこんなことをーーー
モララーは、コリンズへの銃撃が止んだ直後、すばやくその部屋に入り、銃を構えた。
「誰だ!ここにいるのは解ってるんだぞ、殺人鬼めーーー!」

誰も、居なかった。

「隠れるな!僕と戦かっ・・・げほっ・・・」
何かが鳩尾にぶつかり、モララーは膝をついた。そして、小さな円い影がコリンズには目もくれず部屋から飛び出していった。
兄者達がモララーに近づいてきた。
「おい、今のって・・・」
「間違い・・・ないよ。絶対に、ジエンだ・・・」
げほっ、と、モララーが二度呻いた。

二日目、AM00:30 (30分の時点では残り29名)【残り28名】

男子6番ーコリンズ
男子8番ージサクジエンに銃殺

強制ハンター殺害必須人数 − 残り1人


87 :名無しさん@├\├\廾□`/:2005/08/07(日) 19:41:20 ID:mc2oFGu1
いつからだったろう、小学校にも入っていないの時だったのは確かだったはずだ。
僕は、幼馴染の”女の子”と毎年七月七日の夜、一緒にあの橋を眺める約束をした。

「私が織姫で、タカラくんが、彦星!」

「うん! 七月七日、約束だよ!」

互いを昔話の男女になぞらえて交わした約束。もっとも、単なる子供の口約束に過ぎなかったけれど。
家が隣同士だったので、ある年は玄関先から、またある年は互いの二階の部屋から顔を覗かせて橋を見上げていた。


G−7の民家の縁側、タカラギコ(男子11番)は、充血した両目を左手で擦った。
さきほどの放送で親友が一気に二人もこの世を去ったことを知り、放送から今まで情けなくも泣き続けていたのだ。
私物のバッグのポケットに差していたS&W M36 チーフスペシャル .38splを抜いて両手で握り締めた。
改めて垣根から周囲を見渡し、自分がいかに安全な場所にいるかを実感した。
「……まずは誰かが通るのを待ちましょうか…」
幾らか平静を取り戻したタカラギコは、肩の力を抜くとまた、身を隠した。また涙が溢れてくる。
人を信じて疑わない殊勝な―プログラム内では盲目的な慈愛とも言えるが―性格のタカラギコは、ネガティブな考えを振り払い、仲間を集めようとしていた。
さすがにタカラギコも全ての生徒が殺し合いに参加しないとまでは考えていなかった。
何しろ銃声のような音が今の今まで何十回と無く聞こえた上、今までに何人もの生徒がこの戦場にて命を落としている。
皆、恐れを為して自殺したという甘い考えは捨てざるを得なかった。
それでもタカラギコは、あまり話す機会は無かったものの同陸上部という接点のあるのじぃ(女子9番)を始めとする多数の生徒が自分に賛同してくれると信じていた。
女子生徒に関しては、ありす(女子2番)を通じ、接する機会があった花瓶(女子6番)ら女子中間派は無条件で信頼できると思っていた。
モララー(男子20番)達、男子中間派も無論、仲間になってくれるだろう。問題はギコ(男子5番)等、不良グループである。数週間前の学校での騒動を思い出す。

88 :名無しさん@├\├\廾□`/:2005/08/07(日) 19:47:26 ID:mc2oFGu1
「いいかげんやめてやれよ!」
ギコが、ヒッキー(男子16番)をパシらせているのを見てモララーとモナー(男子19番)が止めに入ったときだ。舞台は屋上へ続く階段。
「テメ、何様のつもりだ、ゴルァ!」
「モララー、どうやら言っても無駄らしいモナ…」
「ダマレコゾウ!」
モナーの言葉を遮り、ギコの手下、ダマレコゾウ(男子12番)が階段を駆け上がった。右手には釘付きバットが握られている。
ダマレコゾウが釘付きバットを振り上げて跳躍した。しかし、それよりも早くモナーが踊り場へとダイブしており、モナーの足裏がダマレコゾウの鼻っ柱へと命中した。
「……!」
声も出せずに鼻血の飛沫を散らすダマレコゾウの背中越しに、狭い踊り場へと着地するモナーの姿が見えた。
そのままモララーは自分に駆け寄ってきたもうウララー(男子3番)の袖を強引に掴んで体をコマのように回転させた。
「うわわわわ!」
モララーに振り回されたウララーは、そのままの勢いで階下、ギコの足元付近へと投げ捨てられた。はい気絶。
タカラギコは二人の異常な強さに驚嘆しながらも、そのよくできたアクションシーンに胸が弾むのを感じていた。
もっとも、特に表情には出せなかったが。舌打ち。そしてパチンという小気味良い音が微かに響いて、そちらへ目を向けた。
ギコが、翡翠色のバタフライナイフの刃を広げながらモララーへと駆け出すのが見えた。
ギコは気付いていないのだろうが、モナーは既にウララーを地面に組み伏せていた。
驚いた事に、モナーとモララーの顔には余裕すら見て取れた。一体、彼等はどこ喧嘩を覚えたのだろう? 場数を踏んでいるからだろうか?
既に、ギコはモララーの目前の一メートルにまで迫っていた。ギコが突き出したナイフが空を切り、ギコが目を見開く。
次の瞬間には、壁を蹴って体を翻したモララーのソバットが彼の喉笛へと食い込んでいた。 ギコの足が宙に浮く。
つづいて、モララーは宙を舞うギコの首を掴み、そのまま下の階段へ投げ落とした。ギコが階段を転げ落ちる。
入れ違いに、モララーが踊り場へと軽い着地音を立てて戻って来た。ギコを見下ろしているモララーの表情は、タカラギコからは窺えなかった。

89 :名無しさん@├\├\廾□`/:2005/08/07(日) 19:58:03 ID:mc2oFGu1
彼等、不良グループも、殺し合いには参加しないと信じたかった。そもそも、人を殺すという事に禁忌を持ち得ない人物の存在など、タカラギコには信じ難かった。
自分のものさしだけで推し量るつもりはないけれど、それでも。
その時、並木道のほうから物音と共に、重厚な銃声が聞こえてきた。続いて二つの足音がこちらへと近付いてくる。
タカラギコの心臓がどくんと強く脈打ち、弾みで息が止まりそうになった。握ったS&Wに力を込め、木々の隙間から足音のほうを凝視した。
物同士がぶつかり合う鈍い音。先に視界に飛び込んできたのは、何か長い銃を刀のように構えるじぃ(女子9番)の姿だった。
続いて、びっこを引いた状態でじぃへと襲い掛かるシラネーヨ(男子10番)の姿が確認できた。
シラネーヨの右手には、巨大な角材が見える。

 こ、これってまさか、殺し合いをしている……?

タカラギコは戦慄した。シラネーヨは”禰衛夜同盟”という名の暴走族に参加して無免許でバイクを乗り回している。
しかし、少なくともクラス内では至極普通の付き合いを行っており、タカラギコとも少なからず会話をしていた。
自慢げにバイクや喧嘩の話をするシラネーヨがタカラギコは嫌いではなかったし、熱中できる趣味を持ったシラネーヨを”こういうのも良さそうですね”と思ったりもした。
そのシラネーヨが、女の子であるじぃに対して角材を手に襲い掛かっているのだ。足に血の染みたタオルを巻いてあったがそれはともかく。
タカラギコは、その光景の意味を理解しきれずにいた。その間も、戦闘は中断される事なく続いている。 シラネーヨが角材を振り上げた。
じぃはそれを素早く回避し、返す刀で銃のグリップをシラネーヨの頭部へ放つ。おそらく弾切れしているものの銃弾を込める隙がないのだろう。
やや間抜けた音が響き、残像の向こうでシラネーヨの首が横へ振れた。しかしシラネーヨはそれに動ずる事なく両腕を伸ばし、じぃの銃を掴んだ。
シラネーヨが手放した角材が地面に落ち、ドスンと音を立てる。
「離してよ、もう!」
じぃは狼狽しながら前蹴りを数発みまうが、シラネーヨは無言のままじぃから銃を取り上げようとする。
シラネーヨが力を込めると銃の左の先が地面へと触れ、同時にじぃが片膝を崩す。
すかさずシラネーヨの蹴りがじぃの腹部を捉え、じぃの体が後方へと一回転してから仰向いて倒れ込んだ。
シラネーヨは腹部を押さえて咳き込むじぃから一度目を引き剥がし、ディパックから短い槍のような物を取り出し、伸ばし始めた。

90 :名無しさん@├\├\廾□`/:2005/08/07(日) 20:09:55 ID:mc2oFGu1
「シラネーヨ君、止めてください!」
タカラギコは心に突き動かされるまま、その場へと躍りだしていた。シラネーヨとじぃが同時にこちらへと振り向く。
再び、タカラギコの息が止まりかけた。じぃが見せる弱々しい瞳の輝きはともかく、シラネーヨの瞳はどこまでも冷淡で、無機質にタカラギコを見据えていた。
その冷たい輝きに心を呑まれかけたタカラギコは、シラネーヨが向かってくる事に気付くのにも幾らかの時間を要した。
「!」
我に返ったタカラギコはS&Wを持ち上げて牽制を試みた。それはあくまで牽制に留めるつもりだったので、確かな狙いを定めていなかった。
それがシラネーヨに攻撃を許す羽目となった。シラネーヨが拳銃にも怯まずに距離を詰めてくる。頬を汗が伝い落ち、同時にタカラギコは引き金を引いた。
片目を瞑って撃った一撃は、シラネーヨの頭部脇を素通りしていった。背後に見える芝生の土が噴水のように放射線状に散った。
タカラギコの拳銃をシラネーヨの八尺柄の槍が横薙ぎに払い、銃が地面を滑っていった。生存本能から、タカラギコはシラネーヨに背を向けて駆け出した。
すぐに後ろから足音が追ってくる。芝生を蹴り、雑草を踏み散らして走る。そして――足を止めた。
もしこのまま逃げれば、シラネーヨは悠々と銃を取りに戻って自分を射撃の的にするだろう。
タカラギコは踏み止まり、体を捻って背後へ向き直る。眼前に迫ったシラネーヨが、既に槍を振り上げていた。
「シラネーヨ君!」
叫びながら槍を避け、横へと転がり込んだ。槍は地面に突き刺さり、シラネーヨの手から離れる。
タカラギコは再び槍を取ろうとするシラネーヨに飛び掛り、必死でしがみ付いた。シラネーヨもタカラギコを振り解こうと懸命に体を揺らしている。
「こんなのおかしいですよ! 向かう相手を間違えてます! 皆で一丸になって……」
タカラギコは力一杯シラネーヨへと叫ぶ。大声を出し過ぎたのか、叫んでから軽い貧血を覚えた。 その叫びが届いたのか、シラネーヨは中腰のままで動きを止めた。
タカラギコの胸に希望と期待が満ちる。シラネーヨがゆっくりと振り向く。先ほど同様に焦点の合っていない冷淡な瞳がタカラギコを捉えた。
それに魅入られたタカラギコの姿が、闇に吸い込まれたかのように眼球内に映りこんでいた。
手を放したタカラギコに対し、シラネーヨが余裕を持って槍を振りかざす。死は直前に迫っていた。
「タカラ!」
銃声の後に女声が耳に届き、タカラギコは我に返った。目の前で槍を頭上に構えたシラネーヨの体が、左へと傾いだ。
忽焉として視界の右側にじぃが飛び込んできた。どうやらじぃが横からシラネーヨに銃弾を放ったようだった。
シラネーヨが頬を抑えている様子を見ると掠っただけのようだったが。
よろけたシラネーヨに、じぃが躊躇なく銃のグリップの先端を突き出した。それはシラネーヨの喉笛を捉え、シラネーヨの体が真後ろへと反り返った。
「逃げるよ!」
じぃに手を掴まれ、タカラギコは駆け出した。途中、地面に投げ出してしまったS&Wを回収しに走る。
「うぉぁぉぉおおお!」
刹那、夜闇に怒号が走った。そのシラネーヨの叫びに打ち震えながらも、タカラギコはじぃと共に走り去っていった。
暫く走ると何者かの叫び声が聞こえてきた。
「みんなー! 殺し合いなんて馬鹿げてるー! ここに来て一緒にプログラムを壊す方法を考えようよー!」
振り返ったじぃと視線が合う。じぃの表情は喜んでいるような不安がっているような――複雑な表情だった。
「これって……」
「彼女、同じ事を考えてたのですか!」
促されるまでもなく、タカラギコはじぃの手を引いていた。右手にはS&Wを握り、強く踏み込んで駆けていく。
もう誰も死なせない。絶望は生ませない。希望は潰えさせない。その思いを抱き、タカラギコはじぃと共に図書館へと向かっていった。

91 :名無しさん@├\├\廾□`/:2005/08/07(日) 20:19:17 ID:mc2oFGu1
顔を上げると、自分の手を引いて駆けるタカラギコの背中が見える。決して大柄ではない背中。
けれど入学当時からタカラギコの背中を見てきたじぃには、何故は分からないが、大きく頼もしいものに見えた。
こんな気持ちは久しぶり。なんていうのかな、寝坊したときアニキと手ぇつないで学校に駆け込んだ時を思い出す。
あたし、しょっちゅう寝坊してたからな〜。あたしが寝坊してもアニキはずっと待っててくれたんだよなぁ。
ふふ、と笑いを漏らした事でタカラギコが怪訝そうに振り返ったが、じぃはタカラギコの背中を手で軽く押して走るよう、促す。
心の中では、ありがとうと礼を言いながら。程なくタカラギコ達は図書館内(G−9)へと進入したが、声は奥から聞こえている。
階段を駆け上がると、本棚だらけの空間が現れた。
「はっ、はっ……」
「じぃ、あれじゃないですか!」
じぃは中腰で息を乱しながら、タカラギコが指差すほうへと目を凝らす。前方数十メートル、本棚に囲まれた場所にモナカらしき人影が窺えた。
「モナカさん!」
タカラギコは高く上げた手を振りながら、じぃと一緒に駆け寄っていく。セミロングのストレートに明るい栗色のモナカがびくっと体を震わせてこちらを向いた。
恐怖の為か、その双眸は震える涙目となっていた。
「モナカさん、もう怖くないですよ!」
「あっ」
モナカは表情を強張らせたままでモナカ達を見ている。その口元は何かを口にしたいけれど口に出せないという感じで半開きに硬直していた。
じぃは近付こうと足を踏み出したが、何故かモナカは涙で濡らした顔を横に振って拒絶に似た意思表示を行ってきた。
呼び掛けに応えた生徒が来たのだし、ここはとりあえず歓喜するべきではないのか。そんな疑問が過ぎる。
「やだ、どうして……来ちゃったの」 
そのモナカの言葉で、じぃは更にわけがわからなくなった。タカラギコのほうを見ると、やはりと言うべきか首を傾げて様子を窺っている。

 じ、自分で呼んでおいてそれはないでしょ?

一人で呼び掛けを行った恐怖が覚めず、気が動転してしまっているのか。タカラギコはそう判断し、表情を緩めてモナカへ右手を差し出す。
「でも、さすがはモナカさんですね。勇気ある行動、立派でしたよ。あっ、別に悪い意味じゃ……?」
じぃはそこでようやくモナカの視線がじぃ達とは違う位置に移動していた事に気付く。視線は丁度三人の横、本棚の奥へと向けられていた。
「ごめなさい!」
「?」
突然の根拠なき謝罪に顔をしかめるじぃ達の前で、モナカが突然顔を振り戻して絶叫した。
「二人とも逃げて! これ……ふぎゅぅぁあ!」
絶叫を呻きへと変化させ、唐突にモナカが膝から崩れ落ちた。両手を添える腹部、ボタンを外しているブレザー内のシャツが赤く染まり始めていた。
忽然と起こったモナカの異変に、じぃはタカラギコと共に彼女の元へと駆け寄った。その際、じぃが先に見てくれといわれたために、先に見てみる。
赤い塗料を零したような白シャツ越しに、何か鋭く細い鋼線と溢れんばかりの内臓がはみ出しているのが見えた。
ボタンとボタンの隙間からはピンク色のチューブ状物体が寄生したエイリアンよろしく飛び出している。
「はやく逃げるよ!!」
状況を即座に判断したじぃはタカラギコの背中を押し、走るよう促す。何とか図書館の外に逃げ出した。

モナカ(女子18番)
リル子により腹部切断

09/27 PM01:30 【残り27人】

92 :名無しさん@├\├\廾□`/:2005/08/07(日) 23:34:39 ID:mc2oFGu1
「アレアレ? 私……どうしたんだっけ……?」
レモナ(女子21番)はうつ伏せになっていた体を起こして、周囲を見渡す。狗の像が両脇に立っており、すぐに神社と理解した。
何故だか不安な感じはしなかった。むしろ自然な感じがした。
 ――見守り続けるモナ、レモナが望む限り。
モナー(男子19番)の声がした。
「モナー君・・・?でも、でも死んじゃったじゃない、モナー君! それでどうやって私を見守るって言うのよ?」
レモナが涙声で叫ぶ。
「モナはここにいるじゃないかよ、レモナ」
突然の背後からの声にレモナが振り返り、驚愕で目を見開く。そこでは、神社の鳥居に体を寄り掛けて腕組みをしながら、モナーがレモナを見下ろしていた。
「モナー君……? どうして……生きていたの?」
「ちゃんと、足はあるモナ?」
レモナは膝立ちの状態からゆっくりと立ち上がり、モナーと向き合う。そのまま倒れ込むようにモナーの胸に飛び込んで泣きじゃくった。
不思議な温もりがあった。モナーのシャツは何故か涙に濡れる事がなく、清潔感ある香りを漂わせている。
「良かった、モナー君、モナー君!」
モナーが死んだのは確かに放送にて確認したはずだったが、レモナはもう『夢でも見ていたのだろう』程度にしか思っていなかった。
子供の如く泣きじゃくるレモナに、モナーが彼女の頭を撫でる。何分も、何十分もなき続けた。そしてレモナは自分をなでるモナーの手が止まったことに気づく。
涙でぐしょぐしょになった顔でモナーの顔を覗き込む。彼の目からレモナの頬に、一粒の涙が零れ落ちた。
「ごめんモナ。モナはもうそろそろ行かなきゃならないモナ。 だけど・・・レモナ、お前を連れて行くことはできねぇモナ。」
「行くって・・・どこへ・・・?私も連れてってよぉ・・・。」
モナーの体が透き通り、赤い鳥居の柱が浮かび上がってくるのが見えた。そしてついにレモナから手を離し、宙に浮き上がり始めた。
「・・・レモナ!モナはずっとレモナのこと、見守っているモナ・・・ずっと・・・・・・」
やがてレモナの意識が再び闇――暗いとは感じなかったが、その中へ消失していった。


――イ`よ・・・レモナ・・・。


「ん……」
再びレモナが目を覚ます。うつ伏せになってソファの上に倒れている自分、兄者(男子7番)の前に群がる1さん(男子2番)とモララー(男子20番)。
先程と何ら変わらない光景。
「夢……だったの? でも……」
夢にしてはモナーの体温や匂い、様々な物がいちいち現実的に感じられた。そう思ったが、しばらくその場に座り込んだ結果、やはり夢であるとしか考えられない。
ようやく両手をついて体を起こす。レモナは右手首にはめた丸い腕時計に視線を落とす。時刻は午前2時00分を指していた。
一時間の間、眠っていたのだ。その間、何が起こったかは分からないが、恐らく、他の三人はすでに作業に取り掛かっているのだろう。
思い出したように胸元のポケットから携帯電話を取り出して、音声メモを再生する。
 ――レモナ! モナはずっとレモナのこと、見守っているモナ!
さっき聞いた声と同じ、モナーの声だった。頑張れると思った。
「私、頑張るからね。モナー君が託してくれたメッセージ・・・大切にするよ・・・」
モララーたちのほうへ駆け寄る。薄金色のロングヘアがふわっと浮き上がる。

09/27 PM02:00 【残り27人】

93 :名無しさん@├\├\廾□`/:2005/08/12(金) 17:28:09 ID:8Q+KyLCN
地図の東はしにある森(D−10)、プログラム会場内と外を区切るフェンスがタカラギコ(男子11番)の右手側に立ちはだかっている。
フェンスには高圧電流が流れていたり有刺鉄線が巻かれていたりこちら側へと沿っていたり、その上高さも五メートル強。
乗り越えられてもモララー(男子20番)や“今は亡き”モナー(男子19番)くらいなものだろう。
もし、乗り越えられたとしても首輪に発信機が付いている以上は居場所が丸分かりなのだし、会場外に逃げた生徒は首輪を爆破してしまえばいいだけなのだ。
そんな事を考えながら、フェンスに背を預ける。
「ぐうっ!」
同時に、左手の甲に激しい痛みが走った。先刻、シラネーヨ(男子10番)に槍で殴られた時の怪我なのだが、その部分は痛々しく真っ赤に腫れ上がっていた。
指は自由に動かせる事から骨にヒビが入った程度なのだろうけれど、それでも支給品のS&W M36 チーフスペシャル .38splを扱うのは難儀しそうだった。
「痛む?」
タカラギコの脇で地図を広げているじぃ(女子9番)が、眉をひそめながら訊いた。
タカラギコの負傷はシラネーヨに襲われているじぃを助けた際の怪我だったので、その事でじぃは(珍しく)自責の念にかられているようだった。
「平気平気、気にしないでくださいよ。」
多少芝居じみた感じになってしまったが、タカラギコはじぃに笑顔を向けた。じぃは俯き気味で微笑み、それから自前の鞄を手にしてタカラギコへと近付いてきた。
それにしても不思議な感じだった。当然だろう。どちらかと言えば親しかったシラネーヨがタカラギコにバットを振るい、
自分に同行してくれているのはほとんど言葉を交わした事のないじぃなのだ。今まで築いてきた友情と言うのは、土壇場では何の意味もなさないのだろうか。
じわじわと失望感と無力感がタカラギコを侵食しかけたが、どうにか振り払って別の事を考えようと試みた。
視線を落とすと、じぃが白く細い布をタカラギコの左手に巻き付けている。タカラギコは、じぃに関して知る限りの情報を記憶から掘り起こしてみた。
特定のグループには属さず、一人で行動するほうが多かったようだが、よく屋上で喫煙しながらつー(女子11番)やのー(女子13番)と談笑しているのを見かける。
部活動では一年の頃から100mの選手として大会に出てたという俊足の持ち主だ。
そういえば剣道部員数人相手に鉄パイプ一本で挑み、瞬く間に殴り倒したという現場を目撃した生徒がいるらしい。真意は不明だが。
タカラギコがじぃに関して知っている事は、それでほぼ全てだった。机を並べるクラスメイトとしては、ごく標準的な知識量だろう。
「よし……。あたしは器用じゃないから上手く巻けなかった。骨折の可能性もある。固定しておけば、折れた骨が神経を傷付ける可能性は少ないよ」
布を結わき終えたじぃがタカラギコから離れる。タカラギコの左手は、バンテージのように布でぐるぐる巻きにされていた。
じぃが言う通り、綺麗に巻いているとはお世辞にも言えなかった。それでも、じぃの誠意は今のタカラギコには計り知れないほどの感激を与えてくれた。
タカラギコはプログラムに乗らない生徒の存在に心から安堵して、じぃに敬愛の眼差しを送る。
「ど、どうしたの、タカラ?」
じぃが困惑た様子で訊いてきた。その素振りに苦笑しながら、タカラギコは自分の考えをじぃに打ち明ける決心をした。
「じぃ、僕は仲間を集めて皆で打開策を考えたいんです。シラネーヨ君やリル子さんはあんな事になってましたが、きっと怖かったのもあるでしょうし……。
次に会った時に話してみれば、もしかしたら冷静になってるかも……」
そこでタカラギコは言葉を切った。そのままじっと目の前に突き出されたじぃの開かれた右手を見詰める。厳しい表情になったじぃが、諭すようにゆっくりと話し始めた。
「タカラ、あたしの意見を先に言ったほうが良さそう。気分を害せず聞いて欲しい。」
タカラギコは緊迫感に息を呑み、頷いた。それを確認してからじぃが話を続ける。
「このプログラムという試みの中で、人を信じる事がどれだけ無謀でリスクを伴う事かわかる?
 モララーでさえ、信じている人間に後ろから刺されたら一たまりもないよ…」
信じている人間が牙を剥く……確かにこれ以上の脅威はないし、裏切られたら防ぎようがないな、と思った。
あの並外れた運動神経と学才、戦闘能力を持つモララー(男子20番)でさえ、例外ではないだろう。
「そもそも現状打破の具体的な手段なしに仲間を募っても誰も力を貸してはくれないよ?口だけならどうとでも言えるし。
 極論すれば、タカラが叫んでいるのは無力な机上論なんだ」

94 :名無しさん@├\├\廾□`/:2005/08/12(金) 17:28:58 ID:8Q+KyLCN
そのじぃの言葉に、タカラギコは心底打ちのめされた。一言一言がもっともだったし、自分が”打開策”と信じて疑わなかったそれが、
ベクトルのずれた抽象論に過ぎなかったのだと思い知らされた。タカラギコは落胆して肩を落とした。左手から鈍い痛みが走ったが、今は大して気にならなかった。
「あっ……気ぃを悪くしないで。タカラの考えは勿論尊い考えだと思うし、あたしも感心しちゃった。
 けれど、リル子はともかく、シラネーヨからは生への必死な思いが伝わってきた。それに比べるとタカラギコの考えは……
 やっぱり綺麗事で、甘いかと……あたしは思うんだぁ…」
じぃの言葉尻は、申し訳なさそうにボソボソとした呟きになっていた。
普段のじぃからは考えられない饒舌ぶりなのは、タカラギコにプログラムの現実を一刻も早く教えたい、ひいては命を落として欲しくないという事からそうなっているのだろう。
そして、じぃの言葉はまたしてもその全てがもっともな内容だった。シラネーヨはルール説明から脱出の不可能さを感じ、
悩みに悩んだ末に優勝して生還する道を選んだのかもしれない。その裏にはタカラギコが与り知らない深い事情があるのだろう。
それに、生きたいという心は責められないとも思った。当然、じぃにもその心はあるだろう。だからこそシラネーヨに応戦し、今こうしてタカラギコといるのだ。
「僕の考えは確かに甘いし机上論かもしれないですが、けどそれは、このギリギリの状況で僕がどうしてもやりたいって思った事なんです。
 もし迷惑をかける事になった時は僕から消えるますから……」
女の子を一人残して去るなんてそんな事はできない。内心でそうは思ったが、嘘も方便と言い聞かせて、言った。
「嘘が下手なんだね、タカラぁ…」
じぃが表情を緩めて微笑を作る。それからレミントンM700を肩に掛け、素早い仕草で立ち上がった。
「この銃使いにくいからなぁ。とりあえず、鉄パイプでも探しにいこっと」
じぃが顎を傾けてタカラギコに立ち上がるよう促す。どうやらこれからもタカラギコと一緒に行動する事にしたようだった。
「じぃ!」
「!うるさいなぁ。耳元で叫ばないでよ!」
タカラギコは慌てて口を両手で塞ぎ、それから二人同時に破顔した。普段、無表情のじぃも。
語り口こそ大人びているが、今のじぃの無邪気な表情は確かに女子中学生のそれだった。
「じぃって……」
「ん?」
「……や、やっぱりなんでもないですはい。」
出かけた言葉を呑み込んだ。じぃをちょっと可愛いなと思った事は、胸に仕舞っておこう。
「物忘れ? まだボケには早いぞ〜」
地図を開きながらじぃが笑う。それからじぃは月明かりを頼りに地図に目を通し始めた。

 彼女の想いを成就させてあげたい。政府に僕達の夢や思いを壊す権利はないんだ。

目的を見付けたタカラギコの瞳に、決意の光が強く宿っていた。
小さな一歩かもしれないけど、それがいずれ政府を倒す一撃への布石となる事を信じて。


09/27 PM02:30 【残り27人】

95 :名無しさん@├\├\廾□`/:2005/08/12(金) 22:06:20 ID:8Q+KyLCN
昨夜と変わらぬ形の月がくっきりとその姿を映していた。それは青白い光を中空に放ちながらガラス窓越しに眠っているレモナ(女子21番)を優しく照らしている。
過酷な現状況とは不似合いな幻想的な光景。思わず見入ってしまう。モララー(男子20番)の正面では、流石兄者(男子7番)が素早い手捌きでキーボードを叩いている。
1さん(男子2番)は今頃、ビルの入り口で見張りをしているだろう。手を止め、顔を上げた兄者と視線が交わる。兄者がおどける様に訊いた。
「時にお前、レモナの事考えてたろ?」
「そんなこと無いんだからな!」
「OK!時に落ち着け!」
兄者と眼を逸らし、廊下に出た。確かにレモナのことを考えていた。
「そうだ、図書館か・・・」

96 :名無しさん@├\├\廾□`/:2005/08/12(金) 22:11:03 ID:8Q+KyLCN
記憶を呼び覚ましたモララーは、小さく漏らして顎を上げた。

1年の頃の六月。モララーは、崇拝するバンドグループ”HELLOWEEN”の資料を探しに図書館にふらりと足を運んだ。
”Eagle Fly Free”を口ずさみながら――途中、教頭に睨まれたがなんて事ない――図書館のドアを開ける。
室内、広い木製テーブルの上に座っていた女子生徒が銃撃でも受けたかのようにびくりと体を跳ね上げ、それから恐る恐るこちらへ振り向いた。
露骨な不歓迎の表情。それが同じクラスで図書委員のレモナだと理解するのに一秒と要さなかった。モララーは眉を歪め、溜息を漏らす。
今までモララーが彼女に抱いていたイメージは率直に悪いものだった。人を見た目で決め付ける。悪そうな輩から一線措いて観察するような態度。
「な、何ですか?」
震えた声がモララーへと投げ付けられる。予想通り。まるっきり強盗犯を相手にする女性銀行員だ。強盗犯は一見丸腰ですが、実は背中に拳銃を差している気がします。
オーバー。 モララーは嫌気がさしたものの、ここで引き返すのも馬鹿馬鹿しかったのでレモナを無視して本棚を探る。
ねっとりと絡むレモナの視線を堪えながら一つ一つ本を手に取る。こめかみに嫌な汗が流れ出してきたが、黙々と作業を続けた。
ふと脇に気配がしたので振り向くと、レモナがちょこんと立っていた。相変わらずの怯えた眼差しだったが。
「な、何か探してる……んですか?」

 毎度毎度の敬語か。お前、悪っぽいと固定観念持ってる奴には言葉選ぶんだからな。おめででーな。僕が何したんだっつーの。

心の中で唾棄した。いい加減口頭で不満を露にしたくなったが、どうにか言葉を呑み込む。 要は早く出て行って欲しいという事なのだろう。
そう思ったモララーは、渋々口を開いた。
「ハロウィン」
「はろうぃん?」
「ハロウィンってバンドグループの本だよ。メロスピの。」
「めろすぴぃ?」
メロスピも知らないのかよ、と、憤怒しそうになるのを押さえ、詳しく説明する。
「メロディックスピードメタルの略。」
その言葉を聞くや猛烈な勢いで首(?)を横に振りながらレモナが答える。
「メ、メタルなんて置いたら大変ですよ! 先生に何言われるか……」
「あぁそう。」
レモナの過剰なリアクションはともかく、それだけ聞ければ充分だった。一刻も早くここから立ち去りたい。その一心で足早に踵を返す。
じっと背中を見詰めるレモナには目もくれなかった。その後、モララーは校門の外の商店で菓子パンを買ってからバスケ部の部室へと足を向けた。
際、半開きにしたままの図書館のドアが目に留まって何となく中を覗き見た。瞬間、モララーは驚きに息を呑んだ。
レモナが椅子に座って本を読んでいるのはさっきと変わらない。しかしその表情はとても穏やかで、普段のレモナとは別人のものだった。
ガラス窓の向こうから差す夕日とマッチした幻想的な光景にモララーは思わず見惚れそうになる。これは絵になる。不覚にもと言うべきか、とにかくそう思った。
もしかしたらモナーもその表情に惚れたのかもしれない。その時、気配を察知したのかレモナが首を向け、瞬時に表情が女性銀行員のそれへと戻る。
今度は憤然するよりもむしろ笑いたくなった。ほとんど条件反射。
「ま、まだ何かあるんすか?」
「……レモナ」 
モララーは溜息を吐き、口を開いた。関わりたくないはずだったのが、この時はどういうわけかそうせずにはいられなかった。
「教室でもそうやって自然な顔してればいいじゃん? そっちの方がその・・・カワ(・∀・)イイと思うからな!」
レモナは狐につままれたような顔で見詰めていた。おそらくは「大きなお世話」なり「関係ないでしょ」と言いたいのだろうけれど、口に出せないのだろう。
我に返った。とんでもないお節介だ。自分は何を言っているのだろう。そんな思いが次々と込み上げてくる。
くるりと体を翻して教室の外へと出て行った。ドアをきちんと締めるのを忘れずに。磨りガラス越しのレモナは、まだこちらを見ているようだった。
モララーは図書館を後にした。以後、モララーの中のレモナに対する刺々しい気持ちは多少緩和された。
思えばレモナが自分に敬語を使わなくなったのはあれからだったような気がする。それは図書館の一件が原因だったのだろうか。
それから、日を追うごとに、彼女とはモナーと同じように分け隔てなく接していった。

97 :名無しさん@├\├\廾□`/:2005/08/12(金) 22:15:49 ID:8Q+KyLCN
それからまた、兄者とレモナのいる部屋へと戻る。1さんが兄者の前に新たに加わっていたが、ともかく。
先ほどと同じように兄者の前に立つ。細めた目をレモナへと向ける。レモナはソファーの上で寝息を立てている。
不思議と穏やかな顔ながら涙を流しているのが伺えた。 最愛の人、モナーの死という情報は、どれほどのダメージをレモナに与えただろう。
小学校以来、涙を流すことが無かった自分すら涙を流したのだ。時間が解決するならば、このままずっと寝かせておいてやりかった。
しかしその思いに反し、レモナがその目を開け、歩み寄ってきた。不思議と自分も歩み寄ってしまう。手を差し伸べる。
「目が覚めた? 僕がわかるか?」
「う、ん……モララー君」
レモナは数度目を瞬かせ、緩慢な動作で首を縦に振った。それから急に、涙を流しだした。
「レモナ?」
1さんと兄者も気付いたのか、自分とレモナに目を向けた。レモナが1さんと兄者を交互に眺め、決意に満ちた声を発した。
「モナー君が私を抱きしめてくれた…。モナー君はずっと私達を見守ってくれている…。」
レモナの表情が歪みかけた。やはり決意の裏で悲しみが与える激しい重圧と戦い続けているのだろう。
モララー、1さん、兄者そして散っていった友人達を思い。
「わたし、諦めない。生きる事を諦めない。明日を諦めない!」
決意してなお割り切れない思いがあるのだろう。透明の雫を瞳から零しながらレモナが言った。その目はしっかりと前を見据えている。
「モナーよぉ、あの世でも草葉の陰だかでもいいから…後援宜しくな!」
空へと言葉をかける。魂の存在など露ほども信じてはいなかったモララーだったが、この時ばかりは不似合いな思いを馳せた。

 幽霊でも何でもいいから、これからもレモナを激励してくれよ。当分は安らかに眠ってなんかいられないからな。
 レモナがいる限り、その中で生き続けてんだろ? モナー。 僕や1さんや兄者もやるからよ、一緒にレモナのフォロー頼むよ。

湿った空気が皮膚を撫ぜる。雨が降るかな、とキーボードを叩きながら兄者が言い、窓越しに上空の月を見上げてみた。
「諦めない。結局は、そういう事だよな」
それは完全に独り言だった。あるいはちょっと魂を信じようと試みている今のモララーだけに、モナーへ向けた言葉だったのだろうか。

モララー達は再び前に向かって歩き出した。黒く広がる絶望の闇を振り払うように力強い足取りで。そして、その闇の先に眩い光がある事を信じて。

09/27 PM02:05 【残り27人】


98 :名無しさん@├\├\廾□`/:2005/08/16(火) 15:10:03 ID:wQvzAfsv
「逃げたか・・・」
【女子19番】リル子が、このBRの会場では珍しい、窓がはまったままの窓から外を見て、呟いた。
まぁ、窓から映る景色は、ただ薄暗い月光が届いている範囲だけなのだが。
月光の届く範囲には、ディスプレイの割れたパソコン、数cmと埃の被った5巻の小説シリーズ、そして【女子18番】モナカの死体が、あった。
「ったく・・・バラそうとしなければ、まだ生かしてあげたのにね。」
つま先で、腹部から人間が生きるために必要な臓器の一部が大量の血液と共にはみ出しているモナカの顔を軽く蹴とばす。胃のような内蔵が、ぐちゃっと音を立てて腹から落ちた。
彼女はもう死体となったモナカの体には興味が無いらしく、弓のこのような形に改造しまだ血が滴っている、鋼線を拾い上げた。
まさかこんな所に鋼線があったとは思っても見なかったことだ。
それに、暗闇のおかげで、こちらが誰なのか知られずに済んだみたいだし。

ちらっと見えた、【男子11番】タカラギコの右手。
そこには、小さな拳銃があったのだが。
邪魔が入ったおかげで、奪えなかった。

いや、もうそれはいい。
先ほどはただの風の音だと思ったのだけども。
倒れた本棚や、埃被った机、雑然と積まれた本の間から聞こえるかすかな物音。荒い呼吸。何より、人の気配がそれを証明した。

やはり、私とは別に、誰が生存者が、いる。
そして、今も殺すチャンスを探っている。
恐らく、失敗するのを恐れ、銃を置くのを待っているのだろう。
しかし、そんな事はしない。
このゲームでは、何が起こるか解らないから、武器を放すことは絶対的なタブーなのだ。

さてと。
そろそろ、その臆病者を殺そうか。

99 :名無しさん@├\├\廾□`/:2005/08/16(火) 15:11:12 ID:wQvzAfsv
【男子17番】八頭身は、本棚の影でガチガチと歯をふるわせながら、同じ部屋(といってもかなり広いのだけど)にいるリル子の動向を探った。
リル子の懐中電灯の光の元で、見えてしまった。
モナカの、腹部から出てくる、内蔵。ベシャリと音を立ててそれは床に落ちた。
辺り一面に広がる血は、自分の足下まで近づいてくる。
べっとりと、赤い血液が靴をぬらしていった。
逃げたい。
そもそも、一番最初に図書館に居たのは八頭身なのだ。
ここで、古本でも読みながら一夜を過ごし、次の朝にここを出て最愛なる【男子二番】1さんを探そうと思っていたのだけれど。
モナカが居た。敵意を持っていないような感じがしたので、話しかけようとしたところに、リル子。
彼女には、あまりいい噂は無い。そのままやりとりを見ていた。
彼女は銃、そして爆弾を持っている。
ここから逃げるならば、リル子を殺すか、気絶させるかしかない。
だとしたら、やっぱりーーーでも・・・
八頭身は、支給武器の二個の手榴弾のうちの一つを、ぎゅっと握った。
どうにかして、逃げなければいけない。
一番いいのは交渉だ。でもどうやって?
最高の言葉。それは「首輪を解除してあげる」なんだろうけど。
確かに僕は、少し機械には強い。でも、政府が作った首輪を解除するのは流石に骨なはずだし。
というか、きっと分解している間に爆発するはずだ。そもそも道具も無いし。



100 :名無しさん@├\├\廾□`/:2005/08/16(火) 15:12:27 ID:wQvzAfsv
考え事をしているうちに、足音が、だんだんと近づいてきていた。
味方は居ない。まるで、数千もの兵士がいる敵地に一人ぽつんと残されたような、感じ。
「ねぇ、誰か居るんでしょ?出てきてよ。今ならまだ殺さない」
リル子が、平然とした顔で言った。
ここは、行くか、行かないか・・・。
駄目だ、誰か解らないはずだから、行かないのほうがいいに決まってる・・・多分。
数秒経って、リル子ははぁと溜息ながら、言った。
「行かないなら、私が行く。私の嫌いな人なら殺すけど」
まぁ、ほぼ全員なんだけど。

無言の戦慄が、背筋を撫でた。
死にたくない。
八頭身は思った。
殺せば、生きられる。あの子は評判の悪い、悪い子だ。でも、でも・・・

リル子の足音が近づいてくる。もう行かないと、殺されるーーー殺される!!
八頭身は、手榴弾のピンを抜き、リル子の目の前(といっても7mほどあるが)に立った。



101 :名無しさん@├\├\廾□`/:2005/08/16(火) 15:13:23 ID:wQvzAfsv
「ようやく顔を見せてくれたわね、八頭身君・・・でも、もう遅い」
リル子は銃を構えた。しかし、八頭身のほうが一瞬、早い。彼は既に手榴弾を投げる形として右手を振り上げていた。
「くっ」
彼女がそれを手榴弾だと認識したときには、もう手のひらからは放たれていたのだけれど。
完全に離れる前にレミントンから銃弾が発射され、右腕に当たった衝撃で少しでも軌道が変わったのは、奇跡だろう。
本来なら彼女の顔面数cmで爆発するはずだったそれは、リル子の2,3mほど離れたところで爆発した。火薬はあまり入っていないが、至近距離から爆発しても殺傷力が無い、という訳ではない。
ただ、殺害するならもっと近くからの方が良かったかもしれないが。
爆発による音の衝撃波が二人を襲った。まるで、急に突風に晒されたような、勢いだ。
リル子は銃を右手に持ったまま、真後ろに頭から吹っ飛んだ。そして、本棚に頭を打ち、気絶した。
八頭身も同じく後ろに吹っ飛んだ。その体の大きさで、尻餅を付く程度には済んだのだが。
八頭身が起きあがり、右腕をかばいながら懐中電灯で照らし辺りを見回す。
「う・・・ん」
数メートル先、本棚の下にリル子が気絶していた。ぶつかったときに落ちてきたのだろう、古びた本が十数冊、彼女の体の上に落ちていた。
八頭身は先ずリル子の右手から銃を引っぺがした。
その銃をリル子に向け、考える。
どうする、どうするーーー僕を殺そうとしたんだ、次にあってもまた殺そうとするに違いない、
でもーーー甘い考えじゃこのゲームは生き残れないーーー殺したくない。
自分の命とこいつの命のどちらが大切だーーー両方とも、大切だ!
銃を下ろした。もしかしたら、きっと【男子20番】のモララーが何か考えているかもしれない。
彼は天才だから。・・・しかし、こういう時には、天才の方が恐ろしいとも、聞くのだけど。
それでも自分一人じゃ、心細い。そして何より、死ぬ可能性が高い。だったら、誰か頼れる人と一緒に居るべきだ。
頼れる人間・・・1さんは、自分が好きな人だ。やはり、【男子15番】忍者君か。
彼には、中学一年生のころ1さんに気づかれないように後を追いかける術を教えて貰おうとしてから、ずいぶんと親しくしていたし。


102 :名無しさん@├\├\廾□`/:2005/08/16(火) 15:13:55 ID:wQvzAfsv
『忍者くーん、僕に1さんに気づかれないように追いかける術を伝授してくれない?』
『+激しくストーカー・・・?+』
いやがる彼をなんとか説得し、教えて貰ってからは1さんに気づかれることが無くなった気がする。

それに、彼とは好きな人を教え合ったこともあるのだし。

『忍者君は誰か好きな人は居ないのかい?僕は1さんだけどね!1さんは忍者君には渡さないよ』
忍者は、指で指し教えてくれた。その人は頬杖を付きながら読書をしている・・・・。【女子8番】しぃのようだ。
『へぇ、彼女かぁ。確かに結構可愛いし、クールで格好いいし。でも競争率高そうだけど』
『+激しく一目惚れ+』

ささやかな、友情。
自分が頼れるのは、運動神経の良い彼しか居ないだろう。
八頭身は、リル子のデイバックから銃弾だけ取っていき、図書館を後にした。



リル子が気が付いたころには、既に日は上りかけていた。

PM02:35 【残り27人】

103 :名無しさん@├\├\廾□`/:2005/08/25(木) 21:08:03 ID:0H0dQ0yl
忍者修行。それは勿論、常人には耐えられない苦痛を伴う。当然死ぬ者も居るし、若くして発狂する者もいる。しかしそれは長い年月を必要とするため、子供しか修行することができない。
【男子15番】激しく忍者は、その長く険しい修行の途中で親に勘当されていた。
彼の家は厳格、と言っていいのだろうか。確かに師範───父親はとても厳しく、修行の度に何度も死にかけている。こんな修行を続けていれば、死んでしまう!ある意味、このゲームは人生の転機だろう。
母親は彼と三人の兄妹(兄二人は既に修行の過程で死んでいる。妹は病院で、いわゆる『心のケア』というものをやっているらしい)を産んだあと仕事で死去。
父親のおかげで全く友達を作ることさえできなかった、自分の15年の人生。
こんな所で死ぬ訳にはいかない。生き残る。自分の人生は自分で決めるつもりだ。忍者になんか、ならない。父親のようにはならない。
心残りの妹は、このゲームが終わった後に一度だけ連絡を入れようとは思っている。でも、それだけだ。
哀しきかな彼が父親から受け継いだ隠密術は、素晴らしいものがある。気配はまだ殺す術を完全にマスターしてはいないが、足音、物音、自分の呼気の音、衣擦れの音それら全てを消し去る術は既に習得済みだ。
そういえば唯一、心のどこか片隅でちょっと、ほんのちょっとだけ友達になれるかもしれないと思えた【男子17番】八頭身にも自分なりに隠密術を教えていたな。いや、隠密術を教えてからそう思ったんだったか。今思えばそれはかなり昔の事にも感じられた。
八頭身は、できれば自分の手では殺したくない。いやそもそも死んで欲しくはない。
彼は自分にとってかけがえのない人だから(言い方はちょっと気持ち悪いが)。忍者は支給武器「だった」槍─既に加工済み。使いやすいように刃先以外の木の部分は持つ10cmより下を折っている─を握り締めた。

俺は、あの家から逃れる為に、闘う。

彼は自分が休憩していた樹の枝から一切の音も立てず腐葉土の地面に華麗に着地し、(彼の父親は非常に残念だっただろう。なぜなら、彼の実力は将来父親を超えることが目に見えていたからだ)先ほど通りかかった生徒の影を、追った。

104 :名無しさん@├\├\廾□`/:2005/08/25(木) 21:08:53 ID:0H0dQ0yl
右腕が、痛む。

【女子9番】しぃが、デザートイーグルの反動で直後は動かすだけでも痛んだ右腕をさすった。
今はもう痛みが引いてきている。しかし、彼女はそれに気づくことなく、腐葉土と樹木で埋め尽くされた樹海─F-8─を俯き歩き続けた。
自分を助けてくれた【女子12番】のーを殺すのは忍びなかった。でも、それは仕方ないことだ。
なぜなら、このゲームは殺し合いだから。
生き残りをかけた、戦いだから。姉も、それを了解したうえで残り4人という所まで生き残ったはずだ。
姉はマシンガンで撃たれて、死んだ。しかし、姉は自分が死ぬということをうすうすは感づいていたらしい。だから、自分の所に「あんなモノ」が届いたのだろう。
姉の死体は確かに蜂の巣にされていたそうだ。しかし、最期の体力を振り絞り、手の中で、しっかりとアレを守っていたらしい。所々に血がしめっている、地図の裏に書いた、自分の遺書を。
自分が過ごした三年間の思い出、このゲームの中で考えた事、別のクラスにいる彼氏への言葉、家族への言葉。
「私はあの人と家族にもう一度会いたかったから、友達を殺しました。もう耐えられません。」
確か最初の一文はこうだった気がする。姉は、彼氏に会うために戦った。
じゃあ、自分は何のために戦っている?
生きるため?
死ぬため?
殺すため?
それを探すため?
・・・生きるため、だ。絶対に。そう、信じたい。
死にたくないから。別に、クラスの連中(皆彼女と会話する時は「普通の人」としてする。彼女が不良じゃないというのは皆知っているのだが、彼女には人付き合いというものが無かった)を殺すなんて好きでやってるわけじゃない。
これは、自分の運命。試練。乗り越えて、私は先へ。未来へ進む。
負けない。絶対に。私は、負けない。
今から始まる戦いにもだ。

「さっきから追けてきてる、君。そろそろ戦いましょう?」
しぃは後ろに振り向いて言った。


105 :名無しさん@├\├\廾□`/:2005/08/25(木) 21:09:40 ID:0H0dQ0yl
(この距離で良く気が付いた・・・)
忍者は、ポツリと呟いた。無論、しぃには聞こえない。
相手はしぃだ。(何故か学校を出発するときより異様に太っているように見えた。暗闇のせいか?)自分が淡い恋心を抱いた相手。殺したくない、が、死んで貰うしかない。
気づかれたこの際、物音は関係ない。どうせ相手には見えている(鳥目なのでしぃには見えないのだが、無論皆知らないことだった)だろう、突撃する。
忍者はザッと踏み出した。
直後、左肩に衝撃を受ける。銃撃だ。相手は銃を持っている。ならば、殺せば優勝は近くなる。
彼は口元をゆるめた。同時に、今度は刃物が飛んでくる。キンという音を立たせ刃でそれを空中に弾かせ、自分のエモノにする。すばやく左腕に銃撃。彼女の狙撃テクニックは、目の見えない極限状態で異常な上達をしていた。
忍者の利き手は右手。左手に攻撃を受けてもあまり支障は無かった。弾いた手投げナイフを恐ろしい速さで右腕が放つ。それはしぃの真心、心臓のある部分に深々突き刺さった。しぃはあう、と呻き後ろ向きに倒れる。
トドメだ。彼は大股で走り、たったの五歩で彼女の目の前に立った。右手を振り上げ、刃を彼女の心臓に突き刺して───

刃はカツンと止まった。

正確に言えば、「突き刺そうとして」突き刺さらなかった、というのがいいかもしれない。
とにかく、忍者の刃はしぃの胸、皮膚を削ることさえ、なかった。

ゆっくりとしぃの右腕は自分の額に向かって動き始めた。
血が出ない。何故だ。こんなことは予定外だ──嘘だ。
彼女は生きている。死んでいない。嬉しいのか?俺は?何故だ。嘘だ。そんなことがあるわけが──俺が。

気が付いた頃には、もう遅いことだった。
呆然と、しぃの服を切り裂いた槍の刃を握ったまま彼は呆然としていた。その後、しぃは忍者の額にS&Wを向け──ただ一発、撃った。
彼の意識は、頭部と共に弾け、消えた。
ゆっくりと、しかしなめらかに彼の体は円を描き後ろに倒れる。優勝候補と呼ばれていただろう【男子15番】忍者は、二日目にしてこの世を去ることとなった。


106 :名無しさん@├\├\廾□`/:2005/08/25(木) 21:10:56 ID:0H0dQ0yl
刃はしぃの胸部に深々と突き刺さった、はずだった。
しかし、しぃは知った。防弾チョッキを来ていても、刺さる物は刺さると。【男子9番】したらばのメスの罠はまさしくそうだ。当然強化していない訳がなかったのだ。
このゲームは、修学旅行と偽って行われたもの。当然、衣類は全員持ってきている。彼女はその服を裂き、袋状にして、そこにコンクリートの破片と砂を詰めて仕込んでいた。
当然動きにくくなるし、重くて体力の減少も早くなる。だが、刃物などはまず間違いなくここで止まる。止まらないほど深々差し込まれていても、防弾チョッキが更にガード。
しかし、忍者にはそれは知るよしもない事だ。
それに、しぃにはどうでもよかった。そんなことは。
彼女は、気づき、知ってしまった。自分が何のために戦っているか。
銃を落とし、彼女は天に向かって一人高笑いをした。

忍者に手投げナイフを投げ返された時、ヤバいと彼女は思った。刃物をまさか投げ返されるなんて。
しかし、勝った。しかも「忍者」にだ。その時の快感は全身を駆けめぐった。また、あの緊迫感を味わいたい───
すると、すぐ答えは出る。

自分が何のために戦っている、だって?簡単じゃない。
戦うため。戦うためよ!

しぃは、確実に、いや少しずつ狂いはじめていた。
彼女がそうなったのは、のーを殺してからだろうか。
はじめて人を、おにぎりを殺したときからだろうか。
それとも、このプログラムの存在を詳しく知ってからだろうか。
姉の死を、遺書で受け止めてからだろうか。
あの夜、家に役人が来て姉がプログラムに参加することを知ってからだろうか。
全てが、今はもう遅い事実だった。

忍者は、幸せだっただろうか?
狂っていたとはいえ、恋心を抱いていた相手に、殺されて。
しかしもう彼は何も返事をすることは無い。彼が死んだという事実だけが、その答えだろう。

やがて、しぃはフラフラと歩き始めた。
胸に刃を付けたまま。S&Wは右手に構えて。


男子15番─激しく忍者
女子9番─しぃに銃殺

PM2:50 【残り26人】

107 :名無しさん@├\├\廾□`/:2005/09/06(火) 00:01:32 ID:0eUeE9bX
一応保守っとくか。
流れが一度切れると後が続かないのが伝統。

108 :名無しさん@├\├\廾□`/:2005/09/06(火) 19:18:46 ID:7f52e01A
でぃとアヒャの話書いてるんだけどなんか内容が気に入らないというか
推敲に時間がかかるというかそもそもまだ生かすか殺すか決めてないというか
こういう内容はここに書くのは良くないことだというか

109 :名無しさん@├\├\廾□`/:2005/09/08(木) 22:02:27 ID:VEL8uQme
ポツリポツリと雨が降り始めたのを焼けただれた肌で感じ、【女子12番】でぃは5-Iの崖近くで折りたたみ傘を開いた。
今はもう朝の3:00をすぎているのだが、彼女は眠くならなかった。無論眠ったら死ぬという状況下の中にいるから、ということが理由なのだが。
彼女の支給武器はバドミントンのラケットで、グリップは握りにくく、ガットもちょっと緩めの安物のものだった。ご丁寧に羽根もついていたが、ラケットが一本しか無かったため無意味だった。
できれば、もう少し使いやすいトンファーか警棒、もしくは殺傷力の高い銃あたりが欲しかったのだが。

彼女の家は比較的由緒正しき格闘家の家で、道場を開いていた。勿論彼女も、とても強い両親(父さんは祖父の息子で、母さなは道場に入門した後父親と知り合ったらしい)と祖父をとても尊敬していたし、好きだった。
祖母の顔は物心付いたころには既に死んでしまっていたので覚えていないが(とても優しかった、と母さんが言っていた気がする)。
しかし、道場は五年前、乾いた夏の夜に隣りの空き地から不審火が発生し、その火が移り完全に道場は燃え尽きてしまった。タバコを火が付いたまま投棄したという噂や、花火の火の不始末、という噂が流れたが彼女にはそれはどうでもよかった。

瓦礫の下から出てきた、両親の死体。焼死だった。

彼女と祖父はなんとか逃げることができたが、気づくのが遅すぎたためにでぃの顔には大きな火傷ができたし、祖父も中毒で長い間昏睡状態でいた。今はなんとか元気にしているのだけど。
祖父の、両親の技術を受け継ぐのは自分しか居ない。そのためにも自分は生きて戻らなければならない。
自分が戦う理由はそれで充分だった。
でも、殺すなんて───
いつだったか、祖父が言っていた気がする。
「格闘技の基本は、征かして懲らす、だ。決して忘れてはいかん。」
征かして懲らす。生かして殺さず、という意味だとずっと思っていたが、辞書で漢字を調べてみると「敵を負けさせ、懲らしめる」という意味らしい。
決して殺すな。過ちを後悔させろ、ということか。確かにここはそれをするいいチャンスかもしれない。でぃは、苦笑した。

ぱたぱたと雨が折りたたみ傘を打ち付けてくる。この調子だと、まだまだ降りそうだ。

AM3:20 【残り26人】

110 :名無しさん@├\├\廾□`/:2005/09/18(日) 14:29:47 ID:Gz/8TQwO
いよいよ雨が本降りになってきていた。
自慢の、毎朝6:00に起きてヘアセットをしている体毛に雨粒が当たる。毛が多いと美しく見せやすいのでいいのだけども、暑苦しいし水を吸って縮こまるのが難点だった。
だから、雨は嫌いだ。
かなりデコボコしたI-5の崖の手前の丘陵を肩で息をしながら上り、女子10番ちびフサはそう思った。
ああ、家に帰ってシャワーを浴びたい!

そもそも、ここに誰かが来るのを見ていなければ、こんな辺鄙なところには来るつもりなど無かったのだけど。
確かに、見た。崖から数メートル離れて、崖に沿って歩いている─いつみても顔が傷だらけで気持ち悪いくせに堂々としている気に入らない奴─女子12番でぃ。
学校の生徒であんな傷跡があるのは彼女と、同じクラスの男子1番アヒャ(確か、野球部のエースだったかな)しか居ないはずだ。なんでこう偏るかな。

とにかく、雨で毒が流れる、なんてことが無ければ、矢が辺り次第殺せる確信があったので、それほど油断はしていなかった。
しかし、気づかれては意味がない。なるべく慎重に彼女は動いていたが、どこにそんな体力があるのかと聞きたくなるほどでぃはペースを下げず、一度も休むこともなくデコボコ道を数十分も歩いていた。
なかなか距離が縮まらない。でぃは右手で懐中電灯を照らしているので見失うことはないのだけども、走れば気づかれてしまう。銃を持っていたら返り討ちだ。

さらに二十分は歩いただろうか。少しずつ右に、コンパスや地図から見ると少しずつ南にずれてきている。今はもうJ-6の真ん中あたりだろう。
地形は先ほどと変わらず、小さな丘や段差などが続いた荒れ地で、草は一本も生えていなかった。
雨は以前と変わらず降り続けている。降り続ける雨の冷たさと、続く段差によってちびフサはかなり疲弊していた。でぃはまだまだ元気に歩き続けている。
海は少しずつ荒れてきていた。風がちびフサを震えさせる。
既に、でぃを絶対に殺すという意地が彼女を動かしていた。
その時、ふとでぃは足を止めた。きた、疲れて足を止める瞬間。待っていた。
ちびフサはボウガンを構え、射った。

111 :名無しさん@├\├\廾□`/:2005/09/18(日) 14:30:40 ID:Gz/8TQwO
矢は真っ直ぐ飛んでいき、でぃの折りたたみ傘を突き破った。でぃの体はゆっくりと斜めに傾き、折りたたみ傘をどこかに落として倒れる。
ちびフサは腕時計を見た。時計の分針がちょうど50分を告げる。AM3:50、でぃが死亡した、ってね。
ようやく殺せた感激から、疲れは吹っ飛んでいた。本当なら痛くて動かないはずの両足を再起動させ、でぃの死体へ駆け寄る。体の向かい側にあるデイバックに何か入っていないか探ろうと手を伸ばした。
刹那、蒼い一閃がちびフサの顔面およそ数cmの空を切る。驚き、ちびフサは目を見開き後ろに退がる。 
「・・・生きていたの」
バドミントンラケットを右手で控えめに前に出し、左腕は腰に据え腰は低く。
祖父に教わった棍術の構えを自分で少し改良した構えで、堂々と。
まさしく、でぃは生きていた。

「くそっ」
ちびフサが再びボウガンを構えた。しかしその一瞬前にはでぃはちびフサの方から見て左側に既に移動し、ラケットをちびフサの手の甲に鋭く撲つ。うっ、と呻きちびフサはボウガンを落とした。
ちびフサが反応し動く前に今度はちびフサの左側へ素早く移動。雨に濡れた重い砂がざっと砂埃を上げた。
鳩尾へラケットのフレームを勢いよく当てる。直後方向を変え真上にある顎へ鋭い一撃。
再び右側へ移動し、グリップの先を先ほど当てた鳩尾へ再びはなった。ちびフサは息を詰まらせ、げぼっと今まで食べたものを吐き出した。
「あんた・・・一体どこでこんな技を。」
汚物を全て吐き出したころ、虚ろな目でちびフサが見上げ言った。でぃは、ただ無言で一言、言った。
「お祖父ちゃんが。」
ちびフサが思い出したように会話を続ける。
「そういえばあんたん家、格闘道場やってたっけ。5年前に火事になった」
ちびフサが、自分があまり他人に話したことの無いことを詳しく知っているので少し疑問に思ったが、でぃは続けた。
「今もまだ、公共施設を貸してもらって道場は開いてる。モナー君やモララー君も遊びに来てくれる」
ちびフサは、クラスの不良グループの首領格である【男子5番】ギコを軽くヒネリ潰した【男子18番】モナー、【男子19番】モララーの強さが気になっていたが、そういうことだったのか。
「私のお祖父ちゃんは強い。全盛期は、全国の格闘技大会で優勝が普通だって。
でも今は……あの火事でガスを吸って体力が衰えた。だから、私は生き残らなきゃいけない。
そしてきっと火事の原因を突き止める。火事が誰かの手によって起こったのなら……」
「私は知ってる」
ちびフサがでぃの話を中断した。でぃが、ちびフサの制服の胸ぐらをつかみ、浮かばせた。
「言え」
ドスの入った声で言った。胸ぐらを掴む手がだんだん強くなる。ちびフサは口元で嘲笑した。
「何言ってるの?貴方の目の前に居るじゃない」
でぃの目が見開かれた。

112 :名無しさん@├\├\廾□`/:2005/09/18(日) 14:31:26 ID:Gz/8TQwO
ちびフサが自分の一番強い蹴りをでぃの腹に放った。でぃが制服を離し、腹をかばいながら後ろに下がる。
「モナーと、モララーと、私と、つー。知らなかった?小学生のときは私たちとても仲が良かった。
ある日私たちは夜に家からこっそり抜け出してとある空き地で花火をしようって計画した。それは実行に移された。
ちゃんと火の不始末をしていなかったから、おそらくあれが」
「黙れ。黙れ黙れ!!」
でぃが再び近づき、渾身の一撃を頬に放った。一筋の血がちびフサの口元から流れる。それでもちびフサは口元を緩め、続けた。
「今思えばきっとあの火事が原因だったのかしらね。火の不始末であの火事が起こったんじゃないかってずっと思ってた。それから少しずつ・・・みんな疎遠になった。
モナーとモララーが貴方のところに来たのは、謝りたかったからじゃないの?その様子じゃ謝ってないみたいだけど?」
「次喋ったら貴方を殺す」
もう二発、重い一撃をでぃは放った。ちびフサの目のよこに青いあざができたが、それでもちびフサは口元で嘲るのを止めなかった。
「モナーとモララーは貴方の傷をみて、何も言えなかったんでしょう?
確かに貴方のところには行ってたみたいだけど、ずっとよそよそしかったでしょう?
正直言うとね。私とつーはあんたのことが嫌いだった。だから二人で少し計画して火を不始末にしようと企んだのよ?
そう。あんたの親は、私たちが殺したのよ!」
あっはははハハハハハハハははははははははははははハハハハハハハハハハハハ。ちびフサは笑い続けた。
なに。信じられない。モナー君。モララー君。信じてたのに。なんで。なぜ。
友達だと思ってたのに。許さない。許さない。許さない許さない許さないユルサナイユルサナイユルサナ
ぶつん。


左手でそれを掴んでいる。右手でそれをずっと殴り続けている。
でぃが「それ」に気づくには、どれくらいの時間を要したのだろうか。

今はもう、でぃはでぃでは無かった。
彼女の戦いの理由も、変わっていた。

モララーを つーを   殺害することに。

女子10番−ちびフサ
女子11番−でぃに撲殺

AM4:30 【残り23人】

113 :ANTIQEU:2005/10/09(日) 08:53:11 ID:KwXt2e8f
あの〜、続きは・・・・・・・・・・・・

114 :ANTIQEU:2005/10/09(日) 11:39:47 ID:KwXt2e8f
約一ヶ月経っても誰も来ない、
残り23人どうなっちゃうの?

115 :名無しさん@├\├\廾□`/:2005/10/09(日) 11:54:28 ID:XZF5ukyi
>>113-114
作者さん達の都合もあるから
催促はしないほうがいいですよ。

あと2chの大半のスレはここも含めてsage進行だから
いろんなスレに書き込んでいるなら
気をつけたほうがいいですよ。

116 :名無しさん@├\├\廾□`/:2005/10/18(火) 20:15:12 ID:QTvfJhJj
このスレは終了しました。
もう待ってもこないと思うので落としてください。

117 :名無しさん@├\├\廾□`/:2005/10/19(水) 07:56:15 ID:klX5z5qW
ジエンの話一応作ってるよ。
でも同じ人が作り続けたところでだらだら行くだけだし
投稿するのを迷ってる。

118 :名無しさん@├\├\廾□`/:2005/11/10(木) 22:17:46 ID:5eJhENW2
http://www.b-r-u.net/

119 :名無しさん@├\├\廾□`/:2006/01/08(日) 14:48:17 ID:uS25YD6T
保守

120 :名無しさん@├\├\廾□`/:2006/01/22(日) 14:37:22 ID:tkpRgiCQ
さすがに4ヶ月も停滞していると>>116が正論に見えてくるね
というかもうここまで誰も来ないなら需要が無いって事だし
どうせ>>117氏はもういないだろうし、期待しているやつなんていないんだろうし
そもそも作るやつが居ないリレー小説なんて不必要なんじゃね

121 :名無しさん@├\├\廾□`/:2006/01/22(日) 14:44:23 ID:ukmsjPqs
だろうね。
だからそもそも人がいないんだろうしね。
個人的には「AABR」って設定には惹かれるんだけど、
もう話が見えないし魅力のあるキャラもいないし、書く気が起きないわ。

122 :名無しさん@├\├\廾□`/:2006/02/10(金) 09:49:51 ID:RrZIi6gi
     _  
\\ ____| |_|
// |_   |


123 :名無しさん@├\├\廾□`/:2006/02/12(日) 18:30:07 ID:Av65enxl
^?

124 :名無しさん@├\├\廾□`/:2006/02/15(水) 03:52:59 ID:9fazPKWt
  ∧_∧
  ( ;´∀`) チンコ立っちゃった
  人 Y /
 ( ヽ し
 (_)_)


125 :名無しさん@├\├\廾□`/:2006/02/16(木) 20:54:46 ID:5MomqEFL
>1,2,3,4,5,6,7,8,9,10,11,12,13,14,15


126 :名無しさん@├\├\廾□`/:2006/02/16(木) 23:12:50 ID:0h3rGnWT
                / ̄ ̄ヽ     珍米  飛びます〜!!
               ○――っlllll
               <    6)|     __
                ト    ノ⌒ ̄ ̄とニ⊃っ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄´ゝ
                  ̄ ̄ヽ    __tソ   珍米            / ̄|
                     \                      /  /
                       ̄ ̄ ̄ ̄/ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄\/メ  /
                         /                 (_/


127 :曝しあげ:2006/02/20(月) 11:49:22 ID:Q/K6EQL7
            
〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜
   >( c´_ゝ`) 
           
>( c´_ゝ`)    。
            。    >( c´_ゝ`)
             。

        ∧ ∧
       ( / ⌒ヽ
        |    | >>1
        ∪ / ノ
         | ||
         ∪∪
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          |
          |
          o
        _━━_
        | 100t |
-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=
.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:


128 :名無しさん@├\├\廾□`/:2006/03/19(日) 23:48:24 ID:ZzpWX+2Y
保守

129 :名無しさん@├\├\廾□`/:2006/03/20(月) 13:06:47 ID:FIr56YMN
まだこのスレ生きてるんだぁね…

>>120-121
>>117はここに健在だが死んだスレを復活させようとは思わないわけで
つーか作りたい奴は自サイト作ってやればいい話なわけで

130 :名無しさん@├\├\廾□`/:2006/03/20(月) 20:59:00 ID:adBiUpSp
結局4が頂点だったな。

131 :名無しさん@├\├\廾□`/:2006/04/20(木) 18:39:18 ID:MHSXAVJH
('A`) 砂漠はこれでいくといいよ ラクダより快適だよ
謎⊂ノ ).  
               ┌―く―┐
            _,― ̄|| ''  '' || ̄ー、__
           「| '' [] '| ''  '' | ' □ ''|
    _ィ´ニ ̄T_|_|    | :  :三| :  : |
 ,__{= (  )ミ□†||||]| ,,  ェェ| :  : ̄| ,,  :,, |
  ' ̄ー二*―- ̄`┴┬┬┼┰┰┬―┬┬┘
             .(◎/_j`┸┸´t__{◎}           
            / / ̄      匸| | |       
            / /|        | | | |      
            ◎(◎、       ◎  ◎ 
           | | \\     | |  | |   
―――――――-| |―-\,>┐――| |―-| | ̄ ̄
          <00>   LX/  <┼>  <00> :  : : :  :
: : :  : :   : :_〔ニ〕_: : :Y: : : :_〔ニ〕_ _〔ニ〕_ :  : : :  :


132 :名無しさん@├\├\廾□`/:2006/04/20(木) 23:37:30 ID:k+1Trw14
            ('A`) 砂漠はこれでいくといいよ ラクダより快適だよ
     謎⊂ノ ).  
                 ┌―く―┐
             _,― ̄|| ''  '' || ̄ー、__
            「| '' [] '| ''  '' | ' □ ''|
     _ィ´ニ ̄T_|_|    | :  :三| :  : |
 ,__{= (  )ミ□†||||]| ,,  ェェ| :  : ̄| ,,  :,, |
  ' ̄ー二*―- ̄`┴┬┬┼┰┰┬―┬┬┘
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            <00>   LX/  <┼>  <00> :  : : :  :
: : :  : :   : :_〔ニ〕_: : :Y: : : :_〔ニ〕_ _〔ニ〕_ :  : : :  :



133 :名無しさん@├\├\廾□`/:2006/04/22(土) 03:28:34 ID:g+F4YuDl
過疎スレ再利用。
AABRを俺が一から勝手に書いて、飽きるまで続ける。

134 :名無しさん@├\├\廾□`/:2006/04/22(土) 03:32:36 ID:g+F4YuDl
内部資料第二○六三九○一八号

―次世代青少年心理解析プロジェクト「プログラム」―

概要:
 このプロジェクトは近年多発する青少年による凶悪犯罪分析のために行われる。
なぜ青少年が殺人、強盗、放火などの凶悪犯罪に及ぶのか、その心理を分析し、
今後の学校教育および心理的に問題を抱えている青少年の更生に役立てるのが本計画の目的である。

 プロジェクトの発案者は少年心理の専門家である、AA大学のギコ教授。
全国の中学校から無作為に選び出した1クラス40人前後を実験対象とし、
実験対象となる生徒全員に何らかの凶器またはそれに類する物を支給した上で
実験場となった離島において極限状態に晒し、全員の行動と心理の変化を記録する。

 運営はギコ教授を中心とした研究チームと陸軍が共同で執り行う。
実験場はAAカテゴリから200kmあまり離れた「紗崙島(サロンとう)」、
記録器具として首輪型発信機付き集音マイク「アナリスク1号」を使用する.....
......
....
..
.

135 :名無しさん@├\├\廾□`/:2006/04/22(土) 03:33:43 ID:g+F4YuDl
 3年2組生徒名簿 

 実験責任者:ギコ教授 

出席番号
【1番】アサピー     【21番】ちんぽっぽ
【2番】アヒャ      【22番】つー
【3番】荒巻スカルチノフ 【23番】づー
【4番】ありす      【24番】ッパ
【5番】1さん      【25番】ツンデレ
【6番】イマノウチ    【26番】でぃ
【7番】妹者       【27番】ドクオ
【8番】えー       【28番】内藤ホライゾン
【9番】おにぎり     【29番】ネーノ
【10番】ガナー      【30番】激しく忍者
【11番】花瓶       【31番】八頭身
【12番】ギコ       【32番】ヒッキー
【13番】さいたま右    【33番】フサギコ
【14番】さいたま左    【34番】フサしぃ
【15番】しぃ       【35番】モナー
【16番】じぃ       【36番】モナカ
【17番】ジサクジエン   【37番】モナエ
【18番】ショボーン    【38番】モララー
【19番】ジョルジュ長岡  【39番】リル子
【20番】タカラギコ    【40番】レモナ

136 :名無しさん@├\├\廾□`/:2006/04/22(土) 03:51:05 ID:g+F4YuDl
午前10時43分、少し高くなってきた日差しが窓から車内へと差し込んでくる。
空は抜けるように青く、どこかへ出かけるには最高の1日になりそうだ。
5月上旬、まだそれほど暑くは無い。海沿いの国道を、バスが数台連なって走っていく。

大勢の中学生と引率の大人達を乗せたバスの一団は、どれもまるでお祭りのように賑やかだ。
ある1台では調子はずれなカラオケに全員が笑っている。
またある1台では安いスナック菓子や飴玉を全員に配る者がいて、これまた全員が笑っている。
後ろのバスが前のバスを追い越そうとする。2台のバスに乗った生徒達は窓越しに手を振り合い、
変な顔をし、はたまた中指を突き立てては互いに指さしあい、また窓越しに笑いあう。

今日は第二AA中学校修学旅行の1日目だ。3年2組の生徒40人が乗る2号車も、例に漏れず賑やかである。。
「なぁギコ、駅まであとどれ位だい?漏れはもう、待ちくたびれたからなー」
モララー【38番】が助手席をはさんで隣のギコ【12番】に言った。
「まだ出発したばっかだぞ・・・あと20分ってところだゴルァ」
自動巻きのクロノグラフに目を落としつつ、ギコは答えた。
「嘘だろ?いくらなんでも時間かかりすぎだからな〜!」
「あはは、モララーは相変わらずせっかちモナね」
モナー【35番】が前の座席から顔を出して、モララーに笑って言った。
「あーもう暇だからな!誰か何か面白いことやってくれYO!」
モララーはいかにも退屈そうにそう言うと座席にもたれ掛かり、車内前方のテレビに目をやった。
ちょうど朝の星占いが始まったところだったので、モララーはとりあえずそれを見始めた。

モナーは座席にのぼったついでに、ちょっと周りを見渡してみた。
バスの前方ではいつも集まってはバカをやっている内藤ホライゾン【28番】にドクオ【27番】、
ショボーン【18番】の三人が青い瓶を回し飲みしては、マズイマズイと騒いでいる。
後ろの方では、つー【22番】とづー【23番】、それにアヒャ【1番】とでぃ【26番】
―――どこのクラスにも必ずいる、ちょっと悪い感じの集団―――とさいたま右【13番】と
さいたま左【14番】のHIPHOPコンビにダンス部仲間のイマノウチ【6番】とおにぎり【9番】が談笑していた。
昨日のライブの話でもしているのだろうか。左がマイクを持つような動きをし、軽く開いた手を上下に振っている。
右と左のさいたまコンビと他のクラスでDJをやっている太陽、それにダンス部のイマノウチとおにぎりは、
いくつか上の先輩達と「グレイティスト・パーティー」なるHIPHOPライブをたびたび企画してはオールナイトで
歌い踊っている。昨日も修学旅行前夜祭ということで、相当はじけてきたのだろう。
一睡もせずにライブハウスで騒ぎ、強行軍でバスに乗り込み、それで今のハイテンション。
どこにそんな体力があるのかとモナーは半ば感心し、半ば呆れつつ彼らを見た。

他にも、じぃ【16番】やモナエ【37番】を中心とした体育会系女子のグループや、
しぃ【15番】やえー【8番】といった文科系女子が同じように談笑していた。
荒巻スカルチノフ【3番】は窓際の席でいつもと同じように寝ている。
本当に無害そうな顔をしているとモナーは思った。

137 :名無しさん@├\├\廾□`/:2006/04/22(土) 03:52:20 ID:g+F4YuDl
そして自分から見てちょうどすぐ前に目をやったそのとき・・・
「ちょ、ちょっとジョルジュ・・・何やってるモナ?」
「え?何ってそりゃ見ての通りだけど・・・どうかした?」
ジョルジュは大きな胸を露にした女性のピンナップが載った雑誌――俗に言うエロ本、である――
を広げつつこともなげにモナーの質問に答える。隣でありす【4番】が顔を赤くしてうつむいている。
「さすがに女の子の前でそれはまずいんじゃ・・・」
「え、あー、そうだな。ありがと。ありすさん、ゴメン空気読めてなかった」
ジョルジュは少しはにかみながらありすに謝罪し、雑誌をカバンに入れた。
まったくこの男は・・・とモナーは思った。
エロ大王、おっぱい星人と数多くの異名を持つジョルジュは、学年ではちょっとした有名人だ。
カバンの中には常時エロ本が3冊入っているとか、女性の胸をちょっと見ただけで何カップか判別可能とか、
とにかくロクでもない習慣や特技を持っている。あ、パッドかどうかも見ただけでわかったっけ。
また彼のそのテの本の蔵書量は半端ではなく、それを格安で購入希望者に流したりもしている。
オカズに困ったらジョルジュに頼め、が3年男子の裏の合言葉である。。
男子にとっては神、女子にとっては敵以外の何者でもない男。それがジョルジュ長岡だ。

「まったく、もう・・・」
モナーはため息をつきつつ座席に座った。
窓の外に港が見えてきた。駅まであと15分、といったところだ。
駅に着いたらそこから新幹線に乗り換え、一路京都へと向かう。向こうに到着するころにはもう夜だろう。
そしてそのままホテルに行き、そこで一夜を過ごす。今夜は眠れないとモナーは思った。
長い人生で中学の修学旅行は1回しかない。楽しみ倒さなくてどうするのだ。
同室の連中と夜通し話すか、何かして遊ぶかしないともったいない。
女子の部屋への突撃――――は内藤たちのグループかジョルジュあたりがしでかしそうだ。
もし奴らが実行したら、どうなるだろう?本当にやったとしたら、結果を聞くのが楽しみだ・・・

モナーの目の前にバスが現れ、通り過ぎていった。3号車だ。続いて4号車、5号車と次々に他のクラスのバスが、
2号車を追い抜いていく。6号車に乗っていたちびギコと手を振り合ってから5秒後、2号車は最後尾となった。
「モララー、今日の運勢はどうだったモナか?」
再び座席から顔を出してモナーが尋ねる。だが、モララーは返事をすることなくすやすやと眠っている。
「あーあ、モララー待ちくたびれて寝ちゃったモナ」
そう言って、すぐにモナーも眠くなってきた。昨日は興奮して寝付けなかったからだろうか?
再び座りなおし、座席を最大限傾ける。駅に着くまで一眠りしよう。目が覚めたら、もう新幹線が待っているだろう。
モナーは目を閉じると、すぐに眠りに落ちた。他のクラスメイトも同じように眠っているとは、露とも知らず。
バスの列から2号車1台だけが外れ、そのまま国道から港の中へと消えていった・・・



【実験開始 残り40人】


138 :名無しさん@├\├\廾□`/:2006/04/26(水) 17:56:46 ID:99UweG0B
>>133
もう飽きた?

139 :名無しさん@├\├\廾□`/:2006/05/01(月) 22:43:02 ID:PbvIgyWC
保守

140 :名無しさん@├\├\廾□`/:2006/05/02(火) 21:09:34 ID:Vvd5WEF8
飽きたようです

141 :名無しさん@├\├\廾□`/:2006/06/11(日) 08:33:08 ID:ID8J3cvE



142 :名無しさん@├\├\廾□`/:2006/06/30(金) 06:39:36 ID:TU/h8btd
>>112から
無機質な物体を掴んだ右手はひんやりとした感覚を脳へと送信している。タカラギコ【男子11番】がうつろな双眸をじぃ【女子9番】へと向けている。
「ご、ごめん……じぃ」
震えるその声に何もしてあげられず、頼られながら応えられない事が辛かった。
仮眠中のタカラギコが突然の頭痛と全身の震えを訴えてからは森林公園の南東部(G−4)に留まっていた。
おそらくは親友ありす(女子2番)とフサギコ(男子18番)を失った精神的ショックと血液への恐怖がじわじわとタカラギコを蝕んでいるのだろう。
反面、誰一人として仲間が死んでいない、じぃ(というか仲間と言う仲間が居ないんだが)。妙な表現だが、申し訳ない気持ちにすらなった。
つい先ほどに遭遇したカウガール(女子4番)の壮絶な悶死。その凄惨さに、一歩間違えば奈落の底へ落とされる現実を改めて痛感した。
現在地はありす(女子2番)の亡骸がある場所にごく近い。彼女がタカラギコを冥府へ誘っている、というのは考え過ぎだろうけれど。
タカラギコに掛けた上着がずれていたので、それを手で掛け直した。この時期の時間帯にシャツ一枚と言うのはかなりきつい物があった。
「……寒くはないんですか?」
じぃの心中を察したようなタイミングで、タカラギコが訊いてきた。
「別にぃ。普段、結構薄着で生活してるし、さ」
痩せ我慢で返し、再びレミントンを手に取る。それから東、密集した草木の先を見詰めた。さすがに透かして見る事はできなかった。
数時間前、このすぐ北を生徒が目にも留まらぬ速さ駆け抜けていった事を思い出した。正体の確認は間に合わなかった。
尋常でないあの俊足、忍者(男子15番)と判断した。
直後、この北東で銃撃音が数回響いた。足を向けるのは懸命ではなかった。少なくとも片方は確実にやる気で、発見されれば今のタカラギコが逃げきれるはずがない。  
「……気になりますか?」
先ほどと同じ調子でタカラギコが訊いてきた。当然、銃撃戦の跡の事だ。じぃは靴底を動かして土を均す。深く思考する際の癖だ。
じぃは立ったまま視線をを上げ、タカラギコに答えた。
「知らない奴の死体が転がってるだけでしょ」
「僕は、気になります」
何とタカラギコはふら付いたまま、その背を木に擦るようにして立ち上がり始めた。慌てて止めようとしたじぃだが、突き出された手に制止された。
立ち上がったタカラギコは苦しげに肩を揺らしている。 
「無理しないでよ、タカラ」
「じぃもですよ」
タカラギコがおぼつかない手でディパックを掴み上げ、じぃを見た。
「さっきの銃の人がこっちに来ないか心配なのでしょう」
「それは……」
「寄り掛かる為に一緒に行動しているんじゃないんです、僕。みんなで脱出する為に、一緒に動いてるんです」
睨むようにじぃを見据えている。困ったじぃはとにかく、タカラギコの肩を掴んで座らせようと試みた。しかし彼の抵抗が押し切れない。タカラギコの意思の強さに圧されていた。
「……うん、わかった。タカラ、わかったからさ…」
とりあえずはこの場から離れられればいいのだろう。そう思ったじぃはタカラギコの促しに承知した。――それこそが命運を左右すると、知るはずもなく。

143 :名無しさん@├\├\廾□`/:2006/06/30(金) 06:41:22 ID:TU/h8btd
「……何か聞こえませんでしたか?」
急に声を潜め、タカラギコが神妙な顔付きになった。不覚にも聴覚に意識を集中させていなかったじぃは、首を横に振ると茂みの向こうへと首をやる。
見慣れた制服が見えた。あれは――女子だろうか?
「誰?」
その声に被さって轟音が林に反響する。タカラギコの頭部がありえない速度で傾いたのは、それとほぼ同時だった。
水風船が破裂するような、妙な音が耳元で響いた。
薙ぎ倒されるようにタカラギコの体が地面に叩き付けられ、遅れて何だかわからない半固体物質が数個、地面で砕けた。
例えるなら重量のある豆腐の落下音だった。生存本能か、はたまた脊髄反射か。
じぃは腕を轟音の源へと向けると、レミントンの引き金を絞り抜いた。手元で小爆発が生じ、反動で腕が跳ね上がる。
驚くほどに脳は冷静さを保っていた。しぃ(女子8番)を視界に捉えた時にはタカラギコの生死考察は完了していた。
喪失感と、遅れて込み上げてきた憤慨を感じる。
「しぃ!!!」
何故しぃが。何時も学校では可愛い顔して澄ましていて、殺伐さとは無縁だった彼女が。疑問ではあるが、この場において最早それは関係なかった。
殺し合いなど望まない、体調不良で無抵抗なタカラギコを躊躇なく狙撃し、非情にも屠った。
問答無用だった。今のしぃはじぃにとって一線を越えた許さざる存在だった。
ご挨拶代わりに散弾をもう一撃放つ。しぃの体が茂みの陰に沈み、草木を掻き分ける音が近付いてくる。
垣間見えた表情は血の気は無く冷徹で、到底中学生のそれではなかった。

 ――何なの。あいつ

しぃは殺戮機械のように淡々と事に及ぶ。S&W M945が咆える度に、間近な木の幹が抉り取られる。その正確な射撃を前に、さすがのじぃも不利を察した。
しぃは只者ではない、それは確実だった。散弾の装填は練習済みだが、付け焼刃でどうにかなるだろうか。
「……無理かな?」
格の違いは歴然だった。足を止めれば直ちにタカラギコと枕を並べる事となるが、止めねばしぃに命中させられない。
交戦する以上、選択肢のほぼ全てに死が結果として存在するように思えた。
 ――それも上等、と相打ちを覚悟する。身を翻した時、タカラギコの声が脳裏に甦った。
『このギリギリの状況で僕がどうしてもやりたいって思った事なんです。』
タカラギコはこの殺戮ゲームからの仲間との生還を願っていた。そのタカラギコの思いが易々と踏みにじられた。
心の中で何らかの精神を留めていたネジが弾け飛んだ。
―――もう抑えが利かない
牽制の一撃を放つと、シェルを装填しながらの全力疾走を開始する。装填完了するなりもう一撃。ここからは一か八かだ。
瞬発力に劣る分、力一杯大地を踏み付けて推進力を得る。じぃの命懸けの猛突撃が開始された。

144 :名無しさん@├\├\廾□`/:2006/06/30(金) 06:42:26 ID:TU/h8btd
新たな”ゲームに乗った生徒”を前に下唇を軽く噛む。

「しぃぃー!!」
声を張り上げるも、再度に身を隠したしぃからの返答はない。矯めつ眇めつ、あくまで冷静に勝利を掴もうと息を潜めているのだろう。
代わりに右手側から爆音が上がり、粉土がじぃを襲った。
「くぅっ・・!」
それでじぃはバランスを崩し、傍の木へと半身を打ち付ける。
途端、頬をナイフが掠め、それでじぃの中の”何か”が覚醒した。眼光がさながら獲物を狙う肉食の獣のようにギラリと鋭い輝きを放った。

 やらなきゃ、やられる!

全身に熱く滾る血液の流れを感じる。放出されたアドレナリンが高揚感を与え、瞬く間に引き締まった筋肉が大地を蹴った。
「うぁああぁ!!」
レミントンのポンプスライドをしながら、コマのように身を翻して屈み込む。耳元を掠めた銃弾にも表情一つ変えず、銃声の方向へ照準を移して発砲した。
木の枝が小さな炎を瞬かせながら地面へと落ちる。
しぃは二丁の拳銃を持っているようだった。
「……タカラァ!!」 
脳裏に浮かぶタカラギコの笑顔を振り払うかのように怒号を発する。予備弾を左手の薬指と小指で器用にフィンガーパームしたまま、木を背にして森の奥へと二発撃ち込む。
「キャッ!」
しぃの小さな悲鳴が届き、じぃは素早く再装填を終え、身を隠した木から飛び出す。

「しぃぃー!!!」
絶叫するじぃに迫ったナイフを、首を傾げてかわす。更に足を踏み込んだその時、ふくらはぎの筋肉が唐突に攣り、じぃはバランスを崩して膝から倒れ込んだ。
肉体的な限界が、遂に現れたのだ。狙いすましたように木陰からタカラギコを一撃で葬ったS&W M945の銃口が顔を出す。

 あたしは、まだやれる! 

渾身の力を振り絞り、身を起こすと共に健脚を飛ばす。刹那、またも全身に活力が漲り、一瞬にして本能が”反撃”のシグナルを発した。
脇の立ち木を力強く蹴り、丁度三角飛びの要領で、襲い来る銃弾から逃れる。
器用に空中でバランスを整え、着地音に発砲音を重ねるまでの一連の動きは、正に常軌を逸していたと言える。
数メートル先で気味の悪い液体音が響いた。続いてしぃの倒れる音が響く。
「……ぅ…あぁ……あ…しが…」
虚ろなするしぃの視線と、絶望の色を含んだその声。しぃを見てみると右足を大腿の部分から失っていた。が、じぃもまた、限界を迎えていた。
器官という器官が悲鳴を上げ、覚醒から開放された体は、指先に至るまで絶えず痙攣を行い始める。嘔吐勘と、強烈な眩暈が重複してじぃを襲っていた。

 ……あたし……は……。

意識が断ち切られそうになるのを堪え、朦朧とした感覚の中で、それでもじぃはしぃがいるであろう前方を睨みつける。
ぼやけた視界の中で、しぃの右腕と自分の視線が合ったのがわかった。
直後、じぃの頭部は弾け飛び、うつ伏せに崩れ落ちた。

タカラギコ(男子11番)
じぃ(女子9番)
しぃにより射殺
AM5:30 【2名退場・残り21人】

145 :名無しさん@├\├\廾□`/:2006/06/30(金) 08:13:23 ID:3J/7Yf/q
残念ながらすでに終了しています。

146 :名無しさん@├\├\廾□`/:2006/06/30(金) 22:40:48 ID:TU/h8btd
とある商社ビルの地下。反政府組織の拠点は、そこに設けられている。
地下に日の光は差し込まず、黄ばんだ蛍光灯の明かりだけが室内を照らしている。
個室の一つ、デスクに腰掛けたニダー(反政府組織構成員)は資料を手にしながら沈んだ表情で首を軽く振った。
憂鬱の種と言えば、現在戦闘真っ最中の”プログラム”だ。
ジャンヌ(構成員)の妹のルルカ(女子20番)がそれに巻き込まれている。
情報を手にした以上、プログラムへの乱入、またはそれの妨害を訴えたジャンヌだったが、
上層部は煮え切らない返答を返すだけで昼前に差し掛かる今もなお悪戯に時間は過ぎていた。
ジャンヌは最早プログラム会場への単独潜入も辞さない腹づもりのようでそれを口走ったりもしたが、ニダーはそれをどうにか抑えてこの場に留まらせてた。
気持ちはわかるが、ジャンヌの考えている行動にはリスクが大き過ぎた。正義感と銃器だけでどうにかできるほどプログラムはやわなプランではない。
ジャンヌならば賛同して協力するメンバーもいるかもしれないが、それはすなわち皆を”身内の事情”に巻き込む事とも言えた。
そこを認識しているからこそ、ジャンヌは単独行動という言葉を一度は口にしたのだ。
「兄さん?」
振り向くと、ニダーの弟のニダダー(仮構成員)が心配そうにこちらを見下ろしていた。
「お、ニダダーか。どうしたニダ?」
「大丈夫? 根詰め過ぎると……これからが大変なんでしょ?」
兄が反政府組織に身を投じた事で、弟・ニダダーもまた生活を投げ打って兄と同じ道を選んだ。気遣う声もどこか無理の色を感じ、ニダーは胸に痛みを覚えた。
「そうだったニダ。で、モネー達のほうはどうしているニダ?」
ニダダーは苦笑いしてから、右を向いて壁のほうをじっと見詰めた。仲間がいる部屋の方向だ。
「ん、一応順調だけどテナーさんがね……。そろそろ向こうに行かない?」
「そうニダね」
ニダダーの口調からすると、あまり隣の空気は良くないらしい。
幾分気を楽にしたニダーは椅子から立ち上がる。押し潰した椅子カバー内のスポンジの感触が多少気持ち悪かったが、それはともかく。

「まだかよモネー? こうしてる間にもプログラムは……」
大柄な青年――テナー(構成員)が、せっかちな様子で口を開く。その目は、パソコン机に腰掛けている女性へと釘付けになっている。
「急かすなら手伝ってくれればいいのに」
視線が煩わしいのか、テナーを追い払うように後ろ手で右手を振ってみせる。
その間にも業務用デスクトップパソコンの黒いディスプレイには次々と白い文字列が並べられていった。
「俺はドンパチ専門なんだよ、適材適所っテナー! ハッキング系の作業はお前に任すしか……」
「アンタモネー…わかってるなら邪魔しないで」
一瞥すらせず、端末を叩く女性――モネー(構成員)冷たく言い放った。
モネーの両手はピアノ演奏よろしくキーボードの上を軽やかに滑り、カタカタと音を打ち出している。
キーボードの手前に置いたマグカップから立つ湯気が、陽炎のようにゆっくりと揺れた。
二人の様子を横目に、ニダーは部屋の奥で椅子に腰掛けているジャンヌのほうへと歩いていく。それに気付いたジャンヌが、ニダーを見上げた。
「ジャンヌ、落ち着いたニダか?」
ジャンヌが強張っていた表情を少し緩め、それからしっかりとニダーを見据え直した。強い意志がこもっているのが見て取れた。
「ニダーさん。組織の意向どうこうはともかく、このプログラムの進行を指を咥えて見ている事……私にはとても…」
ニダーは、改めてジャンヌの強い覚悟を確認した。
ジャンヌはこれまでにニダーができなかった事を行おうとしている。
知っていたならば、そして成功の可能性があるならばしなければいけなかったであろう事――プログラム会場への乱入及びその破壊。
「ウリも、ジャンヌと正義を貫きに行くニダ」

147 :名無しさん@├\├\廾□`/:2006/06/30(金) 22:41:29 ID:TU/h8btd
「みんな、来て」
よく通る声でモネーが呼びかけ、ニダー達はパソコンの前へと駆け寄った。
皆のほうを一度振り返り、それからニダダーに部屋の鍵をかけるように指で支持してからモネーは再びパソコンへと手を伸ばした。
モネーの白い指が規則的なリズムでキーを叩く。時折タンという小気味良い音が鳴り、キーボード上の合唱にアクセントを添えていた。
「ダウンロード開始ですね」
ジャンヌが画面を見詰めながら呟き、モネーは懐から取り出したシルクのハンカチで額の汗を拭う。
政府データ関係のセキュリティは非常に堅いものだった。
時間はかかったものの、そこへ潜り込んだ事で改めてニダーはモネーの実力に感心した。
「よし、俺はAKのチェックをし直してくるっテナー」
「あぁ、マシンガンですか。……テナーさん、本当にいいんですか? この戦いの後、もうここには戻れないかもしれないんですよ?……」
部屋を出ようとしたテナーに、ジャンヌが珍しく弱い声音で訊く。やはり自分が戦いに巻き込むという気持ちがあるのだろう。
テナーは向き直り、腹の底から力強い声を押し出した。
「…俺はやるって決めたんだっテナー…。 とことんいこう、ジャンヌ!」
「耳が痛いから騒がないで」
机に並べた栄養剤を見比べながら、モネーがテナーのほうを見ず辛らつに呟く。テナーは眉をしかめつつモネーの背中に向けて舌を打った。

148 :名無しさん@├\├\廾□`/:2006/06/30(金) 23:38:07 ID:TU/h8btd
もう立ち上がる力もなかった。右手に握られているデザートイーグルを向ける気も失っていた。
左足に最後の力を込め、体を転がせて仰向いた。眼前に立つ女子生徒に対し、しぃ(女子8番)は、力なく微笑んでみせた。

梢の先から場を照らす朝日をバックに、ルルカ(女子20番)がしぃにS&W M945(元は自分の武器だ)を向ける様が目に入った。
ルルカの表情は逆光だった上、霞んでしまった視界の中でははっきりとは窺えない。けれど、震える指先が何より彼女の心を代弁していた。
ルルカの指の震えが止まり、ほんの微かながら銃口が下がったのが確認できた。林の中でルルカの嘆息が響く。
嘆息の意味は察する事ができなかったが、しぃはそれに自嘲の含みを感じていた。決して根拠はなかったけれど。

「大丈夫? 誰に…やられたの?」
「…ほら、そこに、いるでしょ…? …じぃ。」
ルルカの質問に対し、強がりではなく自然とそんな言葉を出した。ルルカの表情に変化はない。ただ、ボリュームの有るロングヘアが揺れている。
「どうして…? どうして私なんかのことを気遣うの?」
ルルカの言葉はしぃの思考回路を麻痺させた。クラスメートを殺し、自分だけが生き残ろうとする自分にどうしてそんな言葉を。
口中に鉄臭さを感じて吐き捨てる。血は、失われた右足の断面から生まれた赤黒い血だまりに混じり、土に染み込んでいった。
大腿部の激しい脈動が気持ち悪かったが、言葉を続けた。

「私の姉は、二年、前に…この プログラム で 死んだ。」
不意にしぃが目線を地面へと向け、告白を始める。激しい息切れで言葉が途切れ途切れとなる。
「私は、死んだ姉 の無念を 晴らした かった。姉と 比較さ れるの は嫌だった。」
しぃの姉。その事は反政府組織の姉からも聞いていた。
二年前のプログラムで死んだと聞いたが、それこそがしぃがやる気になった背景だったのである。
しぃは首を傾け、口から零れる血を頬へと伝わせる。過度の失血により感覚は曖昧となり、血を吐き出す力も失われつつあった。
それでもしぃは、ルルカとの会話を最後まで続ける。
「ルルカは温室育ちだから、わかんないかも。」
しぃを皮肉ったわけではなく、逆に自らの運命を唾棄するように呟いた。
境遇は対照的であれ、ルルカもまた家庭に対してある種の葛藤を抱いて育ってきた。
過保護な政府の犬となった親に縛られ、都合の良い子供として自らを飾り、偽った日々。
それは、もう少しルルカが大人になっていれば愛情として理解したのかもしれない。
けれど当時のルルカにとって、それは偽りようのないストレスだった。
姉もそんな両親に嫌気が差し、家を飛び出し反政府組織に身を投じていた。
自己の深層を触れられる事は、とても不愉快で、辛い。
それだけにルルカが突いている部分はしぃにとって最も触れられたくない部分だと重々承知していた。

―――もう苦しい……撃って

ルルカはしぃの要望に無言で頷いて返答する。銃口をしぃの額へと合わせ――数秒そうした後、それを胸元へと移した。
しぃは安らかな表情のまま、既に覚めぬ事のない眠りへと就いていた。

胸元へと放たれた銃弾は、生物の急所、心臓を破壊する。残響が消えた後には、数十分前の喧騒とは裏腹な深い静寂が場を支配していた。
しぃの眠りを妨げぬ配慮か、ルルカはタカラギコ、じぃ等の亡骸に手を合わせると、彼等の武器を拾い上げると、足音を立てぬよう立ち去って行った。


しぃ(女子8番)
ルルカにより射殺
AM5:52 【1名退場・残り20人】

149 :名無しさん@├\├\廾□`/:2006/07/01(土) 00:13:41 ID:dY18xjEg
>>146-148
ここはあなたのオナニスレではありません。感想議論スレに移動してください。

150 :名無しさん@├\├\廾□`/:2006/07/02(日) 20:35:48 ID:5u+wO9qV
したらば(男子9番)は、狼狽した表情で窮鼠のように茂みの中でその身を縮こまらせていた。
「何で、ありすが……何で殺し合う必要があるにょら……!」
ダマレコゾウ(男子12番)に向けて発砲したH&K MP5A5に銃弾を装填しながら苛立った声でしたらばが呟く。
したらばは仲間であるモララーや、ありすの親友であるタカラギコを探すべく、移動をするつもりだった。
だが、発砲音を嗅ぎ付けてきたダマレコゾウに襲撃を受け、当時唯一の仲間であったありすを喪ってしまった。
デザートイーグルの弾が胸部に命中したようで、血飛沫が舞うのが見えたかと思うや否やありすが倒れ込んだ。
問題はその後だ。何故、自分はダマレコゾウを仕留めなかったのか。
いや、それ以前に何故、フサギコやえー、しぃと言った、「やる気満々」の生徒達を撃てなかったのだろうか。
もしあの時、ダマレコゾウを撃っていればありすは死なずとも済んだかもしれない。
それだけではない。これまでに死亡したクラスメート達の中に、自分が仕留めなかったえーやしぃの犠牲になった生徒達がいるかもしれない。
「みなさーん、おはようございまーす」
ギコ教授(担当教官)の声が突然響き、虚を突かれたしたらばは足を縺れさせて尻餅をついた。
慌てて腕時計の時刻を確認する。六時を八秒過ぎたところだった。
「それではここまでの追加死亡者を発表しまーす。」
 一瞬息が詰まり、動悸が激しくなる。良からぬ想像が脳裏でぐるぐると回っていた。
 ――アヒャは、モララー達は無事だろうか?
「男子6番、コリンズ君、男子11番タカラギコ君、男子15番、激しく忍者君……」
それを耳にした途端、したらばの両肩にずっしりと重い感覚が圧し掛かった。
タカラギコ。それはありすの親友で彼女が死の直前まで再会を欲していた生徒の名であった。
ありすへのせめてもの罪滅ぼしとして、タカラギコだけでも無事に生還させようと考えていた矢先の放送である。
「ふぁ〜ぁ・・・次は女子です。女子8番しぃ、女子9番じぃ、女子10番ちびフサ、女子18番モナカ、はい以上です。」
ギコ教授の放送が棒読みになっているのが分かった。相当面倒なのだろう。
したらばはその態度が、死者を軽んじて見ているように思えた。平常心が怒りに押しつぶされそうになるのを抑え、バッグから地図をペンを取り出した。


「午前7時からE−10,午前3時からH−2、午前5時にはE−8です。じゃ、がんばってください。」
 民家近くの図書館の中(G−9)、リル子(女子19番)は朝の放送を聞き、地図に印をつけた。
「あーあと前回よりもペース上がったんで強制ハンターはしません。またペース下がったら誰かが選ばれることになるのでね。
 あと、一人しか殺せなかったヘタレなジエン君は処刑しちゃいます。じゃこれで放送尾張」
ギコ教授のやる気の無い放送が終わる。しかし、彼女は表情一つ変えず近くに落ちていた拳銃を拾い上げた。
マガジンが抜かれている。新しいマガジンを入れようとしてバッグの中を見てみても、中には入っていない。
彼女は取り出しやすいようポケットの中にしまっておいた非常用のマガジンを差し込んだ。

外で断末魔と不快な液体音木霊した。


奇跡的に一瞬留まった意識は、図書館内にリル子の存在を確認させた。小柄な体が爆発により半分以上が失われる。
勢い良く噴出する鮮血は、白い図書館の外壁を深紅に染めた。目を見開き、体の半分を失ったジエンは既に絶命していた。
痛感が脳に到達する前の事で、痛みすら感じる事はなかった。


男子8番  ジサクジエン
ノルマ未達成により処刑
AM 6:02 【残り19人】

151 :名無しさん@├\├\廾□`/:2006/07/02(日) 20:45:23 ID:5u+wO9qV
時刻は既に午前六時を回っている。ワンボックスカーの助手席に腰掛けているモネー(反政府組織構成員)は、手首を返してシックな雰囲気の腕時計を一瞥した。
遅れ過ぎた。思いながら目を軽く伏せて首をゆっくりと振る。運転席のジャンヌ(構成員)がこちらを窺う素振りを見せたので、小さく右手を上げて”問題ない”と返答した。
後部座席では物騒にもAK74を二丁脇に抱えたテナー(構成員)と、皮の袋を足元に置いているニダー(構成員)の姿がある。
テナーは苛立だしく太股を上下に揺らし、びんぼう揺すりに似た仕草を繰り返していた。
モネーら反政府組織の面々は現在進行中のプログラムを破壊する為、山側のスカイラインから一路会場へと向かっていた。
突入用の武器や銃器を積んだカスタムワンボックスカーが唸りを上げ、山道を滑るように走っていく。
「ジャンヌ、焦るなニダ」
ニダーの声が届いた。それでジャンヌのほうを見ると、ハンドルを握る両手が小刻みに震えているのがわかった。
スピードメーターを見ると下り坂にも関わらず、更に加速を続けていた。
ジャンヌはニダーの助言に応じたようで、大きく息を吐いてからアクセルペダルに乗せた足を浮かせるのが見えた。強張らせていた肩もゆっくりと沈む。
「……すいません、ニダーさん」
「到着までに事故でお陀仏は、頂けないニダよ」
礼を述べるジャンヌに対し、ニダーが諭すように返した。妹であるルルカ(女子20番)が巻き込まれている以上、ジャンヌが逸るのは当然の事だろう。
成すべき事を確実に遂げる為に心を抑制することが重要なのだ。ましてや弟のニダダー(仮構成員)が待っている以上、それこそ死ねるはずがない。 
モネーは膝に乗せたノート型パソコンから手を放し、ジャンヌの奥、ガラス越しの外を眺めた。金色の草をまとう斜面と静かな闇が、穏やかに海原を見下ろしている。
もう一度車の外へと視線を移動させた。ゆったりと広がった螺旋を描く白いガードレールの帯が、延々と視界に映りこんでいる。
その中に赤いバイクを見付けると同時に、ジャンヌがブレーキをかけた。
ワンボックカーは速度を緩め、並走するバイクと共に停車した。
「あっ……」
そのナナハンバイクに跨る男性を確認するや否や、モネーは腰に差した自動拳銃FN M1910へと手を添える。危険信号は濃密な赤の点灯を繰り返していた。
ニダーは、バイクに跨っている男性と、車内から彼に拳銃を向けているモネーを交互に見詰めていた。
「モネー?」
運転席のジャンヌが困惑してモネーを見詰めたが、モネーは鋭い眼光で男性を見据えたまま小型自動拳銃FN M1910を下ろそうとはしない。
「ソラネーヨさん、どうしてここに来たんですか」
モネーが極めて冷たく声を投げかける。訝しげな目でモネーを睨むその男性は、ジャンヌ達と同じ組織のソラネーヨ(反政府組織幹部)だった。
「やっぱ、そういう事か」
ソラネーヨがモネーにそう返した。ニダーはわけがわからず、脇に腰掛けているテナーと顔を見合わせる。
テナーも困惑したようで眉をひそめていたが、すぐに座席から乗り出して口を開いた。
「なぁモネー、ソラネーヨさん。何がどうなってんだっテナー?」
「モネーはな……政府のスパイだ」
必要以上に溜めを作り、ソラネーヨが言い放った。それでニダーはモネーへと視線を戻し、ジャンヌ達の視線もモネーへと注がれる。
モネーは変わらずM1910をシラネーヨへと向けていた。
「アンタモネー」
モネーが一区切りして、白い指をトリガーに深く絡めながら続けた。
「政府とグルだったんですね。飼い犬が飼い主の悪友を噛み殺す前に、薬殺処分ですか?」
モネーの言葉には、静かながら深い怒りがこもっていた。それが芝居だとは、ニダーには到底思えなかった。 
「政府とグルだぁ?ハッ、ソラネーヨ。ジャンヌ達騙して政府んところ突き出すつもりだったんだろ? ガキが、俺の目の黒いうちはそうはいかねぇ」
元々口の悪いソラネーヨだったが、その口調を更に凶悪に歪めてモネーと罵倒を交差させ続けている。

152 :名無しさん@├\├\廾□`/:2006/07/02(日) 20:51:24 ID:5u+wO9qV
突然発生した非常事態に、ニダーは困窮しながら事態の収束に努めようと脳を回転させ始めた。
「ソラネーヨさん。モネーが政府のスパイだという証拠はどこからニダ?」
まずはその言葉が口をついて出た。妥当な発言だった。ソラネーヨはニダーやジャンヌ達よりも古く、組織発足当初からのメンバーだった。
記憶では嫁を政府に殺された事で組織に入ったという記憶がある。
ジャンヌ達が会場に乗り込もうとするのを上層部同様に制止し続けていたので、ニダー達はソラネーヨらには何も告げず組織を出たはずだった。
組織の上層部が政府と一部繋がっている部分があるだろう事を考えると、ソラネーヨの発言は疑わしく思える。
しかし一方のモネーも実家が政府側であり、スパイ疑惑は以前から数度持ち上がっていた。
ニダーにとって一番理想の結論は、ソラネーヨが単に勘違いをしており、モネーもソラネーヨも裏切り者ではない、というものだろう。
その願いも虚しく、ソラネーヨがジャンヌに一枚の紙を突き出してきた。
「ジャンヌ、ニダー。これ、見てみろ」
モネーから視線を外さぬままソラネーヨが言い、それに目を通したジャンヌの顔色が一変した。
テナーもまた体を窮屈そうに動かし、ジャンヌの背後から紙を覗き見る。ニダーは自らの気持ちが昂ぶるのを感じながら、訊いた。
「ジャンヌ、何て書いてあるニダ?」
ジャンヌは呆然とした様子で紙を眺めていたが、やがて口を開いた。僅かに声が震えていた。
「モネーの両親が、モネーが……スパイである事を明かしたという内容の文章です」
「そんな馬鹿な事!」
モネーがらしからぬ荒い声を上げ、銃を手にした右手を震わせた。真っ赤に蒸気させた顔は、なおもソラネーヨへと向けられている。
「な、モネー。もう芝居はやめろ。本部の場所が政府にバレた。それで向こうはモネーを差し出せば最悪の…まぁ、武力行使は避けると言っている。」
信じられなかった。しかし一枚の紙が全てを物語っている。紙に押されている拇印もおそらくは本物に相違ないはずだ。
特にショックを受けているらしいテナーは、口を半開きにしたまま打ちのめされた様子を見せていた。
「皆、口惜しいがここは一度引くしかない。会場に乗り込んだとこで討たれるのがオチだ。
 いや、その前にそこのガキに何されるかわからん。組織の幹部として、そんな狼藉見過ごないんだよ、俺は」
「騙されないで!」
モネーの強烈な一喝だった。おそらくはニダー達に疑われいるのがショックなのだろう。
芝居の可能性もあるのだがとにかく、モネーが目に涙を浮かべて叫んだ。
「私は裏切ってなんかいない。私達が描く新しい大東亜の為に、今の狂った世界を直すために、それが小さな事でも、組織に全霊を込めて尽くしてきた!」
「ソラネーヨ、モネー。な、本部の場所もお前がバラしたんだろ?」
その言葉にも、ソラネーヨはやってられないという感じで頭を掻き、気だるそうにそう返した。続いてニダーのほうへと顔を向け、声をかけてきた。
「ニダー、そろそろそのガキの銃を奪って拘束してくれよ? いつ撃たれるか……物騒でたまらん」 
ソラネーヨの口調は、普段の癖あるそれ以上に人をくった感じに聞こえた。どちらを信じるべきなのか。
ニダーの脳内で様々な考えが乱れ飛び、続いて過去の光景が浮かぶ。

153 :名無しさん@├\├\廾□`/:2006/07/02(日) 20:54:46 ID:5u+wO9qV
『この国が間違っているのなら、国にさえも拳を振るう』
あの時、自らに誓い、自らに掲げた決意。自分は今何をすべきか。結論は弾き出された。
「ソラネーヨさん。ここはこのまま行かせて欲しい。それで何かあった時は、ウリはこの命をもって責任をとるニダ」
「ニダーさん!」
ジャンヌがこちらへと驚愕の目を向けた。続いて他の三人の視線もニダーへと動く。皆の顔を見渡してから、続けた。
「これはもう、引けない戦いニダ。それだろう? ジャンヌ」
その発言に対し、ジャンヌがはっきりと頷いた。同時に横のテナーが景気良くニダーの背中を叩いてきた。加減を知らぬその張り手に、思わず咳き込む。
「そうだよな、ニダーさん! おいモネー! もしスパイだとしても、無理矢理一緒に戦わせてやるっテナー! 最後まで俺らは運命共同体だ」
「テナー……有難う」
モネーは目元を潤ませたまま、得意の悪態も吐かず素直に感謝の意を述べた。到底芝居には思えなかった。ニダーはモネーへと顔を向け、諭すように言った。
「モネー。ウリ達は信じている。一緒に戦うニダ」
「はい」
目元を拭い、モネーがはっきりと返答した。やはりモネーが裏切り者というのは何かの間違いなのだ。ニダーは確信した。
刹那、小さな舌打ちが耳に届き、ニダーは反射的にソラネーヨのほうを見た。
ソラネーヨが素早く体を左、後部座席のほうへと移動させようとしていた。
咄嗟にモネーがM1910を発砲したが、既にソラネーヨは車の側部、防弾ガラスの向こうへと移動している。
思うよりも先に、ニダーの体が動いていた。脇のノブを右手で掴み、スライド式のドアを開ける。
眼前、手榴弾のような物に手を掛けているソラネーヨの姿が現れた。
ニダーは、狼狽するソラネーヨの胸元に向けて渾身の蹴りを放った。ソラネーヨの手から手榴弾が転げ落ち、ソラネーヨの体が道路へと倒れ込む。
手榴弾は緩やかな下りカーブをのんびりと転がっていった。
「うわぁぁあ!」
後方からの排気音を聞きつけたソラネーヨが絶叫と共にそちらへと首を向ける。
次の瞬間、追い抜こうと横を通過してきたトラックがソラネーヨを撥ね、歪な衝撃音と共にソラネーヨがガードレールの向こうへと吹き飛んでいった。    
「あぁ……」
間接的にしろ人を、しかも同じ組織の人間を殺してしまった事でニダーの心は大きく動揺する。視界がぐらりと揺れ、酔いそうなほどに回り始めた。
「ニダーさん!」
ジャンヌ達の叫びが耳に届き、どうにか平常心を保ち続けようとするものの、ガードレールにプリントさえた血飛沫が、ニダーに拭いきれない罪悪感を与え続けていた。
ニダーが意識を振り戻したのは、派手な掃射音と共に車体が激しい揺れを見せたその瞬間だった。

ソラネーヨ(反政府組織幹部)
トラックにより轢殺
AM 6:20 【生徒外1名退場・残り19人】

154 :名無しさん@├\├\廾□`/:2006/07/02(日) 21:40:02 ID:5u+wO9qV
モララー(男子20番)達は一階のベランダ側から外の様子を窺っていた。ガレージの向こうへ視線を戻す。
「出よう」
極力音を立てずにガラス戸を開け、ガレージに出る。そこには一台の軽トラックが置いてあった。
「まず僕がトラックの陰から家の裏側に移動する」
そう言ってモララーはガラス戸の隙間から顔を出し、右に見える玄関先を確認する。
人がいないのを確認してからビルから出てトラックの陰に身を隠して再び周囲を見渡す。
「OK」
モララーが小さく手招きをして、それで1さん(男子2番)がガラス戸から半身を出したその時、玄関のほうにスカートを履いた人影がフェードインするのが見えた。
「戻れ」
叫びこそしなかったものの、早口でモララーが促す。それで1さんが手にしているS&W M19を玄関先に向けた。
刹那、轟音が響き、軽トラックの脇、モララーと1さんの間の地面にクレーターが出来る。
慌てて身を引っ込ませる1さん。続けて威嚇する為にガラス戸の陰から右手だけを出して数発発砲した。
「……誰だ?」
モララーが再び軽トラックの陰から玄関先を見ると、女子生徒が散弾銃のようなものを持って構えているのが見えた。
身を隠すのと同時に発砲音が数回。軽トラックのサイドミラーが砕け落ちてガラスの破片がモララーに降り注ぐ。
「今度は拳銃? でもスカートを履いていたみたいだけど、女子であぁまで上等に撃てるなんて普通じゃないよ!」
「だれか女装してるのかな?」
「レモナ、状況的に考えて女装なんて……」
「……1さん、レモナ」
考察を述べる二人を唐突にモララーが遮る。
「あの銃弾の跡を見ろ、等間隔で何て的確に……信じられないが撃ち慣れている」
「撃ち慣れているって?」
「だからそう言う事。どうにも物騒な奴がクラスに潜んでいたわけ。勘弁してくれよ……」
「あーもうっ!何なのよぉ!」
玄関先から飛び込んできたトーンの高い声でモララー達は顔を見合わせた。あまり面識はないものの、モララーはその特徴的なアクセントをしっかりと記憶している。
「ルルカか……」
玄関先で拳銃や散弾銃を構えているルルカ(女子20番)の姿を想像して、不可解な表情を見せるモララー。
ルルカは極めて細身の体だ。何故、あぁまで銃を正確に使いこなせるのだろう?モララーはそこに深い何かがあるであろう事を感じていた。
「声を掛けるべきか……」
だが、今度は逡巡する間もなくルルカの軽快な足音(モララー達にとってはどれだけ絶望的な足音だろう)が軽トラックのそばまで迫っていた。

155 :名無しさん@├\├\廾□`/:2006/07/02(日) 21:42:15 ID:5u+wO9qV
「待って!」
先に声を上げたのは1さんだった。一階のガラス戸の脇へ身を隠したままで聴覚を集中させる。
ルルカの足音が止んでいた。おそらくは軽トラックのフロント部に隠れたのだろう。
逆にモララーはナンバープレートの辺りに顔を寄せて様子を窺っている。
「何なんだよルルカ! 君は、一体……」
そもそも、先に銃撃を行ったのはルルカのほうだった。しかもモララー……いや、距離的に誰かはわからなかっただろう。
その存在を確認しただけで撃ってきたのだ。当然、1さんは『ルルカはやる気の人間』として認識して軽トラックの陰に毒気を含んだ言葉を送る。
「その声は、1さん? ごめんなさい、反射的に撃っちゃいました…。それに……」
「反射的にって? それに随分撃ち慣れてるみたいじゃ……」
「ルルカ、僕はモララーだ。1さん、それからレモナと兄者の4人でいる。武器を手放してくれれば部屋の中で話ができる」
1さんを遮ってモララーが軽トラックの前部へ声を掛けた。続けて1さんに言う。
「こんなとこで留まっていたら、皆危険だ。とりあえずは中に入るべきだろう」
ルルカが小さく唸るのが聞こえ、それから返答が返ってくる。
「その前に……質問してもいい? したらば君やモナー君は合流したんじゃないんですか?」
どうやらルルカはモララー達がやる気になっているかもしれないと思っているようだ。そう考えるのは1さんも一応理解はできた。
しかし、撃ってきたのはルルカのほうだ。『やる気なんじゃないのか?』と訊きたいのはこちらのほうだ。
1さんはそう思いながらもモララーに対応を任せて耳を傾ける。
「僕は分校で仲間と何のコンタクトもとっていない。だから合流できるはずもないんだ。モナーも合流どころか…亡骸すら確認できていない状況なんだ…。」
モナーの名前を出した瞬間、モララーの声のトーンがガクンと下がった。
「わかった。撃ってしまったのは心から謝ります。ごめんね!」
ルルカが返答するなり硬い物が地面を擦る音がして、ガラス戸から覗いた視界の先、
モララーのすぐ脇に散弾銃(レミントン)と拳銃二丁(DesertEagle 50A.E.、S&W M945 .45ACP)が入ったバッグが滑ってきた。
何故、これだけの武器を所持しているかは気になったが、今は詮索しないことにした。信じるのだ。とにかく。
「OK」
モララーが立ち上がり、それで1さんも顔を出す。軽トラックの脇にルルカが両手を上げたまま立っていた。 

156 :名無しさん@├\├\廾□`/:2006/07/02(日) 21:44:04 ID:5u+wO9qV
事務所のテーブルを囲んでモララーと1さん、そして向かいにルルカが腰掛ける。
流石兄者は見張りとしてS&W M19を片手に一階を忙しなく歩き回っている。
「じぃやタカラギコの死体目の当たりにした上に、その後しぃを撃ったのか。それでナーバスになっていたんだな」
「さっきは本当に動揺してたから……」
事情を知ったモララーと1さんが顔を見合わせ、続いてルルカが伏せていた顔を上げた。
「銃の扱いといい、妙な使命感といい、ルルカには何かあるの?」
それでルルカはテーブルに置かれていた筆談用のメモ用紙に手を伸ばし、それにペンを走らせて再びテーブルの中央へ戻す。こう書かれてあった。
『首輪には盗聴機が付いてるから話の内容には注意ね』
『付いてる?』
横から割って入った兄者が、メモ用紙にそう短く書き殴りルルカへ放る。兄者が書かずともモララーも同様の返答をしただろう、そう思った。
確かに兄者やモララーも盗聴の可能性は予想していた。だからこそ重要な会話は筆談しているのである。
しかしルルカは、盗聴器が『付いてる』と断定系で書いている。この確信は何なのだろう?
「もしかして、策あり?」
1さんが腰掛けたままで身を乗り出してルルカへ訊いた。筆談にするべき言葉だったが、今の言葉くらいならば大丈夫だろうと思いモララーも注意はしなかった。
そう、この時点ではその発言による問題はなかったのだが。それを見てから1さんは口に手を当てて考える。
横目に映るモララーも同様に考え込んでいた。
ルルカは右手で再度ペンを走らせる。さすがにこの内容には皆驚きを隠せずに見開いた目をルルカに向けた。
ルルカの姉が反政府組織の人間である事、両親が政府の重役であること、やがてルルカが『戦う為の拳』を求めて姉に政府との戦い方を教わるようになった事。
自分がモララー達との馬鹿話に日々を費やしている時に、ルルカは格闘術や銃器の扱いに放課後のほとんどの時間を費やしていたのだ。
ルルカは政府と何らかの形で戦うつもりだったのだ。1さんは自ら過酷な生き方を選んだ『ルルカ』という女性に言いようのない脅威を感じていた。
多かれ少なかれモララーと流石兄者もそう思ったに違いない。
問題は最後の行だ。
最後の行――そこには姉が自分達を助けに来るであろう事が説明されていた。
これは大きな、とても大きな希望だった。

157 :名無しさん@├\├\廾□`/:2006/07/02(日) 21:45:19 ID:5u+wO9qV
「やってやろうよ!」
1さんは力強く言い放つ。次の瞬間、モララーと兄者が血相を変え1さんを取り押さえて口を塞いだ。

 あ、そうか。今の台詞、話の流れ的におかしかったたよね!

1さんは自らが犯したミスに気付き、拝むように両手を合わせて謝罪の意を示す。
モララーは「ま、時間はあるんだしな。ゆっくり考えよう。」と上辺の脱出策議論を続けながらメモ用紙にペンを走らせた。 
そこには『ドンマイ。みんなの命もかかってるんだ、忘れないようにな』と書かれていた。改めて自分のミスを反省し、今後失策がないように得た情報を頭に叩き込む。
苦笑顔のモララーに頷き、それから心配そうに見詰めるルルカを見た。生きてここから出られる。
当然その先に以前と同じ平穏な日常があるはずはないが、ここにいる仲間達と共に歩める未来が存在するというだけで充分な希望だった。
迷いは微塵はない。方法は他にないのだ。ならば乗る。殺し合いゲームには乗らないが、政府相手のサバイバルゲームなら上等だ。
プログラムに巻き込まれた1さんにとっては願ってもない展開がそこに出現した。

AM 6:25 【残り19人】

158 :名無しさん@├\├\廾□`/:2006/07/02(日) 21:48:04 ID:5u+wO9qV
テナー(反政府組織構成員)が我に返った時には、既にジャンヌ(構成員)の横に見えるサイドミラー内に新たな車両が映りこんでいた。
刹那、その車両より乗り出した黒い影からフラッシュと共に激発音が鳴り響く。
ようやく車が”銃撃を受けた”事に気付き、ニダー(構成員)の膝を跨いで右側の窓から半身を乗り出す。
「おどらぁ!」
テナーは威圧するように喉から怒号を放ち、AK74の引き金を力一杯に絞った。
それが起爆スイッチだったかのように、後方から迫る黒塗りの車両のボンネットが爆炎を上げ、片輪を浮かせながら脇のガードレールへと体を差し込んでいった。
「何だっテナー、こいつら!」
駆動音を耳にしながら、テナーは叫んだ。これはまさか――組織が政府に自分達を”売った”という事なのだろうか。考えたくはなかったがしかし――
「警察か、削除人か、それとも……」
テナーと席を交替しながらニダーが言った。いずれにしても、状況はこの上なく最悪のようだ。
「来たわ、後方に三台。黒塗りベンツ……政府の車ね」
「ベンツで襲撃とは豪勢な奴らだ」
ノート型パソコンを両膝で維持しながらモネー(構成員)が背後を窺い、ジャンヌはハンドルを握りつつ毒づいた。
続いて激しい掃射音が幾重にも響き、リアガラスがガチガチッと耳障りな騒音を奏でる。いかに防弾ガラスとは言え、被弾を続ければもたないだろう。
「テナー、撃って!」
ジャンヌの声と同時に天井部のサンシェードが開き、テナーは待ってましたと二丁のAK74を手にそこから身を乗り出す。
モネーの言うとおり、背後から迫る黒塗りベンツの集団が見えた。
「景気良くやってやるっテナー。遠慮なく受け取りやがれ!」
絶叫一番、歯を食い縛って両腕のAK74を連射した。その強烈な振動が腕に満遍なく伝わり、耳元では激発音が弾ける。
最もガードレール寄りを走るベンツの助手席からスーツ姿の男が道路へと転がり落ちるのが見え、それを新たに出現したベンツが弾き飛ばしていった。
「あいつ等、おかまいなしか!」
激しい怒りが込み上げ、テナーは更にAKの銃撃をベンツ集団へと散らす。猛風に殴られる頬がひりひりと痛むが、気にしてはいられない。
ちらりと車内を覗き見ると、ニダーが窓から手榴弾を放っていた。
それはアスファルト上の石で跳ね、ベンツの一台、ボンネット上に乗り上げた瞬間爆風へと昇華する。
車は激しくスピンを起こし、炎上しながら後続のベンツをも巻き込んでいった。
「すげー! ニダーさん、何気にプロかよ?」
「テナー、安心しないで。まだ来るはずよ。ジャンヌさん、対向車に注意して右に寄って下さい」
モネーは助手席から周囲に目を配りつつ、パソコンを操って的確な指示を出し続けていた。
その言葉通り、転倒したベンツの間を縫って、視界に次々と新手が現れた。一旦サンシェードを潜り、鞄から換えのマガジンを取り出して装填する。
その間はニダーの手榴弾攻撃でしのぎ、装填するなりテナーは体を跳ね上げ銃撃を再開する。
瞬間、痛みが跳ね、肩口から零れた鮮血を強烈な海風がさらっていく。既にジャンヌたちの搭乗する車は相当数の銃弾を受けていた。
タイヤに命中すればこちらも一たまりもないだろう。

159 :名無しさん@├\├\廾□`/:2006/07/02(日) 21:49:41 ID:5u+wO9qV
「くそったれ!」
マズルフラッシュの向こうで転倒するベンツを睨み付けながら、テナーは咆哮を上げた。
遠心力に抗いながら、がむしゃらに二丁のAK74を掴み、掃射、掃射、絶えず掃射。
「手前ら! 覚悟はできてんだろ!」
痺れる手首に力を込め、右へ左へと銃撃を降り注がせる。
「テナー、大丈夫!?」
「キリがないっテナー! 何台沈めたら……」
「アッ!」
突然助手席からモネーの短い悲鳴が上がった。らしからぬ叫びだなと疑問を覚えたが、確認の暇もなくAK74の銃弾をばらまき続ける。
「モネー!」
テナーがマガジン交換の為に体を沈めたのと、ニダーが叫んだのは同時だった。反射的に助手席のモネーへと視線を移す。
身を乗り出すというより投げ出す感じで窓の外へ上体を傾がせるモネーの姿が目に入った。白い首筋が真っ赤な液体で染まっている。
背筋に悪寒、脳裏に最悪の可能性。テナーは口を開き掛けたが、それよりも早く――
「モネー!嫌ぁっ!!」
痛みのこもったジャンヌの叫びが、テナーにモネーの死を知らしめさせた。
反りは合わなかったけれど、同じ志を掲げた運命共同体が、今、戦いの中で命を落としたのだ。
熱いものが込み上げてくる。もうリミッターは外れていた。グリップを握る手に力を込め、再度体をサンシェードの上へと乗り出した。
「手前ら、どれだけのAAの未来を」
そこからは呆気なかった。首筋に衝撃が跳ね、驚きで目を見開いた直後、視界の中心に滑稽なほど拡大された銃弾が飛び込んでくる。
続いて襲った、強風を凌駕する激しい横揺れと共に、テナーの意識はブラックアウトした。
直後の急ブレーキ音、何らかのフェンスに車が衝突した際の衝撃。それらのいずれも感知する事なく、テナーは意識を永遠に手放した。

モネー(反政府組織構成員)
政府の手により射殺
テナー(反政府組織構成員)
政府の手により射殺
【生徒外2名退場・残り19人】

160 :名無しさん@├\├\廾□`/:2006/07/02(日) 21:54:39 ID:5u+wO9qV
断崖に光を遮られた海岸に脱落したワンボックカーは、横転したままタイヤを空転させている。
全身の激痛に堪えながら、ジャンヌ(反政府組織構成員)はゆっくりと瞼を開けた。
車は運転席が上を向くようにして砂浜へと突っ込んでおり、助手席側に転がったジャンヌの下敷きとなったモネーの亡骸の感触が背中にあった。
どうやら政府連中と思われるあのベンツ集団の銃撃でタイヤを撃ち抜かれ、そのまま崖から車ごと転落したようだった。
無理矢理体を起こし、右の後部座席を見る。目が霞んでよく見えないが、誰かが座席の中で倒れ込んでいるのが見えた。
「くっ……ニダーさん、テナー……」
「ジャンヌ……」
ジャンヌの呼び掛けにか脆弱な声で呼応したのは、ニダー(構成員)だった。目を凝らすと、彼の口から大量の出血が見受けられる。
転落時に内臓か何かを損傷したのかもしれないと思い、かける声に力が入る。
「だ、大丈夫ですか!」
ジャンヌの言葉に、ニダーは無言で首を横に振った。咳き込むのと同時に今度は鼻腔から血が噴き出してきた。
どうにかしたいが、この状況では手の打ちようがない。
「い、行くんだ……生徒を、生徒達……を……」
ニダーがジャンヌに首も向けず、窓から覗く虚空を見上げながら苦しそうに呟いた。おそらくは首も負傷してしまったのだろう。
「ニダーさん」
「ウリは、もう、駄目ニダ……。……」
うっすらと見えるニダーの頬が痙攣するのが見えた。刹那、ニダーが起こしかけた背をゆっくりと沈める。
静寂に微かに届いていた息遣いが消え、ジャンヌは息を呑む。
「ニダーさん、ニダーさん?」
もう、その呼び掛けにニダーの声が返る事はなかった。

161 :名無しさん@├\├\廾□`/:2006/07/02(日) 21:58:27 ID:5u+wO9qV
後部座席の鞄に残っていた手榴弾二個と”必要な道具”を紺色ジャケットのポケットに押し込み、ジャンヌは運転席のドアから車外へと抜け出た。
急がねばならない。突き上げる痛みに歯をぎりっと鳴らす。
左の二の腕、亀裂程度は入っているだろうそれを強引に持ち上げ、左胸から携帯電話を取り出した。
その時、ジャンヌは地面に倒れ込んでいる人影を発見した。
右肩からストラップで吊り下げられている突撃銃AK74は、考えるまでもなく同志のテナー(構成員)の得物だった。
ジャンヌは駆け寄り、声を掛けようとして――衝撃で口を噤んだ。
テナーの頭部に黒っぽい部分が見え、それが着弾により爆ぜた頭部で、鮮血が彼の脳味噌を汚しているのだと気付いたので。
脱力感が襲う。膝を崩し掛け、慌ててそれを堪えた。しかし事実は変わらない。
もうこの場に残ったプログラム破壊チームはジャンヌしか残っていないのだ。
「ルルカ……。待っててね。」
時間はない。ジャンヌはAK74を拾い上げると仲間に心で黙祷を捧げ、プログラム会場内へと向けて崖を駆け上り始めた。
途中、携帯電話を片手で器用に操作し、ニダダー(仮構成員)への連絡を試みる。どういうわけか、呼び出し音は鳴れどニダダーの応答はない。
こちらがこの調子ではニダダーのほうでも何かあったのかもしれない。しかし、それを気にしている暇はなさそうだった。
「あれは……」
地図で言うならばH−9付近。ジャンヌは斜面の先を歩く人影を見付けた。
まずは目を凝らす。スカート姿である事から、それが女子生徒だと判別できた。木を影にして少しずつ人影へと接近する。
首を周囲へと向けるその女子生徒はルルカではなかったが、顔立ちは悪くない、やや細めの”女の子”だった。
意を決して足を踏み出す。女子生徒――がそれを耳にして振り返る。首輪に盗聴マイクが内蔵されているので、叫ばれたら厄介だ。
素早く彼女の口に手を当て、耳元で”騒がないで”と囁く。女子生徒はそれから素直に脱力した。
それを確認してからジャンヌは携帯電話を開き、保護してある送信トレイを開いて女子生徒へと見せる。
”私達――もうジャンヌ一人だが――は反政府組織。わけあって今回のプログラムを破壊する為にここにきた。
 騒がなければ何もしない。首輪には盗聴マイクがあるから声は出さないで欲しい。一緒に脱出しよう”
それを見た女子生徒はゆっくりと首を上下させた。ジャンヌは安堵し、両手による拘束を解いた。
解放された女子生徒が、ジャンヌを凝視している。ジャンヌは手で彼女を促し、崖の下へと先行し始め――

162 :名無しさん@├\├\廾□`/:2006/07/02(日) 22:02:37 ID:5u+wO9qV
 プシュッという音と共に、首筋に衝撃が走った。

そのまま地面へと伏す。ちょうど首の裏付近に熱と異物感。銃撃の類を受けたのだろうか。しかし、一体誰が。
疑問を過ぎらせるジャンヌの耳に、女子生徒が呟いた。
「もう残り半分なのよ、邪魔しないで。あたしはあたしのやり方で優勝して、平穏で安定した新しい生活を送るの。
 逃亡に生涯を費やすなんて馬鹿げてるじゃない」
現実はジャンヌの想像を遥かに凌駕していた。か弱い女子生徒までが牙を剥くプログラム。
振りかざした正義は、いとも容易くその細腕によって奪われた。
ルルカは大丈夫だろうか。心配でならない。目的を達成できなかった以上は満足感などあるはずもなく、むしろ無念の思いが満ちている。
しかし、正しい道理を自分は貫いた。それだけは自信を持って言えた。妹や仲間の顔が交互に浮かんでは消える。
ジャンヌの脳裏に今度こそ本物の走馬灯が過ぎる。その途中、強烈な破裂音が割って入り、そこでジャンヌの思考は永遠に遮断された。
上空で一際輝く星。その一つが金色の軌跡を残して闇に流れ、その脇で輝いていた雲も後を追うように夜闇を泳ぎ、消える。
冷たい風の中、ジャンヌの亡骸は双星の消えた空を眺め続けていた。

ニダー(反政府組織構成員)
車転落により内臓破裂死
ジャンヌ(反政府組織構成員)
えーにより射殺
AM7:00 【生徒外2名退場・残り19人】

163 :名無しさん@├\├\廾□`/:2006/07/02(日) 22:17:06 ID:5u+wO9qV
『皆さーん、元気に殺りあってますか?』
突如、周囲の空気をノイズ音が掻き鳴らし、時間外だというのにギコ教授(担当教官)の呆けた声が聞こえてきた。
「臨時放送……」
急にルルカの表情が曇る。不可解な放送を前に、モララー達もまた眉を寄せて耳を傾けた。それは、モララー達にとっては色んな意味で悲報と言えた。
『臨時放送です。今入った採れたてぴっちぴち情報なんですが、反政府の構成員が会場に潜入しようとしたけど無事削除人達が始末してくれたようで。』
その言葉でルルカの表情がたちまち歪む。目を伏せ、涙を堪えるように窓の外を眺めた。
ルルカ達が期待を寄せていた反政府組織の救出劇が失敗に終わった事を告げる放送。すなわち政府に彼らが敗れた事を示す放送。
それは姉・ジャンヌ(反政府組織構成員)の訃報でもあった。
『それと、侵入した人を殺害してくれた生徒さん、GJ! 戦利品は構わず使用してくれよー。プログラムは不測の事態その他諸々の利用、何でもありだからなぁ』
その言葉でモララーは愕然とした。自分達を救出にきた人達を殺害した生徒がいるというのだ。パニックのまま射殺してしまったのだろうか。
「……どれだけ」
腹の奥から響かせたのであろう、重いルルカの呟きでモララー達は彼女を見やる。細めた目には深く静かな怒りの色が漂っていた。
「ルルカの大切な人間を奪えば気が済むの……」
背中からも窺える深いルルカの怒り。プログラムへの、そして政府への、やり場のない怒り。
その言葉に何も返す事ができず、モララーは俯きかけた。しかし、何か力になりたい、今こそ自分達がルルカを支えてやる時だという思いがモララーの体を動かした。
「ルルカ、政府の連中にぶつけよう。この国のクソッタレなやり方で死んだ奴らの分もひっくるめて、ありったけの一撃を」
ルルカが少し驚いたような表情でこちらを向いた。続いてレモナもルルカに駆け寄り、腕を掴みながら言った。
「私達でやろうよ、ルルカちゃん!」
穏やかなその声は諭すように、ルルカの心に染み込ませるように紡がれた。ルルカは一瞬愁傷に耐えるように顔を歪めたが、すぐに目元を拭いながら笑顔を見せた。
「……そうですね…死んだおねえちゃん達の為にもルルカがみんなを助けなくちゃ!」
ルルカが自分の鞄(軽トラックに駆け寄った際は玄関先に置いていた)を持ち出し、中から単行本程度の大きさの四角い箱を取り出してモララー達に見せる。
「これこれ」
「……?」
1さんと兄者が揃って首を傾げる。箱の蓋を開くと、中には見慣れない形状のドライバーや、錐(キリ)に似てはいるがスイッチが付いている棒状の物体など、
奇妙な道具が幾つも並んでいた。続けてルルカが自分の胸元に手を添える。
ルルカが切なそうな表情を浮かべ、首から吊るしていたネックレスを外して1さんに渡す。細い鎖の中央に、大口径の銃弾に似た銀細工が付いていた。
その、女子中学生には似合わない無愛想な飾りを、スラリとしたルルカの細い指が指す。
ペンを走らせてまたもテーブルに置くルルカ。申し合わせたように同時に目を向ける1さん達。
『これは雷管なの。ちょっといじると時限起爆装置になっちゃうんです。
 それからこの箱。反政府の人が専守防衛軍の装備品研究所から裏で新型首輪の情報を送ってもらっているの。
 この首輪解体仕様のツールを使えば私が首輪を解体できちゃうんです』
『見えてきたな、俺達のプランの全体図が』
既に世を去ったモナー(男子19番)もモララー達の今を見詰めているだろうか。そう考えると気の引き締まる思いがした。無様はできない。クソ政府なんかに負けられない。

AM7:30 【残り19人】

164 :名無しさん@├\├\廾□`/:2006/07/04(火) 06:35:07 ID:xuq32GPW
「気分悪い……最悪」
えー(女子3番)は、吐き気を堪えて私物として持参していた粉薬を口に流し込んだ。すると独特の苦味が口中を満たして嘔吐感が少し気にならなくなった。
それでも、えーの中から絶え間なく込み上げる不快感は拭いきれない。
 ――あれから、ずっと気分悪い……
ジャンヌ(反政府組織構成員)を射殺してから、えーの脳裏にはずっと彼女の死に様がこびり付いていた。
すえた匂いを放つ熟れた果実。それはかつて『人』であった『物』。
えーを殺害した時は明け方。空は明るく、ジャンヌの側頭部を銃弾が捉えた瞬間をも特等席で拝んでしまった。
再び腹から鼻へ嘔吐感が突き上がったが、目を瞑りながらかろうじてそれを呑み込む。
「駄目、こんなんじゃつーさんに追いつけない……これから大一番が待ってるのに!」
視線の先には病院(C−8)があった。その背後では庭園が見渡せた。
ふと気になって立ち寄った病院、その玄関に人影を発見したえーは、見付からないように細心の注意を払いながら玄関先に近付いた。
それは、同グループの親友、ガナー(女子5番)だった。
更に民家の引き戸を開けて中から顔を出したのはえーのグループのリーダーである花瓶(女子6番)だ。
えーはクラスメイトを撃つ事を『つーさんを超える為の試練』『新しい生活への架橋』と割り切っており一切の禁忌を持たずにいた。
それは、えーの精神が負の感情に侵されて破壊されてしまった事を意味しているが、当然ながら彼女にその自覚はない。
えーは敵を見付けた事による高揚状態のまま、どうやって花瓶達を始末するかを考えていた。
「やっぱりまずはこれで……」
えーはディパックからジャンヌから奪い取ったAK74を取り出した。
相手が複数である以上、S&W M19では少し分が悪いと思ったからである。

165 :名無しさん@├\├\廾□`/:2006/07/04(火) 07:41:35 ID:Kzba5zMx
感想スレに来い

166 :名無しさん@├\├\廾□`/:2006/07/04(火) 20:53:59 ID:xuq32GPW
「さっきの銃声、誰だったんだろう」
「考えてもわからないでしょ。えーとかあいぼんじゃないのを祈るけれどね」
ガナーの疑問に、天井へ視線を泳がせながらモナエ(女子17番)が答えた。
「えーもあいぼんもきっとわかってくれるのれす!」
木製テーブルでモナエと向かい合い、つい先ほど合流を果たしたののたん(女子14番)がちんまりと座っている。
ののたんが意気込んで叫んでいると、奥の診察室から花瓶がやってきて声を掛けた。
「そうだよね。他の三人も一緒に……みんなが力を合わせなきゃね」
「花瓶、ガナー、のの。生きよう、精一杯」
「うん」
ガナーとモナエが揃って親指を立てて微笑んだ。
「あっ!」
花瓶が短く叫び、それで二人は一斉にそちらを向く。花瓶の視線は入り口へ釘付けになっており、そこへ自分達以外の人影が出現したのは明らかであった。
花瓶は腰に差したH&K P9S .45ACPを抜いて両手で構えた。モナエはメリケンサックを装着し、ガナーは右手に握った黒いリモコンへ指を掛ける。
入り口から真っ直ぐ伸びる通路の途中にリモコン式の地雷が設置されていた。
もし入り口に敵が現れた時は、リモコンのスイッチを押せば相手の足元付近で爆発が起きるよう設置してある。
果たして、接近する影が磨りガラスへそのシルエットを出現させた。
「待って!」
ガナーが通路に立って声を掛ける。その向こうで影が動いた。
刹那、連続する凄まじい銃撃音と共に磨りガラスが木っ端微塵に砕け散った。
「きゃぁっ!」
けたたましい音に顔を歪める花瓶。その視線の先――
磨りガラスの破片を浴びたガナーの制服。その背中部分が赤く滲んでおり、ガナーの体が小さく泳いでいた。
「ふぁあ……」
ガナーがうめいて膝から崩れ落ちる。仰向けに倒れた彼女の胸と腕には、無数の銃弾が撃ち込まれていた。
続いて割れた引き戸が勢いよく開き、AK74を構えたえーが飛び込んできた。
同時にさらに跳躍するえー。その元いた場所で凄まじい爆発が起こる。
「くぅっ……」
最後の力を搾り出すようにガナーが呟き、首が重力に従って横に倒れた。今の爆発は、地雷のものだったのだろう。
「花瓶、逃げて!」
叫びながらえーへ飛び掛るモナエ。えーはリモコンごとガナーの腕を蹴り飛ばし、モナエに接近して再びAK74の引き金を引く。
無数のマズルフラッシュが薄暗い室内で暴れ狂い、激発音に合わせてモナエの体が派手に揺れた。
その様は、場末のディスコの光景のようだったが――極めて悪趣味な。
「いやぁぁ!」
その花瓶の声でえーはよろけるモナエの後方、拳銃を構えている花瓶へマズルの閃光を走らせた。
「あぁぁぁ!」
体を捻るようにしてののたんと花瓶が床に倒れる。同時にAK74が弾切れをおこした。

167 :名無しさん@├\├\廾□`/:2006/07/04(火) 21:01:38 ID:xuq32GPW
「花瓶、のの! 逃げて!」
ここぞとばかりにモナエが起き上がり、えーの顔面へ拳をめり込ませた。
えーの小柄な体が浮き上がり、玄関脇の下駄箱へ激突する。下駄箱の上に飾ってあった高価そうな壷が傾き、えーの手元で砕けた。
「モナエ!」
花瓶がののたんに肩を貸しながらふらふらと立ち上がって叫んだ。二人とも被弾していたが、モナエほどではない。
「いいから早く!」
モナエが決死の形相で花瓶を睨む。それに気圧される形で、花瓶は裏口に駆け出して行った。
「えー……!」
モナエは痛む体を引き摺って玄関先のえーへと迫った。えーは歯を食い縛りながらモナエを見上げている。
「こんな事を……あぐ!」
えーの髪を掴んで無理矢理引き起こそうとしたモナエが、苦痛に顔を歪ませた。えーが腰に差したS&W M19を抜いて、モナエの腹部へ発砲したのだ。
更に二発。モナエの上体が跳ね上がり、口からは押し出されるように血が溢れ出した。
しかし、モナエは倒れない。既に充分に被弾していたが、それでも執念でえーの左の脇の下へ頭を差し込み、両の手で彼女の両脇腹を掴む。
「うあぁぁぁぁああ!」
そのまま残された力を振り絞って上体を反らせ、後方へえーを投げ飛ばした。
プロレスでいう所のノーザンライト・スープレックスという技だが、それはともかく。
えーの体は豊かな放物線を描き、廊下の半ば付近へ叩き付けられた。モナエは悶絶するえーを再び見下ろす。
えーが目線を上げ、乱れた息遣いで毒づいた。
「ば、化け物……」
「何とでも、言いなさいよ……こんな事して、えー、あんた……?」
モナエはそこまで言い、えーの表情が勝利を確信したものに変わっている事に気付いた。
一瞬それは強がりだと判断したが、すぐにえーがその手の虚勢を張らない事を思い出し、周囲を見渡した。
その『一瞬』が、命取りになった。
倒れていたえーの右手に、彼女が先程蹴り飛ばした地雷のリモコンが握られており、そのボタンがえーの親指で押されていた。
そして、モナエは地雷の真上に立っていたのだが、果たして彼女はそれに気付いただろうか?
瞬間、モナエの下半身が爆ぜた。飛び散った肉片が白い壁とえーの服を深紅で彩る。
何かを求めるように右手が虚空を一掻きして、モナエの体がえーの眼前に沈んだ。
「ははは……モナエ、最高! だよ……!」
それでもえーは口元を笑いの形に保ち、廊下に伏したモナエの亡骸へうつろな視線を送っていた。

ガナー(女子5番)
えーにより射殺
モナエ(女子17番)
えーにより失血死
【退場者2名・残り16人】

168 :名無しさん@├\├\廾□`/:2006/07/04(火) 21:08:08 ID:xuq32GPW
えーの嘔吐感は、ピークに達しようとしていた。喉元へ込み上げるそれを強引に押し戻すと強い酸の刺激が鼻先を貫いた。
えーは、顔をしかめながら周囲を見回す。玄関先には、全身に銃弾を浴びて文字通り蜂の巣状態のガナー(女子5番)が仰向けで事切れており、
また、目の前には下半身を消失させたモナエ(女子17番)が、負けず劣らずの無残な亡骸をさらしていた。
その親友だった亡骸――そう、親友『だった』。もう二人は、私の事を友達だなんて思ってないよね――から目を引き剥がして奥へ歩いて行く。
途中、床に落としていたS&W M19を拾って右手に握った。手に吸い付くようなその感触が、えーに僅かな心身の安定を与える。
S&W M19の他にも、モナエに殴り飛ばされた時に手放したAK74が地面に転がっているのが見えたが、
連射時の反動が大きくこの怪我では扱えそうにないので一応は無視する事にした。
 ――誰かに使われるのは嫌だから、終わった後に回収だけはしておかないといけないけれど。
えーはいよいよ波打つ嘔吐感と戦いながら、頼りない足取りで残りの獲物、花瓶(女子6番)達を追う為に裏口のドアに手を掛けた。
「……ん?」
何気なく振り向いた先、デスクの脇にかけられた鍵の束を見てえーが足を止めた。
「ふふふ……轢き潰したげる…」

 『鍵穴』に合う鍵は、一発でわかった。これと同じデザインの鍵を、えーの父が所持していたからだ。
その鍵は、父の物と同じワンボックス車の鍵と同型だった。裏口から出てぐるりと家の周囲を回りこむ。
広い庭先の片隅で、そのマイエースが四角い巨体を休ませていた。
その白いワンボックス車のドアを開けてえーが運転席へ小柄な体を滑り込ませた。
使い古されたハンドルの埃をハンカチで払ってから、鍵を差し込んでキーシリンダーを回した。
一度縦揺れを起こし、重い排気音が鳴り響いた。暗い車内で操作パネルの緑色の光が存在を強調するように晧々と灯る。
「逃がさないからね、あははは!」
えーが幾分痛む左手でギアを傾けると同時に右足に力を込めた。轟音を轟かせながら、道路へ四角い巨体を進めていった。

えーの運転は、中学生ながら随分と手馴れていた。というのも、父の車を運転させてもらった事があるからなのだが。
えーの父は、時たま日曜の朝方に教習所の教官よろしく自宅の裏路地でえーに運転をさせてくれた。
不慣れなえーの運転に冷や汗をかきながらも、好奇心旺盛な娘のささやかな願いをえーとして一つでも多く叶えてあげたかったのだ。
兄の持っていたエアガンや改造銃を通じて銃の知識も少し詳しくなった
そんな事を考えながら、えーはアクセルに力を込める。

169 :名無しさん@├\├\廾□`/:2006/07/04(火) 21:14:36 ID:xuq32GPW
やがて、道路の右手に小さな空き地が見えてきた。続けて空き地の中央に花瓶とののたんの姿を確認してえーがほくそえむ。
「見付けた! 二人まとめて始末してあげる!」
唸りを上げて突如出現した白い巨体に花瓶達が目を見開いているのが見えた。二人とも、制服の所々が赤く滲んでいた。
空き地の奥に並ぶ立木の群れへ足を引き摺って進む二人の背中へ四角い巨体が迫る。
不意に前方のののたんが、花瓶をえーから見て左へ突き飛ばす。同時に花瓶が遥か西方に駆け出すのが伺えた。
突き飛ばした反動でののたんはよろけて、後方の太い立木へ体を預ける形になった。
両手を胸の辺りで合わせてえーを見上げるののたん。その姿がえーの視界一杯にぐんっと広がった。
「!」
瞬間、えーは激しい感情の高ぶりを覚えて右足から足を離してしまった。しかしののたんと車の距離は既に二メートルにまで迫っておりどうにもならない。
肩や腹に強烈な圧迫感がかかり、シートベルトをしていなかったえーの体が浮き上がってフロントガラスへ頭部をしたたか打ち付ける。
そのままハンドルへ顎をぶつけて再び椅子へ尻餅を付いた。
「痛ぁ……?」
額を押さえながら顔を持ち上げるえーは、そこで凍り付いた。
傾いだ立木が眼前でこちらへお辞儀をしているのが見えたが、それよりも車のフロントガラス、半透明のオレンジ色を帯びた液体が点々と付着しており、
灰色の物体がぐしゃぐしゃになってこちらもガラス全域へ飛び散っていた。
それが何なのかは、車体の下から伸びているののたんの左手が語っていた。ののたんは、立木とワンボックス車へ押し潰される形で無残に絶命していた。
「うぇあああぁぁ!」
嘔吐感が遂に限界を越えてえーが助手席へ嘔吐する。同時に車の左前部が爆音と共に火を噴き出した。
えーは吐ききらないまま慌てて車から転げ落ちる。振り向いたその先、車体前部の下方にののたんの細い足が確認できた。
「ののたん!」
プログラムが始まってからずっとえーの脳裏を覆い、ある意味守ってくれたとも言える幻想という名の一つの塊が、今、木っ端微塵に砕け散った。
えーは、全て理解した。自分が恐怖により現実から逃げた事、幻想で自分を装い友人を殺し続けた事。自分が冒した事の大きさも。
だが、幻想という名の衣を剥ぎ取られたえーに残ったのは『殺人鬼』という名の血塗られた衣装だけだった。
「わたし、取り返しのつかない事……皆……」
無限に湧き上がる罪悪感。えーは両膝を地面に付き、呆然とした表情で地面を見詰め続ける。
やがて何かを思い出したようにえーが不意に立ち上がり、助手席側へ歩いて行く。
車体前部から鼻を付く嫌な匂いが漂ってきたが、気にも留めなかった。
ただ、えーの頬を一筋の涙が伝った。

ののたん(女子5番)
えーにより轢殺
【退場者1名・残り15人】
AM9:00

170 :名無しさん@├\├\廾□`/:2006/07/06(木) 20:47:49 ID:70d8e+VA
漁協の建物(B−2)がしたらば(男子9番)の前方で後光にその姿を浮き上がらせていた。
したらばはギコ(男子5番)へ手紙を渡すためにこの数時間、島を歩き回っていた。
とは言っても、慎重に進まなければいけないので大した距離は進んでいない。ここまでで収穫といえるものはほとんどなかった。
「そろそろ誰かに出くわしてもおかしくないにょら……でもえーとかは勘弁して欲しいにょら」
再び訪れた暗闇を前に、したらばの脳裏に躊躇なく己の友人に銃口を向けたえー(女子3番)の歪んだ笑みが浮かんでいた。
したらばが漁協の入口、半開きのシャッターの脇へ歩み寄る。
「……誰かいるにょら…?」
足を踏み入れかけて、漁協内に人の気配を察知したしたらばがH&K MP5A5を構え直した。
したらばは漁協内の暗がりに目を細めながら確認する。数秒程度、膝を軽く曲げた状態で様子を窺う。
 十秒、二十秒――
「気のせいだったにょら?」
したらばが息を漏らすように呟いた瞬間、シャッターの裏側から二つの人影が飛び出してきて、したらばの眼前へ踊り出た。
したらばが銃口を動かした。したらばのH&Kが二つの影をを捉える。
「えっ?」
「あっ!」
「おぉっ?」
が、3人が同時に声を上げ、その銃口が交差して入れ替わった。眼前の人影が目を丸くしてこちらを見ている。
したらばの銃口の先にはルルカ(女子20番)と1さん(男子2番)がそれぞれの武器を持って構えていた。
「1さん!」
「したらば?」
二人が交互に顔を見回す。したらばとルルカは、日常でほとんど関わり合いがなかった事もあり、幾らかの警戒心を残しているようだ。
逆にしたらばと1さんは、それぞれ同じグループの仲間であった。
「1さんにルルカさんって、随分奇抜な……でもないにょら?」
したらばがH&Kの銃口を下ろして言った。それで一応の警戒は解かれたようで、ルルカも銃を下げた。
「ルルカさん……ってか、ルルカって呼んでいいにょら? とりあえず握手から始めてみるにょら……?」
不器用な愛想笑いを浮かべてしたらばが手を伸ばす。接点を持ちえない者同士、ぎこちなくなるのも無理はないだろう。
「あ、よ、よろしくおねがいします!」
ルルカがしたらばの右手を両手で握り返す。その後、揃ってお辞儀を交わした。
「あれ、1さん? それって……」
1さんの足元に置かれた二つの灯油缶を指差してしたらばが何か訊こうとしたが、ルルカが口元に人差し指を当ててそれを制する。
「あ、したらばも一口乗ってくれるよね?」
「?」
首を傾げるしたらばに、ルルカから手渡された紙切れを1さんが渡す。
紙には『首輪に盗聴器がある。会話内容に注意』とあった。
『ルルカは首輪を外せるんです。今、モララー君達と手製の爆弾を作ってるの。学校を爆破して管理機能を麻痺させ、混乱に乗じて脱出する計画』
「詳しくは後で話す。とりあえずは身を隠さないと危ない」
したらばが一通り文章を読み終えるのを確認すると、灯油缶を持って身を翻す1さん。
突如天から舞い降りた脱出プランに、したらばは唖然とした表情を隠せなかった。

171 :名無しさん@├\├\廾□`/:2006/07/06(木) 20:54:58 ID:70d8e+VA
漁協内に身を隠して三人は今までの経緯を話し合っていた。
勿論、その裏では脱出計画の内容についてメモでやり取りを行っていた。
「そうか……レコもフサギコも、不安で自分を見失っちゃったのかな」
1さんが、心を痛めて視線を落とす。
「一方で、しぃやえーみたいにこのクソゲームに乗る奴もいるにょら…」
言いながら複雑な表情を見せるしたらば。ルルカが1さんのほうを向いて優しい口調で話し掛ける。
「些細な事が殺意に変わっちゃうの。何から何まで理不尽で、最悪なゲーム……」
それからルルカは手元の紙へメモの続きを書いてしたらばへ手渡す。その紙の内容で、大まかなプランの手順は理解した。
まず、軽トラックの荷台に起爆装置と灯油やガソリン、プロパンガス等の増燃物を積む。
その軽トラックだが、1さん達がいた雑居ビルのを使用するとの事だ。
運良く車内のギアの根下にスペアキーが置かれていて、直角定規でドアの鍵を開けて(不法?それどころじゃないし)見事に車ゲットと相成ったという事だ。
決行時間になったらルルカが裏切り、寝ている仲間を次々殺す(実際には首輪を外して死亡に見せかける)。
最後に見張り番と相打ちになったふりをして、これまた首輪を解除する。
後は軽トラックを運転して(兄者さんがするんだって。凄ーい!他の人は荷台で武装して援護ね)学校へ突っ込む(勿論、直前に皆トラックから飛び降りるの)。
コンピューターを破壊したら海から逃げるというのがプランの内容だ。
さすがにルルカが反政府組織系の人間だと知った時は驚いたが、ここまでのプランを見せられては信じざるを得なかった。
不意にしたらばの中で疑問が浮かび上がった。首輪が外せるならば学校を襲撃する危険を冒さずともそのまま海から逃げればいいのではないだろうか?
その旨を書いた紙を手渡すと、ルルカがすぐさま返答を書き足して返す。
『自分達だけのうのうと逃げられないでしょ? 機械を壊して首輪の役目を封じれば皆にも逃げるチャンスがある』
確かにそうだ。自分達だけで逃げようとした事に自己嫌悪を覚えながら続きに目を通す。
『それから、全員の生徒が逃げられるとなれば、四方四隻(船が東西南北に一隻ずつあるというのもルルカの知識ね)の船だけでは監視が間に合わなくなる』
したらばは心底感心して、尊敬の眼差しをルルカへ向けた。
「それでどうよ? したらばも一緒に。当然OKっしょ?」
1さんが腰掛けていた灯油缶から体を乗り出して返答を求める。したらばはしばらく考え込む。
そしてしたらばは二人へ返答した。

 時計の針は、丁度10時を指していた。

【残り17人】

今までの残り人数に二人分ほどの誤差があった模様

172 :名無しさん@├\├\廾□`/:2006/07/08(土) 22:23:01 ID:qjAuFcKs
少女の顔には憎悪の面が掘り込まれ、細身の体はまるでそれ自体が熾っているように熱い気を発していた。
少女――でぃ(女子12番)の瞳には、鮮烈な復讐の光だけがあった。
絶望だけがただそこにある。優勝しても何かが変わるとは思えない。目的は只一つ、かつての仲間達の抹殺。
やってみせると決めた。”あの場所”で見つけた新しい自分、内なる部分に眠っていた彼女は覚醒して殻を破った。あとは過去を清算するだけだ。
裏切りに打ちのめされた間抜けな自分も、偽りの幸せに満足していた能天気な自分も、
モララー(男子20番)達の死をもって全て葬り去る。奴らの亡骸の前で”でぃは死んだ”と宣言してやる。
お友達ゲームに浸っていたでぃという少女は、もう必要ない。そんなものは”あの場所”でとっくにくたばっている。  
でぃは歪んだ笑みを浮かべた。かつての仲間のうち1人が、でぃの眼下にその姿を見せていた。
二人は茂みの間を縫い、早足でどこかへと移動していた。時刻は午前11時を丁度回ったところである。
その双眸には憎悪しか映らない。でぃは両足を踏み込んで跳躍する。それで下の二人がでぃの存在を認める。
――撤収はさせない  今度は私のターン
過剰なアドレナリンと未曾有の狂気が、でぃから恐怖と躊躇を除去していた。
ともかく、でぃは公園の丘の上(F-2)から、二十メートル下まで一気に駆け下りてみせた。
映画のワンシーンのような出来事に目を丸くするギコ(男子5番)とつー(女子11番)の姿が、今ではすぐ目の前にあった。
でぃの冷笑を見たギコがすぐに狼狽の表情をみせた。まずはたっぷりと怨念のこもった言霊を搾り出す。
「逃がさない……。」
左手を顔に被せる感じで持ち上げた。消失したはずの火傷が疼く。心の痛みも同様に、癒えず胸壁に貼り付いてでぃを促していた。
 ――殺せ、殺せ、殺せ、殺せ、恨み晴らさずおくべきか。
「でぃ…てめぇまでやる気んなっちまったのかゴルァ…」
「ヒャッヒャッヒャ!でぃちゃんじゃん!怒っちゃって、どうかしたのかな〜!?
「とぼけんなぁ!!」
ありったけの怒声でつーの言葉を遮る。聞く耳を持つつもりはない。火傷の傷跡も、絆も、もう戻らない。
否、絆など最初から存在したのか、それすら疑わしく思えた。
「つー、私は随分と回り道をした気がする。お前にそそのかされた友達ゴッコは、もう引き摺ってない。ここでやるのは命のやり取りだけ。」
「ヒャッヒャヒャヒャ!!なーんのことだかさーっぱりわかんないけど〜」
「でぃ! こんなこと間違ってる! なんで今までクラスメートだった奴等同士で殺りあう必要があるってんだ!!目ぇ覚ましやがれゴルァ!!」
今すぐに黙らせたい衝動に駆られた。
「目? お陰様でバッチリ冴えてる。怒りってのは最高の覚醒剤だ。」
所々錆付いた鉄筋――先ほど拾ったものだ。棒術もバッチリ教わっているから大丈夫――を握り締め、でぃは冷たく言い放った。

――偽りのエデンへ堕ちろ

173 :名無しさん@├\├\廾□`/:2006/07/08(土) 22:29:04 ID:qjAuFcKs
ギコがつーを背後へと寄せ逃げるよう促し、手にしているナイフを右手に構える。
「外道が・・・。もうこれ以上…これ以上俺のダチは殺させねぇぞ!ゴルァ!!」
「邪魔するか…しかたない。」
でぃは腰を沈ませて踵へと力を込めた。応戦体勢万端のギコもまた即座にナイフの刃先を上げたが、でぃがボウガンを抜き出した時は驚愕を隠しきれていなかった。
命中率に欠ける片手撃ちも、この距離ならば有効だった。しかし、先手の一撃はギコのナイフによって叩き落された。
しかし、怯んだギコの体が傾ぎ、膝が地に着かせる。ブレーキとターンを兼ねた、車でいうドリフト的な動作を行いながら、ボウガンを戻す。
再び足を踏み込むと同時に鉄筋を両手で強く握った。まずはギコの後頭部を叩き、失神させてやる。
勝利を確信したでぃだったが、甲高い金属音と共に鉄筋が弾かれた。
「づぁあああああああ!!!!」
「!」
鬼気迫る、修羅の如き剣幕だった。空気を揺るがす激しい怒号に、でぃも一歩右足を後退させていた。
それを確認したギコが睨みの標的をでぃへと戻す。歯を食い縛り、悔しそうに目を潤ますその姿はこれもギコらしからぬもので、でぃは思わず攻め足を止めた。
「お前がつーを恨む気持ちは痛ぇ程分かった。だがな・・・殺して何が変わる。恨みの対象を屠ったとしてもそいつがこの世から消えるだけだ!!
 遺恨は消しきれねぇんだよ!!!」
その言葉がでぃを殊更刺激した。反射的に声を荒げ、今までに使ったことの無いような言葉遣いが覚醒する。
「それがウゼェんだよ!! 遺恨は消せない!? お前らの物差しで何でも決めんな!!」
振り下ろした鉄筋が勢い余って岸壁を削る。火花が散り、弾かれた腕が痺れた。
仇討ちを否定される事は、でぃに対しての禁句となっていた。


『モナーとモララーは貴方の傷をみて、何も言えなかったんでしょう?』

『あんたの親は、私たちが殺したのよ!』

ちびフサ(女子10番)の虫唾の走る声によって暴露されたあってはならない事実が、でぃに眠る獣を覚醒させた。
腹部へと放った爪先がちびフサの感情を刺激する。次は右の拳をちびフサの顔へと叩き込んだ。
左手がちびフサを掴み、右手が顔を殴り続ける。ちびフサが痙攣を始めてもなお、延々と殴り続けた。
危険極まりないオーラに包まれたでぃが我に返ったのは血塗れのちびフサが痙攣を止めた後だった。
結果、でぃは祖父の言いつけを破った。しかし、でぃはただ”自分を守った”に過ぎなかった。
私は悪くない。孤独な時間の中ででぃは理不尽さに喘ぎ、しばらくは涙で頬と袖を濡らした。
それらの感覚が麻痺した後、でぃの胸に残ったのは孤独の心地良さだった。
裏切りに怯える事もなく、周囲の顔色を窺う事なく、自分のルールだけで生きていける“孤独”は、絶望の底へと落とされたでぃが辿り着いた理想の世界と言えた。
居場所を見付けた。ここから離れたくない。それを脅かす奴は、どんな手段を用いても排除する。

174 :名無しさん@├\├\廾□`/:2006/07/08(土) 22:32:08 ID:qjAuFcKs
ギコが疲れたような表情を見せた。ナイフが再び構え直される。でぃもまた、鉄筋を握り直した。諦めと怒りの表情が交錯する。
「説得は無理みたいだな……。」
「無駄口はいい。GET LOST。」
でぃ対ギコ、最終ラウンドのゴングが鳴った。これまで同様に足を踏み込み、加速中にもう一度足を踏み込んだ。
驚異的な加速はギコに狙いを付けさせなかった。これは祖父に教わった棒術の奥義で『禁じ手』として使用を禁止されている危険極まりない技だ。
『超加速のより高速を凌駕し神速となった刹那、棒を突き出すことで、棒は鋭利な槍の如し殺傷力を発生させる』だったっけ?とりあえずそんな感じだった。
大きく振られたナイフの刃をかいくぐり、でぃの鉄筋がギコの腹部を貫き、背後の木の幹へと突き刺さった。
「げぁあぁぁ!」
ギコの絶叫が響く中、ボウガンから放たれた矢がギコの胸部を貫く。大量の血が学生服を新たに濡らす。
虫の息となったギコが小さく呟くのが聞こえた。
「花…瓶、に……」
それが最後の力だったのか、直ちに彼の口と鼻から大量の血ゲロが放出される。目を見開き直立したまま、ギコは死の床に就いた。
最後に胸を満たしていたのはでぃへの憎しみか、あるいは――。
でぃは頭を振り、血に塗れたギコの腹部を踏み押さえ、鉄筋を引き抜く。ギコの亡骸がその場に崩れ落ちる。
立ち去りざま、ギコを一瞥したようだった。
「友情ゴッコにも随分と演技力が必要だな」
でぃは溜息を吐くと、歩み始める。メインイベントが迫っている事を、肌に触れる空気で感じ取っていた。
「待っていろ、つー、モララー。」
高まる鼓動と共に、鉄筋を強く握り青天へと掲げる。付着した血飛沫がでぃの顔へと散る。その血を舌ですくい、その上で溶かした。
口中に広がる鉄の香りが益々でぃを高揚させた。一抹の虚しさもその感情に呑み込まれていく。
歯止めの効かないでぃの凶行は、ギコの殺害によって遂に最終段階へと到達しつつあった。
雪すら焦がす鮮烈な殺意の炎が、でぃを満たしていた。

【残り16人】
男子5番 ギコ
でぃにより射殺
AM 11:27

175 :名無しさん@├\├\廾□`/:2006/07/10(月) 21:05:27 ID:Wp1E6YUr
http://aa5.2ch.net/test/read.cgi/aasaloon/1101821614/l50
に来い。感想スレだ。

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